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米朝間の主張の大きな隔たりと自信みなぎる米大統領

ポイント
・北朝鮮の核放棄を巡りCVIDによる一括処理を求める米国と段階的な処理を求める北朝鮮の主張は相いれないが、トランプ大統領が自信みなぎる姿勢を見せているように、実際にはこれまで、水面下で両者が協議しており、合意に向けて進展していておかしくない。
・北朝鮮の独裁者はトランプ大統領の背後勢力につらなる米国の傀儡であるだけに、両者は“一心同体”として“阿吽の呼吸”で動いており、これまでの両者の姿勢は“芝居”“演技”とでもいうべきものだ。
・米国は核開発に関するデータの処理や技術者の海外移住を求めていることが報じられたが、元米国防長官が深く関与しているスイスの軍事企業が教示していたのだから無意味だ。
・核兵器をすべて廃棄して頻繁に核査察を受けさせても、査察を行う場所は限られているので完全に除去するのは不可能だ。本当に完全に除去するには体制を崩壊させる以外にない。



米朝間の対立する核放棄を巡る手法の相違

 先週は極東の北朝鮮、中東のイランという二つの核開発問題を巡る地政学問題でともに大きな動きがあった。
 まずイランの核合意からの離脱を巡り、ドナルド・トランプ米大統領は従来では12日までに決定を下すとしていたが、これを8日に前倒しして正式に離脱を発表した。その直後にシリアに展開しているイランの革命防衛隊とされる部隊がイスラエルを空爆する動きがあり、それに対抗して10日にはイスラエルも報復爆撃を行った。
 さらに北朝鮮問題でも、マイク・ポンペオ国務長官の訪朝に合わせて、9日に北朝鮮側が拘束している3人の米国人を解放した。そうした米朝間の融和ムードに乗って、10日にはトランプ大統領が米朝首脳会談を6月12日にシンガポールで開催すると発表した。
 今週は当然のことながらこの二つがテーマになるが、このうち北朝鮮問題についてはこれまで、当欄で採り上げてきただけに、重複する場面があるのはご容赦いただきたい。

 北朝鮮の核放棄を巡り、米国は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」により20年頃をメドに一括処理し、経済制裁の緩和・解除はそれが達成された時点で行うことを主張している。もとよりこうした措置は、“ガリガリ”の新保守主義(ネオコン)派であるジョン・ボルトン大統領補佐官が主張していたものだ。トランプ大統領も非核化が実現するまで経済制裁を続ける姿勢を示しており、日本の安倍晋三首相もこれに同調している。
 これに対し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は「行動対行動」の原則により、段階的に非核化を進めながらその都度、経済制裁を緩和・解除していくことを求めている。こうした姿勢を中国が後押ししており、また一時期、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権も米国の意向に反してこの立場を支持したことがあったものだ。


相いれない主張と自信みなぎる米大統領

 両者の主張はまったく相いれないものだ。実際に米国内でもトランプ大統領の背後勢力に敵対している軍需産業系につらなるシンクタンクの間では、首脳会談では単に非核化に向けた行動原則や朝鮮半島での平和条約の締結への意志を確認する共同声明を出すにとどまり、具体的な工程表の取り決めは先送りされるとの見方には根強いものがあるようだ。
 しかし、その割にトランプ大統領が演説で「大成功を収めるだろう」などと吹聴し、自信をみなぎる姿勢を見せているのは“腑に落ちない”ものだ。これまで、米朝間では水面下で活発に接触して交渉してきているだけに、表面的なやり取りとは裏腹に、実際には合意に向けてかなり進展している可能性もあるだろう。


米朝間で阿吽の呼吸で見せる演技

 この問題を考えるうえでまず大事なことは、北朝鮮の独裁者とされる金正恩委員長は親イスラエル派の“傀儡”である“影武者”であり、その委員長を操っているのがトランプ政権が成立して以来、大統領の腹心のポンペオ中央情報局(CIA)長官(当時)直属の新組織に組み込まれた複数の朝鮮系の工作員であることだ。すなわち、トランプ大統領の背後勢力と金委員長を操っている勢力はいわば“一心同体”なのであり、両者は“阿吽の呼吸”で動いているはずだ。
 トランプ大統領がもとよりネオコン派が提唱しており、いかにも軍需産業系が喜びそうなCVIDによる核兵器の一括処理を主張し、それに安倍首相も同調して防衛族を中心に親米的な政治家や官僚勢力に安心感を与えていたのは、いかにも“芝居”“演技”による可能性を考えないわけにいかない。さらにいえば、金委員長が段階的な非核化を主張しているのも、背後の中国を安心させるためであることもあり得るだろう。


核開発データや技術を失っても問題はない

 そもそも、北朝鮮は12日に、23~25日をメドに北東部の豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破してその周辺も含めて完全閉鎖し、その模様を外国のメディアに取材させて公開すると発表している。段階的な処理を主張していながら、首脳会談が行われていない段階でこうした行動に出るのもいささか奇妙である。先んじて行動に出ることで相手に対して主導権を握ろうとしているように見えるが、実際には表面的に主張が真っ向から対立していながら、水面下でトランプ大統領側と協調して動いているとすれば、より得心がいくというものだ。
 また米国側は完全な非核化を巡り、核関連物質のデータの完全な廃棄や技術者を全員海外に移住させることを求めていることを朝日新聞が報じたが、おそらく当事者が意図的にリークしたのだろう。そもそも、北朝鮮の核開発の技術はドナルド・ラムズフェルド元米国防長官が関与しているスイスの軍需企業が教示したものであり、北朝鮮側が米国の要求を受け入れても何ら問題はないからだ。


本当に核兵器を排除するには体制の崩壊が不可欠

 もう一つ大事なことはこれまで当欄で指摘してきたことだが、今回、北朝鮮に核兵器を一括処理させたうえで核拡散防止条約(NPT)体制に再加盟させ、国際原子力機関(IAEA)に厳格に核査察をさせても、同国から核兵器を完全に除去するのは不可能であることだ。査察を行う場所は原子力発電所や軍事施設といった場所に限られてしまい、それ以外のところに隠していても、諸外国や国際機関にはわかるはずがないからだ。
 さらにいえば、前記のようにその気になればまたスイスの軍需企業が教示すれば達成できることだ。
 かつて、米国の要求に屈して核兵器をすべて解体処理させたリビアのムアマル・カダフィ政権は“間抜け”以外の何物でもなかったのであり、本当に廃棄させるには体制を崩壊させなければならないはずだ。北朝鮮が「体制が保証されれば核兵器を保有している意味がない」などと主張しているのは“詭弁”以外の何物でもないのである。


  明日は今回の続きとして、6月12日にシンガポールで開催される米朝首脳会談が“猿芝居”に過ぎないこと詳述します。
 週末の明後日はトランプ米大統領がイラン核合意からの離脱を発表しましたが、その背景について、ロシアの立ち位置を中心にサウジアラビアとの関係についても考えていきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。