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習近平による専制権力体制を巡る変遷

 毎度、当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
 最初に筆者からお知らせがあります。
 このたび、筆者が講師を務める講演会が大阪で行われることになりました。
 11月19日に大阪堂島商品取引所にて、午後1時より講演を行わせていただきます。
 またそれが終わった後も、午後3時より懇親会において、気軽に質問をしていただければお答えさせていただきます。
 無料で入場できるだけでなく、皆様方と触れ合える数少ない機会ですので、大阪及びその周辺にお住まいの方は是非、下記サイトにてお申込みをしていただいたうえでご来場いただければと思います。

http://www.sunward-t.co.jp/seminar/2016/20161119_3/index.html


ポイント(敬称略)
・習近平は国家主席に就任すると反腐敗運動で政敵を陥れて上海閥や共青団系に打撃を与え、人民解放軍での基盤も確立し、昨夏の北載河会議で勝利して専制権力体制を確立した。
・ところが、その後米国から金融攻撃を受けたことで外貨準備が激減し、「一帯一路」構想の推進に支障を来して権力基盤が動揺に、今夏の北載河会議ではOBに敗北した。
・それにより、自身の系列の“次世代組”を政治局常務委員に昇格させることに失敗したため、自身の共産党総書記の任期を3期5年に延長することを目論んでいる。



専制権力体制の確立とその動揺

 曽慶紅元国家副主席が「仕方なく」相乗りしたことで習近平政権が成立すると、習国家主席は「上海閥」に対しては曽元副主席もかなり関与している「石油閥」の周永康・元中央政法委員会書記(前政治局常務委員)を13~15年に、さらに共産主義青年団(共青団)系に対しても、15年には胡錦濤前国家主席の側近でその裏側の業務を請け負っていた令計画・前政治協商会議副主席を反腐敗運動で陥れていった。
 さらに人民解放軍に対しても、習主席は胡錦濤前政権時代にそのトップの地位にあった徐才厚、郭伯雄両前中央軍事委員会副主席をともに陥れていった。それにより外交・安全保障分野だけでなく、本来的に国務院を傘下に収める李克強首相の管轄であるはずの国内経済政策の主導権を奪い取っていった。
 そしてついに昨年8月上旬の北載河会議では江沢民元国家主席、曽慶紅元副主席の上海閥の両領袖の出席を認めず、胡錦濤前主席に対しては長時間にわたり反省文を読み上げさせた。それにより、この時点で習近平主席は一時的に専制権力体制を確立したといえる。

 ところが、習近平主席は経済的には「一帯一路」構想を標榜してユーラシア大陸を経済圏で結ぶことを掲げ、軍事的にも東シナ海や南シナ海で周辺国を圧迫していくなど積極的に対外膨張路線を推進していったが、それがうまくいかなくなったことで自身の権力基盤が動揺していった。
 人類史上、未曾有の超巨大バブルが崩壊を始めたなかで、李克強首相がかつて、江沢民政権下で朱鎔基首相(当時)が推進した国有企業の分割民営化や自由化、市場化の推進を継続してさらに強化していくことを提唱した。これに対し、習近平主席はそれとは反対に一帯一路構想を推進していくにあたり、基幹産業部門の国有大企業をさらに統合して超巨大企業を誕生させていく「国進民退」を推し進めていった。そうすることで、海外のインフラ建設事業を受注していくにあたり、日米欧の有力企業との獲得競争に打ち勝つことにより、国内の過剰供給能力のはけ口にしようとしていった。
 またそれにより、軍事的だけでなく経済的な面でも、中国の勢力圏や影響力を拡大させていこうとしたのである。

 ところが、昨年8月11日の人民元切り下げを機に、また今年初からの2度にわたり、米連邦準備理事会(FRB)が利上げをちらつかせることで対米資本流出を促し、それにより米投機筋が積極的にオフショア(本土外)市場で人民元や中国株を売り浴びせたことで、こうした習近平主席の“野望”はあえなく潰えてしまった。
 海外のインフラ需要を受注していくには、基軸通貨である米ドルによって裏打ちされた豊富な外貨準備による信用の維持が不可欠である。ところが、米国による金融攻撃から人民銀行がつねに外貨準備を取り崩して強力に人民元買い介入を続けなければならなかったため、外貨準備が激減して受注していくにあたり信用を維持できなくなってしまったのである。
 それにより習近平主席の権力基盤が動揺して国内経済政策の主導権を李克強首相に奪われてしまい、今春の全国人民代表大会(全人代)で採択された第13次5カ年計画では首相が主張していた構造改革路線が盛り込まれてしまった。
 さらに今夏の北載河会議では、曽慶紅元副主席が胡錦濤前主席に提携を呼びかけたことで強固なOBによる反対勢力が結成された結果、習近平主席はこれに敗れてしまった。それにより、人民日報や新華社といった共産党や国家の報道機関は相次いで「核心」という言葉を使わなくなり、「習近平を総書記とする党中央」といった表現になったものだ。こうしたことはこれまで述べてきたものである。


習近平主席の巻き返し戦略

 その北載河会議では、上海閥が推している孫政才・重慶市党委員会書記や共青団系の胡春華・広東省党委員会書記といった2人の“次世代組”が参加を許され、事実上、5年に一度開催される来年秋の共産党大会で政治局常務委員に昇格することが決まった。これに対し、習近平主席が推している韓正・上海市党委員会書記やその側近である栗戦書・中央弁公庁主任は出席することが認められず、後継レースから脱落してしまった。
 それにより、習近平主席は自身の部下及びその系列の人脈を後継の次期主席に就けることができなくなってしまい、このままでは2期目の5年間はレームダック(死に体)化しかねない状況になってしまった。

 そこで習近平主席はまず、権力基盤の最も“根幹部分”とでもいうべき軍を頻繁に訪れることで、その基盤を確かなものにしようとした。そのうえで、来年秋に共産党大会が開催されるまでに「地方諸侯」と呼ばれる各地方の指導者が相次いで改選されていくが、そのトップの地位である党委員会書記に、できる限り自身の系列もしくはその影響下にある人脈を送り込もうとした。
 各省の党委員会書記になると共産党大会では自動的に中央委員に選出されることになり、また大きな市や新疆ウイグル自治区のような重要な地方でそうした地位に就くと、その1階級上位の政治局委員に就任できる。そこでできる限り自身の系列の中央委員や政治局員を増やすことで、共産党大会では総書記の地位は2期10年が慣行であるのを3期15年に延長することを目論んでいるようだ。国家元首としての国家主席の地位については憲法で2期10年までとする規定があるが、共産党の役職や、現在では68歳とされている定年については特に明文規定がなく、あくまでも慣例として続いているに過ぎないからだ。
 それにより習近平主席は自身の総書記としての任期をもう1期5年間延長したうえで、後継候補を潰していってその背後勢力が権勢を振るうのを回避することを考えていたようだ。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。