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9月以降の政策を打ち出せなかったECB理事会

ポイント
・トランプ政権が大型減税を成立させ、企業側が賃上げに前向きになっていることからようやくインフレ期待が強まりだしたが、その割に長期金利の上昇圧力が鈍く、3%台に乗せてもすぐに抑え込まれてしまった。
・長期金利の上昇力が鈍いのは先行き景気鈍化を織り込んでいる可能性があるが、トランプ政権の背後勢力は中国を内部から蚕食したうえで対外膨張路線に乗って利権の拡大を目指しているので、中国経済が悪影響を受けないように策動的に抑え込んでいる公算も。
・ECB理事会後にドラギ総裁は景気回復傾向に自信を示しながらも、最近のドイツを中心とする景気鈍化傾向を背景に、9月末以降の政策判断を6月から7月の理事会に先送りする姿勢を見せた。
・その背景には、米国が従来のドル高政策を転換し、輸出拡大を目指して緩やかなドル安を望んでおり、日銀を除く他の主要国・地域の中央銀行にFRBと同様に出口に向けて動くように要請していることがあり、特にECBに対する風当たりは強いものがある。



ようやくインフレ期待が強まりだす

 米連邦準備理事会(FRB)が年内にあと2~3回もの利上げを決める姿勢を見せているにもかかわらず、米長期金利は上昇圧力が抑えられる状態が続いてきた。労働市場がひっ迫しているにもかかわらず、賃金がなかなか上がらず、インフレ率が2%目標に達するメドが立たなかったからだ。
 しかし、ここにきてドナルド・トランプ政権が昨年末に大型減税を成立させたのを受けて企業側が賃上げに前向きな姿勢を示すようになったことから、ようやくインフレ期待が強まりつつある。それにより米長期金利も上昇しており、先週半ばには10年債利回りが3%台に乗せたが、すぐに上昇圧力が抑え込まれてしまった。
 最近、FRBの利上げ見通しが一段と強まってきたことから中期債の利回りが上昇しているが、相変わらず長期債についてはそれが抑制された状態が続いている。その結果、イールドカーブのフラット(平坦)な部分が、より期間が長めのところにシフトしている。


策動的に長期金利上昇が抑え込まれている可能性も

 この現象をどのように理解するかだが、“教科書的”にいえば、長期金利の上昇圧力が鈍い状態にあるのは景気見通しが弱気に傾いているのを示唆しており、逆イールドになると景気後退(リセッション)の前兆とされている。実際、景気拡大が10年にも達しようとしているなかで、最近ではトランプ政権が大型減税を成立させ、公共インフラ事業も拡大させようとしていることで一段と“噴かしている”ことから、かえってリセッション入りを早めつつあるといえなくもない。
 ただ、トランプ政権の背後の米権力者層は中国に対し、その内部から“蚕食”したうえで「一帯一路」はじめ対外膨張政策を推進させることで、グローバル規模で利権を拡大していこうとしている。そのため、株価が急落して信用収縮が強まることで、バブル崩壊が進んで中国経済が壊滅的な打撃を受けることを望んでいない。このため、株価を安定的に上昇させるために、策動的に長期金利の上昇が抑え込まれている可能性もあるだろう。


9月以降の政策決定を7月に先送り

 また、先週は欧州中央銀行(ECB)理事会が開催されたので、その結果について簡単に振れておく。
 ECBは今年初から量的緩和策での資産買い入れ額を毎月300億ユーロのペースに半減し、それを9月末まで続けることを決めており、19年以降、利上げを開始する意向を示している。ただ、昨年末までの段階ではユーロ圏経済は景気回復傾向が強まっていたが、今年に入ってから特に中核国であるドイツで減速傾向が鮮明になっている。
 そうした状況を受けて、会合後の会見でマリオ・ドラギ総裁は最近の減速をそれまでの高成長の反動として、ユーロ圏で底堅く幅広い景気回復傾向に変わりないとの認識を示し、実際にその直後に市場ではユーロ高に振れたものだ。ただその一方で、米国による鉄鋼やアルミニウムの輸入制限など保護主義的な動きが悪影響をもたらす恐れに言及したうえで、景気の鈍化が一時的なものか恒久的なものか、少し様子を見る必要があるとして、9月末以降の政策を決めるのを6月から7月の理事会に先送りする姿勢を見せた。


緩やかなドル安志向の米国から出口に向けて動くように求められる

 こうしたドラギ総裁が述べたECBの政策姿勢自体は経済実勢を映したものだが、それでも景気回復傾向が変わっていないとして、金融緩和策の出口に向けた姿勢を維持しなければならないのは、米トランプ政権の圧力を受けているからである。
 米国の世界覇権が斜陽期に転じたなかで、トランプ政権で主導権を握っているナチズム系は「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」を掲げ、自国で生産活動を活発化させて輸出を伸ばし、経常赤字の縮小を目指している。覇権の絶頂期に主導権を握った世界単一政府系は資産価格を高騰させて資産効果により米国内で消費活動を活発化させ、それにより米国の経常赤字が増大するとともに、海外に流出したドル資金を米国債に投資させて準備資産として保有させるためにドル高政策が推進された。しかし現在、主導権を握っているナチズム系は自国産の製品の輸出を伸ばすにあたり、ドル不安が引き起こされない程度に緩やかにドル安が進むことを望んでいる。
 そこで日本銀行(日銀)を除く主要国・地域の中央銀行にFRBとともに超金融緩和策の出口に向けて動くように求めており、特にドルに次ぐ主要通貨であるユーロを管轄しているECBに対する圧力は相当に強いものがある。ドラギ総裁は他のECBの多くの執行部とともに経済、財政事情が脆弱な南欧諸国出身であるだけに、本音では出口に向けて動くのは消極的なはずだ。それでも、米国で主導権を握っている勢力による圧力には抗しきれないものがあるようだ。

 さしあたり、当面はECBがすぐに超金融緩和策の出口に向けて動ける状況ではない一方で、FRBの利上げ姿勢に注目が集まりやすくなっているので、短期的にはユーロ・ドル相場が一段と下げていく余地があるだろう。しかし、中長期的には既に上昇傾向に転じている可能性が高く、1ユーロ=1.20ドルを大きく割り込むことは考えにくいだろう。


 明日以降は、先週27日に南北首脳会談に大きな関心が集まったことから、再び北朝鮮問題を採り上げることにします。
 南北和平の実現と朝鮮半島の非核化により米軍が韓国から、さらには沖縄からも撤退していく公算が高まりつつあります。
 それにより、韓国でも日本でも利権を失う勢力が出てくることになります。それが日本の政界でどのような影響を及ぼしているか、安倍首相を取り巻く状況がどのようになっているかを見ていきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。