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米政権で主導権を握る勢力からお墨付きを得られつつある安倍首相

ポイント
・安倍首相は一時、米政権で主導権を握る勢力から“お灸をすえられていた”が、日米首脳会談での米国側の姿勢を見る限り、そして中東を歴訪した際に“聖地”への訪問が許されたあたり、改めてそのパートナーとしてお墨付きを得られたようだ。
・小泉元首相の系列は反安倍的な姿勢を見せていたが、元首相が「原発ゼロ」を標榜しているのは北朝鮮のウラン鉱石が出回ることで打撃を受ける石油メジャーの利害を代弁しており、ティラーソン前国務長官の穏健外交姿勢と通じるところがある。
・これからトランプ政権が日本にかなりの兵器を輸出していくにあたり、その受け皿として安倍首相が利権を握っていくのは想像に難くなく、北朝鮮のウラン鉱石の採掘作業で日本勢が進出していけば、その利権も握ることになりそうだ。
・安倍政権を揺るがせている政治スキャンダルは当初、官僚勢力による官邸への抵抗という性格が強かったが、その後米国が安倍首相にお灸をすえたり、官邸が対米追随一辺倒の官僚勢力を攻撃するなど、複雑に入り組んで実態がわかりにくくなってしまった。



日米首脳会談で改めてお墨付きが得られる

 4月17~18日に安倍晋三首相が訪米して日米首脳会談が行われたが、その時のドナルド・トランプ大統領の対応を見る限り、昨年2月10~11日に行われた際の長時間にわたり握手と抱擁がなされたのに比べるとやや短い時間に終わったとはいえ、改めてその地位に“お墨付き”が得られたといえるだろう。
 その際に小泉純一郎元首相を中心とする勢力が会合を開いていたが、直前に安倍首相の自民党総裁三選に否定的なコメントを発したのも注目される。その子息の小泉進次郎筆頭副幹事長も安倍首相に批判的な発言をよくしているものだ。
 さらにいえば、小泉元首相は引退した後、「原発ゼロ」を掲げる反原子力発電論者として有名になったが、それは石油火力のエネルギー源である石油メジャーの意向にほかならない。こうした石油メジャーにつらなる勢力は、今回の北朝鮮問題が世界最大のウラン鉱石の利権を巡る争奪戦の性格も帯びており、トランプ大統領の背後勢力と決定的に対立することも考える必要がある。
 つい最近、「世界皇帝」として君臨したデイヴィッド・ロックフェラーが“オーナー”だったエクソンモービル前会長兼最高経営責任者(CEO)のレックス・ティラーソン前国務長官が、北朝鮮問題でも現状維持を目指す穏健外交を展開したのと同じような利害関係にあるといえる。


実態をつかむのが非常に困難になった一連のスキャンダル

 安倍首相は森友・加計問題をはじめとして、そこから財務省理財局の公文書改ざん問題や防衛省による南スーダンでの平和維持活動(PKO)を巡る日報の問題等々、数々のスキャンダルに見舞われている。
 当初、官僚の天下り斡旋問題で引責辞任させられた前川喜平前文武科学省事務次官がこの問題を暴露した際には、官僚による首相官邸に対する抵抗といった性格が強く、その“黒幕”は官僚勢力の頂点に立っている財務省主計局と見られていた。ところが、その後主計局ではないとはいえ同じ財務省の理財局が攻撃され、前理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官が辞任させられて国会で証人喚問されてしまい、さらには福田淳一前事務次官も女性セクハラ問題で辞任せざるを得なくなる(この件については謀略的な動きはなさそうだが)など、官僚勢力の“本丸”まで攻撃されるようになっている。
 これら一連のスキャンダルの実態をつかむのが非常に困難になりつつあるといえる。


一時的に反する動きをしたことでお灸をすえる

 さらに事情を理解しにくくさせているのが、実際に安倍首相も一時的にトランプ大統領で主導権を握る勢力から攻撃された形跡があることだ。
 ヘンリー・キッシンジャー元国務長官を中心とする勢力は、米軍が韓国から、次いで沖縄から撤退していこうとしているなかで、アジア極東ではそれまで米国が果たしてきた「警察官」としての役割を日本が担うように求めている。そうすることで、「新冷戦」体制により対外膨張路線を展開する中国と東シナ海を隔てて最前線で軍事的に対峙させていきながら、その日本に対して政府調達で兵器を大量に輸出していこうとしている。そのためには日本に防衛費を倍増させるだけでなく、憲法を改正させ、さらには将来的に核武装化までさせなければならない。
 そこで米国側は安倍首相に対し、年明け以降、北朝鮮を巡る情勢は一転して融和ムードが強まるものの、国際的に孤立しても同国や中国に対してそれまでの敵対的な姿勢を堅持するように指示していたようだ。ところが、安倍首相は国際的に孤立していくだけでなく、拉致問題も置き去りにされるのを嫌って独自に北朝鮮と首脳会談の開催を打診する動きに出たが、これに米国側が怒り、“お灸をすえた”ことが確かにあったようだ。


聖地に足を踏み入れることで特別な存在になっていく

 とはいえ、先の日米首脳会談の状況を見る限り、もはや米国側は安倍首相を排撃する動きを示しておらず、むしろこれから構築されていく中国を相手とする新冷戦体制下での重要なパートナーと位置付けている感さえある。実際、安倍首相は今回の朝鮮半島を巡る動きでは阻害されつつあるのは致し方ないが、その一方でこれから中東で戦乱が引き起こされるのを前にして最近、中東4カ国を訪問したのは、まさにトランプ政権の“お墨付き”によるものだ。
 このうち、ヨルダンとパレスチナ自治区を訪れたのはヨルダン川西岸のパレスチナ難民をヨルダンに移住させて市民権を付与していくにあたり、日本が資金援助をするのを控えた打ち合わせのようなものだったようだ。ただイスラエルをも訪れたのは、トランプ政権の背後の親イスラエル右派の“聖地”に足を踏み入れたことで、“特別な存在”になっていくことを意味しているといえなくもない。


ウラン鉱石採掘のために日本の産業界の進出が望まれる

 これから米国が日本に一段と兵器を売却していくにあたり、安倍首相やその系列が受け皿になって利権を握っていくのは想像に難くない。
 おそらく、その兵器はおおむね米国内で製造するとしても、そこに内蔵する高性能で極小な部品は日本から輸入して賄わなければならないので、米国の対日貿易赤字はそれほど減らないのではないか。
 また北朝鮮が平和条約を結んで表向き核兵器が放棄された後、米国はロシア勢とともに朝鮮半島北部のウラン鉱石の採掘とその事業化に取りかかることになるが、そこでは高度な技術を有する日本の産業界の進出も望まれているはずだ。いうまでもなく、そこには巨額な事業資金を投下することが必要となり、そこに日本から北朝鮮に支払われる戦後賠償資金が充てられていくのだろう。さらにそこには、拉致被害者の日本への返還に要する資金も含めて支払うことになるのではないか。
 当然のことながら、ウラン鉱石の採掘その他の事業については、安倍首相やその周辺の利権になっていくのだろう。


幾重にも絡んで引き起こされている政治闘争スキャンダル

 安倍政権を揺るがしている政治スキャンダルについては、安倍首相に反感を抱いており、沖縄から米軍が撤退していくことで利権を失うことを恐れている非主流派の勢力が、安倍政権を揺さぶろうとして引き起こしている面があるだろう。その一方で、米国側もかつての軍需産業系主導の勢力によって育てられ、“骨の髄”まで対米追随志向が染みついている勢力を攻撃している面もあるだろう。
 今回のスキャンダルのいくつかは菅義偉官房長官が意図的に週刊誌その他に流していることで引き起こされているといった指摘もあるようだが、それが本当だとしたら、現行の対米追随一辺倒の官僚勢力に打撃を与え、そうした勢力も官邸の支配構造に組み込むことを意図しているといえなくもない。それ対して官僚勢力が反発しているとしたら、まさに米国でのロシアゲート事件と同じ構図だということができる。
 いずれにせよ、今回のスキャンダルについては“一筋縄”で説明ができるものではなく、幾重にも絡んでいることで事情をわかりにくくさせているといえるだろう。


 今週はこれで終わりになります。大型連休中でしたが、今回もご拝読いただき、ありがとうございます。
 来週も週明け7日月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込みをしていただければ幸いです。
 また、条件次第ですが、小規模の講演会等、実際にお会いさせてお話させていただいてもかまいません。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。