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朝鮮半島での米軍の駐留に伴う利権とそれが失われる日

ポイント
・これまでにも過去2回、南北間で首脳会談が行われてきたが、今回と同様に韓国で左派政権が成立していた時だった。保守政権下では強硬姿勢になる一方で、北朝鮮側も密かに核開発を繰り広げてきた。
・その背景には保守政党を支持している高齢層が反共産主義的な性格が強いことがあるが、より本質的にはそうした政治家が米軍が駐留していることで利権を握ってきたことがある。
・90年代にも南北融和に向けた動きが高まったことがあったがうまくいかなかった。ただ今回は、トランプ政権で主導権を握っている勢力が在韓米軍を撤退させようとしているなかで南北間で首脳会談が行われたのが、これまでと決定的に異なるところだ。
・今回の会談では北朝鮮側が核廃棄の手順を示さなかったが、米朝会談を控えて手の内を明かさなかったのは当然だ。ただ、厳格な核査察を受けさせても完全に核廃棄をさせるのは不可能であり、またその技術も修得しているので、本当はこの問題はそれほど重要ではない。
・むしろ重要なのは、核廃棄だけ先行させるのではなく、北朝鮮側にとって体制保証を意味する在韓米軍の撤退につながる朝鮮半島の和平を締結することができるかどうかだ。



過去2回の会談はいずれも親北朝鮮的な左派政権

 先週はなんといっても、27日に朝鮮半島の軍事境界線のある板門店(パンムンジョム)で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間で行われた南北首脳会談に世界中の注目が集まった。北朝鮮問題についてはこれまで当欄で何度も採り上げてきたので、今週はこれまで述べていなかったことを中心に考察していくことにする。

 この韓国と北朝鮮の両首脳による会談はこれまで過去2回行われており、金大中(キム・デジュン)、廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権といずれも今回と同様に親北朝鮮的な左派政権だった。保守的な政権が成立すると北朝鮮に対して強硬な姿勢になる一方で、北朝鮮側も密かに核開発を繰り広げてきたものだ。
 その背景には、韓国で保守政党を支持しているのが朝鮮戦争を経験した反共産主義的な高齢層で占められていることがあるのは、確かに真実ではあるがあくまでも表面的な理由でしかない。


保守政党の背後に在韓米軍の駐留に伴う利権がある

 より本質的なことをいえば、保守政党の政治家は米軍が韓国に駐留していることで利権を握っていることがある。また北朝鮮側でも、親イスラエル的な勢力が米国で軍需産業系の後押しを受けていた好戦的な新保守主義(ネオコン)派と結託し、「先軍政治」により主導権を握っている朝鮮人民軍幹部を操っていたことがある。
 すなわち、朝鮮半島で戦争状態が続いていれば韓国側では在韓米軍が撤退せず、それにより米国では軍需産業が利益を得ることができ、また現地の有力者もそれと結託することで利権にありつくことができる。北朝鮮では多くの一般民衆が飢えているにもかかわらず体制が崩壊せず、弾道ミサイルの発射や核実験を繰り返し実施することができたのはこのためであるのは改めて指摘するまでもない。


これまでと時代背景が決定的に異なる今回の南北首脳会談

 北朝鮮で最初に核開発疑惑が持ち上がったのは90年代前半のビル・クリントン政権下であり、実際に現在のドナルド・トランプ政権と同様に米国による軍事攻撃の可能性が高まったものだ。当時は最終的に金日成(キム・イルソン)国家主席が訪朝したジミー・カーター元大統領と会談して和平への機運を盛り上げたことで、94年10月の米朝枠組み合意へとつながっていった。
 ただ当時、金日成主席は単に米国側と協定を結ぶだけでなく、自らソウルに赴いて金泳三(キム・ヨンサム)大統領と会談し、南北統一への流れを醸成しようとした。これに対し、親イスラエル勢力や米ネオコン派に操られていた人民軍幹部に取り囲まれていた子息の金正日(キム・ジョンイル)総書記(いずれも当時)によって、父親の金日成主席は殺害されたことで南北首脳会談は実現せず、朝鮮半島が統一へ向かう流れが出てくることもなかった。
 ただ今回は米国の世界覇権が斜陽期に転じたなかで、トランプ政権で主導権を握っているヘンリー・キッシンジャー元国務長官を中心とするナチズム系を外交問題評議会(CFR)系が支援する形で、米国が在韓米軍を撤退させようとしているなかで南北間で首脳会談が行われたのが、これまでと決定的に異なるところだ。


米国との交渉を控え手の内を明かさなかったのは当然

 今回の首脳会談で採択された「板門店宣言」では、朝鮮半島の非核化の実現を目指すと同時、年内に朝鮮戦争の終戦宣言を行い、休戦協定を平和協定に転換するために南北に加えて米国と、さらにそこに中国をも加えた協議を進めることが謳われた。いうまでもなく、戦時下での在韓米軍の統制権は今でも米国側が握っているので、朝鮮戦争において北朝鮮に対する当事者は韓国より米国であることから、6月上旬に開催されるとされている米朝首脳会談が最大の“ヤマ場”であるのは改めて指摘するまでもないことだ。
 北朝鮮側は今回、非核化に向けた具体的な手順をいっさい明らかにしなかったが、米国との会談に向けて“手の内”を明かさなかったのは当然である。


重要なのは核放棄より平和条約の締結の行方

 核廃棄の手順については、米国側が“ガリガリ”の新保守主義(ネオコン)派であるジョン・ボルトン新大統領補佐官主導で、「完全かつ検証可能で不可逆的(CVID)」な核廃棄を求めている。これに対し、北朝鮮側との間を仲介している韓国は、水面下で中国がしきりに勧めていることもあって段階的な核廃棄を主張しているが、それ自体は言われているほどには重要ではない。
 これまで当欄で指摘してきたように、核兵器を一括処理させて核拡散防止条約(NPT)体制に再加盟させ、定期的に国際原子力機関(IAEA)による厳格な核査察を受けさせても、どこかに必ず隠し持つようになるはずだ。しかも、既に核開発技術を修得しているので、その気になればいくらでも核兵器を製造できることも指摘できる。
 むしろ重要なのは、多くの報道機関や識者が非核化のことばかりに関心が集まっているなかで、それより朝鮮戦争を終わらせて平和条約をしっかり締結することができるかどうかだ。そうでないと在韓米軍が撤退することができず、北朝鮮側も体制保証が確約されないので表立って核兵器を廃棄することができないからだ。
 かつて、リビアのムアマル・カダフィ政権は平和条約を結ばないで核兵器を一括で廃棄したので、後に崩壊してしまったのである。また核兵器を保有していたわけではなかったが、イラクのサダム・フセイン政権が米軍に攻め込まれて崩壊してしまったのも、それと同じようなものといえるだろう。


年明け以降、北朝鮮が融和路線に転じたのはシナリオ通りの動き

 そうした意味では、トランプ大統領が実際に北朝鮮が核廃棄に応じるまでは日本の安倍晋三首相とともに「最大限の圧力をかけ続ける」と表明しておきながら、今回の南北首脳会談が終わった直後にツイッターに「朝鮮戦争は終わる」と書き込んだのは、そうしたことを十分に認識しているものと受け取ることができるだろう。
 それでも、核廃棄を巡り北朝鮮側にCVIDによる一括処理を求めているのは、北朝鮮が“時間稼ぎ”をするのを防ぐことにあるのではない。そもそも、金正恩委員長は“影武者”であり、実際にそこで主導権を握っているのは中東の“某国”の工作員であり、トランプ大統領の腹心のマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官(当時)直属で動いていた複数の人物であるので、本当はトランプ政権で主導権を握っている勢力に反する動きをするはずがない。
 北朝鮮は昨年末までミサイル発射や核実験を繰り返し、ホワイトハウスではハーバート・マクマスター大統領補佐官(当時)主導で軍事攻撃を決断したとされながら、年明けには一転して融和路線に出てきたのは、金正恩委員長が米国の軍事力を恐れて方針転換したのではない。あくまでも、トランプ政権の背後で主導権を握っているキッシンジャー元国務長官を中心とする勢力の意向を受けたものであり、事前に設定されていたシナリオ通りに動いたものにほかならない。


 明日以降もこの続きを掲載します。
 明日は米軍が撤退していくことで、これまで政権政党だった自民党内でどのような衝撃が走るかを見ていきます。
 自民党内で安倍政権に反発しているのは防衛族やそれに関連する議員が多いことに注目します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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