記事一覧

米朝首脳会談と中国売り攻撃が起こる時期や米国の思惑

ポイント
・米長期金利が上昇して明確に3%台に乗せてきたことで新興国通貨不安が拡大し、人民元安圧力も高まりつつあるが、まだ中国不安と言い得る状況ではない。
・最近3年間で投機筋による中国攻撃は2回にわたり行われてきた。1回目が15年8月の人民元切り下げを機に欧州系財閥主導で引き起こされたものであり、2回目が16年初頭以来、習近平国家主席による対外膨張路線に反発して米系財閥主導で生じたものだ。
・新たに米国で主導権を握った親イスラエル右派系は中国を米国に並ぶ大国に発展させることで世界経済の拡大や米系資本の利権拡大を目指しているため、これらの投機的な攻撃をやめさせた経緯がある。
・中国政府に国有企業改革を促すにはいずれ信用収縮を強めて資本流出が加速していく状況を醸成することで“脅す”必要があるが、当面は朝鮮半島での平和条約の締結が優先事項であるため、そのメドが立つまでそれが回避されることで株高傾向を継続か。


米長期金利が3%台に定着し新興国通貨不安が拡大

 先週は米長期金利の上昇に拍車がかかる兆候が見られた。これまで、10年債利回りで3%台に乗せても一時的なものにとどまり、すぐに大台割れに押し戻されていたものだが、先週は15日に急上昇してそれまでの上限を超えると、17日には引値でも3.1%台に乗せる水準にまで一気に上昇した。
 これまでも新興国通貨不安がくすぶっていたが、それでも先週までは危うい状況に追い込まれていたのはアルゼンチン・ペソに限定されていたのが、先週にはレジェップ・エルドアン大統領による強権的な統治体制から国内の政治情勢が不安定化しているトルコ・リラに波及した。さらにインドネシア・ルピアやブラジル・レアルも不安定な動きになり、両国の中央銀行が利上げを決定したり、緩和策を決めるのを見送らざるを得なくなった。


まだ中国不安といえる状況にはない

 一方で、先週15日に米長期金利の上昇から急落する場面があったが、総じて先進国の株価への影響はまだ軽微なものにとどまっている。外国為替市場でも対ユーロでドル高が進んでいるが、これはドイツの景気指標の低迷やイタリアの政局不安といったユーロ圏側の要因によるところも大きく、懸念されるほどドル高圧力が強まっているとはいえないだろう。
 新興国通貨不安が高まりつつあるなかで人民元安圧力も強まりつつあるとはいえ、少なくとも現時点ではまだ中国の政策当局で対処可能な状況にあり、「中国不安」と言い得る状況にまで至っていない。
・この勢力は中国政府に国有企業改革を推進させて国有銀行の不良債権を顕在化させるうえで、いずれ信用収縮を引き起こして“脅す”必要があるが、当面は朝鮮半島で平和条約を締結させることが最優先事項であるため、そのメドが立つまでは金融攻撃は回避へ。


欧州勢主導による第一次中国売り

 最近3年間で、中国は2回にわたり投機的な「中国売り」による攻撃を浴びてきた。
 1回目は15年8月11日の人民元切り下げ発表を機に起こったものであり、この時には主に欧州ロスチャイルド財閥系が盛んに人民元や中国株を売り叩いていた。
 欧州勢は当初、米ロックフェラー財閥の世界覇権に対抗するうえで、習近平国家主席が「一帯一路」構想を提唱していたのに相乗りして、中国の外貨準備を活用してユーラシア大陸に巨大な経済圏を構築するにあたり、その金融仲介業務を担っていこうとした。中国主導で創設されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、英国はじめ欧州の主要国が資本参加を決めたのはそのためだ。
 ところがその後、欧州の金融資本家勢は中国が国有企業を中心に簿外で天文学的な債務を抱えている実態が明らかになってきたことで、ひとまず中国と提携してユーラシア経済圏を構築することを諦めざるを得なかった。その代わり、米系資本と提携して中国に資本取引を自由化させ、国有銀行や代表的な国有企業を買収その他、資本参加をしていったうえで広大な経済圏を構築していく路線に切り替えた。
 この時、欧州勢はその一環として中国売りを仕掛けてきたわけだ。


中国への懲罰を目的とした米系主導の第二次危機

 2回目は16年初頭に、当時、米連邦準備理事会(FRB)で主導権を握っていたスタンレー・フィッシャー副議長が「年4回利上げするとの見方は妥当」との発言を機に、米系投機筋が“怒涛”のごとく中国売りを仕掛けたことで引き起こされたものだ。
 当時、中国では習近平主席がまだ完全に絶対的な権力基盤を確立していない段階で、南シナ海で軍事基地を建設するなど強硬に対外膨張路線を推進していたが、これに世界覇権を握っている米系財閥が怒り、配下の金融資本家勢に中国売り攻撃を仕掛けさせたものだ。当時、投機的な攻撃に“ゴーサイン”を出したフィッシャー副議長は、米系財閥の親イスラエル左派系が牛耳っており、世界の主要国の中央銀行の金融政策を実質的に統轄・管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)の最高幹部としてFRBに派遣されていたものだ。
 信用収縮が強まっていくにつれて、中国の外貨準備の実際の規模は公表されているよりかなり少ないとの見方が浸透していったことで、「中国危機説」がまことしやかに語られるようになったものだ。そうしたなかで、2月26~27日に上海で開催された主要20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、公式声明とは別に水面下で、人民元安圧力を軽減するために円高誘導で合意した経緯がある(「上海密約」)。


新たに主導権を握ったナチズム系が中国売り攻撃をやめさせる

 とはいえ、米国の世界覇権が08年9月15日のリーマン・ショックを機に絶頂期から斜陽期に転じ、それとほぼ軌を同じくして、「世界皇帝」として君臨した米系財閥の総帥デイヴィッド・ロックフェラーも死去した。それにより米国では、欧州系財閥から米系財閥本流に受け継がれた親イスラエル左派的で“コスモポリタン”的な世界単一政府志向系から、ネルソン・アルドリッチ(元共和党上院議員)やジョン・フォスター・ダレス(元国務長官)、ネルソン・ロックフェラー(元副大統領)、そして存命者としてはヘンリー・キッシンジャー元国務長官といった米系財閥の分流の系譜を引く親イスラエル右派的なナチズム系に主導権が移っている(ただし、ロックフェラー家のカルヴァン派プロテスタントの伝道師としての祖先を遡ると、本来はこのナチズム系が本流のはずである)。
 この系列は世界的に駐留している米軍を撤退させて属国群を独立させ、それらの国々に軍事力を強化させて中国と対峙させていこうとしている。その一方で、かつては欧州系財閥が推進しようとした路線だが、国有銀行や代表的な国有企業を買収も含む資本参加をして中国そのものを“蚕食”したうえで、「一帯一路」構想に乗ってグローバル規模で利権を拡大していこうとしている。
 そのためには米国の覇権の後退とともに、それに入れ替わって中国が軍事的、経済的に影響力を強めて米国と二分する「世界帝国」に発展させる必要がある。今すぐ中国を“殺す”わけにいかないため、新たに主導権を握り、ドナルド・トランプ政権の背後に控えているナチズム系は投機的な中国売り攻撃をやめさせた経緯がある。大投機家ジョージ・ソロス氏が“中国殺し宣言”をしたにもかかわらず、その後中国危機が沈静化していったのはこのためだ。


いずれ中国不安が引き起こされるがしばらくは危機を回避へ

 こうしたこれまでの経緯や新たに米国で主導権を握ることになった勢力の性格を考えると、足元の新興国通貨不安がさらに深刻化して中国危機に発展していくことは考えにくい。確かにこうしたナチズム系も中国市場を蚕食していくには、習近平主席に国有企業改革を推進させて国有銀行の不良債権を顕在化させていく必要があるため、いずれ何らかの形で信用不安を強めていき、中国から資本流出が促進されていく状況を醸成することで、バブル崩壊が加速する“恐怖心”を味わわせる必要がある。安定的な経済成長が続くなど“ぬるま湯”的な経済状況が続いていると、中国政府が“痛み”を伴う改革に本気で取り組むインセンティブがなかなか沸かないからだ。
 とはいえ、ナチズム系としては今すぐ中国に圧力を強めるのは得策ではないため、じきに足元の新興国通貨不安は沈静化していっておかしくない。足元の米国での労働市場を中心とする経済情勢を考えると、FRBが緩やかな利上げを推進していく路線は変わりようがないため、今後も米長期金利がある程度上昇していくのは避けられそうにないが、それでも危機に陥る状況を回避させようとしていくだろう――だとすれば、今後も長期金利が上昇する局面ではやや動揺する状況を経ながらも、基本的には株高傾向が継続されていく公算が高いと言える。


平和条約のメドが立つまで金融攻撃は回避へ

 どうしてナチズム系がまだしばらくは中国不安に陥るのを回避しようとするかというと、当面の最大の課題が朝鮮半島で休戦協定から平和条約に移行させることで、北朝鮮の体制を維持したまま在韓米軍を撤退させることにあるからだ。
 平和条約を締結するにあたり、4月27日に開催された南北首脳会談で打ち出された「板門店(パンムンジョム)宣言」では「南北米」または「南北米中」で協議するとされ、中国は場合によってはそこから排除される可能性が示唆された。とはいえ、中国は朝鮮戦争では北朝鮮に義勇軍を送り、韓国を支援した米軍と戦っただけに紛れもなく当事国であることから、実際には協議に参加させないで協定を結ぶことはあり得ない。
 そこで米国としてはこの協定で合意のメドが立つまでは、金融攻撃を仕掛けることで中国を“脅す”わけにいかないのである。


 明日は朝鮮半島情勢を巡り、先週には北朝鮮が南北閣僚級会談を一方的に延期し、米国との首脳会談も再考するなど一転して強気な姿勢に出たのに対し、トランプ大統領が核放棄におけるリビア方式の適用を否定するといった動きがありましたが、そのあたりの事情を考察します。
 明後日はそれに絡んで、米国と中国の関係について簡単に検討しておきます。
 週末はさらにそれに関係するものとして、日本の安倍政権が密かに目指しているものについても考えていきます。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。