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シリア空爆後の複雑怪奇な米ロ関係悪化の真実

ポイント
・昨年4月にシリアにミサイルが撃ち込まれた際には事前にプーチン大統領に連絡が行っていたが、今回も米ロ間で軍事的に深刻な対立が引き起こされず、同様に連絡していたものと思われる。
・トランプ大統領側は支持率が低迷しているなかでロシアゲート事件を引き起こされているだけに、表面的にせよロシアに対して強硬な姿勢を見せる必要がある。
・プーチン大統領は経済構造改革を推進するにあたり、富裕層が逃避目的で国外に流出させた資金を還流させようとしているが、反政権的な性格が強いオリガルヒを強引に逮捕しても資金が還流してくるわけではないので頭を悩ませている。
・そこで基軸通貨国である米国に依頼して対ロシア制裁に12ものオリガルヒを加えてもらい、国内でもオフショア特区を儲けることで還流を促進させようとしている。
・米国では軍需産業系が反ロシア的であり、ロシア側でもリベラル派が反米的だが、両大国とも政権執行部は対立を深めているように見せかけながらも、実際には裏側でつながっているようだ。



米ロ関係の悪化は即断できない

 今回のシリア空爆では105発と当時の倍近くものミサイルが撃ち込まれたが、昨年4月の際と同様に事前にウラジーミル・プーチン大統領に連絡が行っていたのではないか。それほどの規模の爆撃をしてロシア軍に被害が出れば、米ロ間で軍事的な観点から深刻な対立が引き起こされざるを得ないからだ。
 またドナルド・トランプ大統領としてはシリアから米軍を撤退させることを望んでいるなかで、ロシア軍だけでなくアサド政権軍に被害が出ることも望んでいないことも指摘できるだろう。
 すなわち、今回のシリアでの空爆で米国とロシアの関係が一段と悪化したとされているが、即断することなくやや詳細に分析する必要があるということだ。


トランプ大統領には表面的にロシアとの関係悪化が必要だった

 まずトランプ大統領としては、軍需産業系を敵に回してロシアゲート事件を引き起こされており、放送メディア界も敵に回していることもあって、以前に比べるとやや上向いているとはいえ支持率が低迷しているなかで、11月の中間選挙を控えて表面的にはロシアと敵対的な姿勢を見せる必要があることが指摘できる。ロバート・モラー特別検察官がトランプ大統領の顧問弁護士にまで捜査の対象を広げつつあり、またジェームズ・コミー前連邦捜査局(FBI)長官の暴露本まで出版される状況では、ロシアに対して表面的にせよ強硬な姿勢を見せなければ世論の反発を受ける恐れがあるからだ。


富裕層の資金の国内への還流を望んでいるプーチン大統領

 一方で、プーチン大統領としては経済構造改革を推進するにあたり、富裕層が国外に逃避する目的で流出させた資金を国内に還流させることを望んでいる。旧ソ連時代以来、ロシア経済は原油や天然ガスの産出に恵まれていることから他の産業がなかなか発展しない状態が続いており、いわゆる「オランダ病」からいかに脱却するかが“究極”の課題になっている。
 そこでプーチン大統領はその背後のアジア極東での特異な宗教勢力につらなるネットワークを利用して安倍首相とつながり、日本の産業界を誘致してユーラシア大陸の流通網や市場への進出と引き換えに、少しでも製造技術を移転することを望んでいる。またそれとともに、いうまでもなく改革を推進するには資金が必要なので、国外に逃避した資金をどうにかして還流させようとしているわけだ。
 とはいえ、03年に新興財閥「オリガルヒ」の石油大手ユコスのミハイル・ホドルコフスキーを強引に逮捕して反政権寄りの姿勢を示す勢力を潰しにかかったが、そうしたことを再び実施しても国外に逃避させた資金が戻ってくるわけではないので頭を悩ませているのである。


基軸通貨国に依頼して12のオリガルヒへの制裁を依頼

 そこでプーチン大統領は水面下で基軸通貨国である米国の協力を求めていたのであり、もとより親ロシア的な性格が強いトランプ大統領がそれに応えていたといえる。
 今月6日に米財務省は16年の大統領選挙の際にロシアがサイバー攻撃などにより介入したとして制裁を科したが、そこではプーチン大統領周辺をはじめとする政府高官や関連企業だけでなく、12ものオリガルヒもそこに加えられた。さらに今回のシリア爆撃を受けて追加制裁が科される動きになっているので、さらなるオリガルヒが制裁の対象になっていきそうだ。
 そのうえで、プーチン大統領側は西方ではカリーニングラードに、東方ではウラジオストクにオフショア地区を設けて国外からの資金流入を無税とすることで、海外資金を呼び込むと同時に国外に逃避した資金を還流させることを目論んでいるわけだ。例えば、中国でも習近平政権下で王岐山中央規律検査委員会書記(当時)主導で腐敗取り締まりが強化されていた際に、「ハエ叩き」と称して外貨を持ち逃げして国外に逃亡した腐敗官僚を捕まえるのに米国側に協力を要請したのと同じようなものといえるかもしれない(ただし、当時のバラク・オバマ政権は中国の要請に応じなかったのに対し、現在のトランプ政権はロシアと対立を深めていると見せかけながらそれに応じているのが異なっているが)。


米ロ関係は一見対立激化も水面下でつながっている

 このように一見したところ、米国とロシアの間では一段と対立が深まっているように見える。確かに米国ではトランプ大統領をロシアゲート事件で追い詰めている軍需産業系は反ロシア的であり、またロシアでも欧州ロスチャイルド財閥につらなってオリガルヒを支援しているドミトリー・メドベージェフ首相を中心とするリベラル派はトランプ大統領の系列を嫌っている。しかし、両大国の政権執行部は表向き反目し合う姿勢を見せてそうした政策を推進しているが、水面下ではつながっているのである。
 トランプ政権は表面的にロシアに敵対的な姿勢を見せざるを得なくなっていると見せかけながら、実際にはプーチン大統領が望む政策を推進しているのである。まさに国際情勢は1939年8月に独ソ不可侵条約が結ばれた当時をほうふつとさせる「複雑怪奇」と言い得るものだが、これは日本で安倍晋三政権を揺るがしている数々のスキャンダルについてもいえるものだろう。


 週末の明日、明後日の2日間では先週、行われた日米首脳会談について採り上げます。
 明日は1日目のゴルフのプレーも交えての首脳同士での北朝鮮問題をテーマにした会談を、明後日は2日目に担当閣僚も交えて行われた通商問題について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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