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シリア空爆につながる化学兵器使用のヤラセの真犯人

ポイント
・今回の米英仏によるシリア空爆はアサド政権軍が化学兵器を使用したことに対する懲罰だとしているが、もはやISが壊滅状態にあるなど圧倒的に優勢な状況にあるなかで、あえてそれを使用するはずがない。
・化学兵器が使われた“ヤラセ”の真犯人としてまずイランが思い浮かぶが、イラン核合意の是非を判断する期限を5月に控えているなかで、当面は北朝鮮問題を優先する必要があることもあり、米国はイランとの対立激化をひとまず避けている。
・最近、トランプ大統領がシリアに駐留している米軍を撤退させようとしていたあたり、このヤラセはそれを妨害しようとしている軍需産業系と見るのが妥当だろう。フランスの参加もNATOから米軍が関与を薄めようとしているのを阻止するためと思われる。
・約1年前に米中首脳会談の際にシリアにミサイルが発射された際には事前にロシアのプーチン大統領に連絡がいっていたものであり、今回も前もって知らせていたと思われる。



アサド政権軍が化学兵器を使用したことはあり得ない

 先週はまずその前週末13日に米英仏3カ国がシリア空爆に踏み切り、それに対してロシアが猛反発すると、米国はそのシリアに支援しているとしてロシアにさらに制裁措置を科す姿勢を見せた。さらに17~18日には安倍晋三首相が訪米してドナルド・トランプ大統領のフロリダ州の別荘「マールアラーゴ」で日米首脳会談が行われた。1日目は首脳同士の間でゴルフのプレーも含めて北朝鮮問題が、2日目には担当閣僚も交えて通商問題が協議された。北朝鮮問題に関連して、21日には金正恩(キム・ジョンウン)委員長が核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射の中止と核実験場の廃止を一方的に発表した。
 それ以外に、19~20日には米ワシントンで主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催されたが、この国際会議についてはそれほど重要性が見いだせないので特に採り上げる必要はないだろう。国内ではセクハラ問題で財務省の福田淳一事務次官が辞任し、政局不安がまた新たな段階を迎えた。これらのことについて、今週は国内問題を除いて、現時点で入手している情報や分析結果を基に考察してみる。

 まずシリアの空爆について最初に指摘すべきことは、米英仏3カ国はこの空爆について、自由シリア軍やイスラム国(IS)と戦闘が行われていた東グータ地区で、バッシャール・アサド政権軍が禁止されている化学兵器を使用したと断定し、そうした非人道的行為に対する懲罰行動だとしている。しかし、既にISがほぼ壊滅状態になっているなど戦況はアサド政権軍が圧倒的に優勢な状況にあるなかで、あえて国際的に非難を浴びてしまい、米国はじめ西側諸国の介入を正当化するような行為に出ることはあり得ない。
 この化学兵器の使用は、米国やそれにつらなる勢力が空爆を正当化するために行われた“ヤラセ”であると見て間違いないだろう。


アサド政権軍は化学兵器を使用したことはない

 そもそも、シリアの内戦ではこれまで多くの化学兵器が使用されてきたが、ロシアやイランに支援されているアサド政権軍がそれを使用したことは、少なくとも筆者が聞いている限り皆無である。もっとも、筆者もシリアの内戦についてそれほど詳しいわけではないが、本当にアサド政権軍が使っていたのなら、それこそ米国やイスラエルが大規模な攻撃を繰り広げる格好の名分になるはずなので、それなりに筆者の耳に入るはずだ。
 アサド政権軍の攻撃に対してISは反撃するのに日常茶飯事に化学兵器を用いていたが、そのISにそれを提供していたのがトルコの諜報員とアルカイダ系のヌスラ戦線である。さらにそのアルカイダ系の背後に米中央情報局(CIA)やイスラエル、サウジアラビアの王族の一派がいた。その多くはドナルド・ラムズフェルド元米国防長官が関与しているスイスの軍需企業であり、北朝鮮にも提供していたはずである。


ヤラセの真犯人はイスラエルではない?

 では、今回のそのヤラセの化学兵器の使用を仕組んだのはどの勢力なのかというと、すぐに思い浮かぶのがイスラエルであり、実際にこの事件が起こった直後にイランはそうした見方を示して非難していたものだ。しかも、それに対する今回の空爆では、イラン攻撃を目論んでいるとされる“ガリガリ”の新保守主義(ネオコン)派であるジョン・ボルトン新大統領補佐官の意向が強く働いたことは十分に考えられるので、その可能性は大いにあり得る。
 ただし、トランプ大統領はベンヤミン・ネタニヤフ首相にイスラエル軍がシリア国内のイランにつらなる勢力や地域を爆撃することは容認しながらも、バラク・オバマ前政権期に成立したイラン核合意の是非を判断する期限を5月に控えているなかで、当面は北朝鮮問題への対処を優先しなければならない事情もあり、足元では同国に対して必要以上に敵対的な姿勢を避けている。さらにいえば、今回の空爆では米英とともに、反イスラエル的なエマニュエル・マクロン政権のフランスも加わっていたのも不自然である。


真犯人は米軍需産業系か

 おそらく、米軍需産業系の意向を受けて米CIAが引き起こした可能性が最も高いだろう。
 トランプ大統領の背後で主導権を握っているヘンリー・キッシンジャー元国務長官を中心とするナチズム系の勢力は、世界各国の駐留米軍を順次、撤退させようとしている。その手始めにシリアから退こうとしたものの、多くの閣僚から反対されてしまい、トランプ大統領の腹心であるマイク・ポンペオCIA長官(当時)まで同意しなかったことから断念せざるを得なかったのは周知の事実だ。
 今回の空爆では、米国と共同歩調をとることが多い英国だけでなく、欧州連合(EU)の中核国であるフランスもそこに加わったのは、トランプ大統領が北大西洋条約機構(NATO)から米国が関与する度合いを薄めていこうとしているなかで、ロシアの軍事的脅威が日増しに強まっているのを背景に、それを阻止することが目的だったのだろう。

 裏事情通の中には、トランプ大統領はとりあえず軍需産業系の主張、要望を受け入れて空爆を容認しておいて、後でアサド政権軍が化学兵器を使っていなかったことが明らかになれば責任をとらせることで打撃を与えようとしているといった見方をしているようだ。
 ただ、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査員がようやく現地入りできたようだが、少なくとも今のところ、その痕跡がまったく出たなったことに対して、軍産系はアサド政権軍やイランがそれを消したとして“言い訳”をしているが、それについてトランプ大統領は特に論及していない。おそらく、そこには将来的にイラン攻撃に結び付けていくだけでなく、トランプ大統領側にはほかにも何らかの目論見があるのではないか。


米中首脳会談の際のミサイル攻撃が想起される

 ほぼ1年前の4月6日に、マールアラーゴで米中首脳会談が行われた後の昼食会の最中に、米軍が59発もの弾道ミサイルを撃ち込んだことをトランプ大統領が習近平国家主席に告げたことが想起される。これはいうまでもなく、米国が中国に対して原油の供給の全面的な停止をはじめとして、北朝鮮への制裁を強めるように強要していたなかで、それをしなければ本当に同国にもミサイルを撃ち込むと脅したものだ。
 ただ当時、米国側は事前に空爆の実施をホットラインでロシアのウラジーミル・プーチン大統領に伝えていたものであり、実際にミサイル発射が行われる以前にロシア軍もシリア軍も現場から避難していたものだ。


 明日はこの続きとして、米国とロシアとの対立が深まっていますが、実際にはどのような状況にあるかを考察します。
 明後日からの2日間では、日米首脳会談について採り上げます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。