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米朝首脳会談の開催の是非を巡るドタバタ劇の本質

ポイント
・先週後半にトランプ米大統領が米朝首脳会談の開催の中止を決め、翌日に北朝鮮側が姿勢を急激に軟化させたことで予定通り開催される流れになっているのは、北朝鮮側が好条件での合意を目指してかえって墓穴を掘ったとの見方が一般的だが、それは正しくない。
・本質的にトランプ大統領と金正恩委員長の背後勢力は一心同体であるために両者は阿吽の呼吸で動いていることを考えると、この間の動きは事前に仕組まれていた“プロレスじみた猿芝居”である。
・トランプ政権としては米国内ではCVIDやリビア方式を、国際的には中国が段階的な核処理を求めているなかでその整合性をとる必要があり、実際に今回のドタバタ劇や南北首脳会談の開催を受けて、以前に比べると中国の影響力がかなり減退している。
・北朝鮮にCVIDによるリビア方式を受け入れさせても完全に核放棄を実現させるのは不可能であり、核放棄の手法や手順自体はどのような形になってもまったく問題ではない。大事なことは平和条約を締結することで在韓米軍が撤退できる環境を醸成することだ。



ドタバタ劇の経緯を振り返る

 次に先週の北朝鮮情勢について考察する。
 24日にドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に宛てた書簡のなかで、6月12日に予定されている米朝首脳会談を中止する意向を表明した。ところが26日に急遽、板門店(パンムンジョム)で金委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との間で2回目の南北首脳会談が行われるなど急激に北朝鮮の姿勢が軟化し、米朝会談も予定通り行われる公算が高まりつつある。
 最近、北朝鮮を巡る問題については情勢の変化が激しく、なかなか付いていくのが難しいが、特にこの間の“ドタバタ劇”は“何をかいわんや”といったところだ。

 このドタバタ劇の経緯を振り返ると次のようになる。今月9日の時点では拘束していた3人の米国人を解放するなど首脳会談に向けて穏健な姿勢を示していた北朝鮮が、16日に米韓合同軍事演習の開催を理由に南北閣僚級会談の延期を一方的に通告してきたことから始まった。合同演習の実施は事前に北朝鮮側が了解していたものであり、しかもこの韓国との会談も具体的な日時を北朝鮮側が指定していた経緯があっただけに、まさに“言いがかり”とでもいうべきものだった。
 さらにその矛先は米国にも向けられ、16日に金桂官(キム・ゲガン)第一外務次官がジョン・ボルトン大統領補佐官を名指しで批判して核放棄を推進していくうえでリビア方式を拒絶し、それにこだわるなら首脳会談の開催を再考する必要があると脅してきた。この時にはトランプ大統領が翌17日にリビア方式の適用を否定して柔軟な姿勢を示したが、それでも北朝鮮側の姿勢は緩和するどころかさらにエスカレートしていき、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が「米国と会談場で会うか、核対核の対決上で会うかは米国の決心と行動如何にかかっている」などと過激な発言までして米国を牽制してきた。

 さらに、6月12日の米朝首脳会談に向けた水面下での事前折衝にも北朝鮮側が“すっぽかして”代表団が現れなかった。これにようやく米国側が態度を硬化させ、ボルトン補佐官の意向を受けて21日にマイク・ペンス副大統領が北朝鮮の出方次第では首脳会談を取りやめる可能性に言及した。翌22日の米韓首脳会談では文在寅大統領が賢明に米朝会談の実施を呼びかけたが、トランプ大統領は聞き入れなかった。
 北朝鮮は予定通り24日に豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破したが、そこでは公約していたはずの専門家が立ち会うことが認められなかった。それにより、ついに24日にトランプ大統領が金正恩委員長に会談の中止を通告する書簡を送った。
 ところが、それにより金桂官第一外務次官が「北朝鮮は米国との問題の解決を常に受け入れる」と表明するなど一転して北朝鮮の姿勢が軟化したが、それを受けてトランプ大統領の姿勢も軟化した。さらに26日には何の予告もなしに板門店で南北首脳会談が行われたのを受けて、当初の予定通り首脳会談を6月12日に実施することで再調整が行われているところだ。


北朝鮮が恫喝外交で墓穴を掘ったとの見方は不適切

 この間の動きについて、多くの専門家は北朝鮮側が首脳会談の開催に向けて米国から有利な条件を獲得するために、得意とする瀬戸際的な“恫喝外交”を繰り広げた結果、“墓穴を掘った”といった見方が一般的であるようだ。トランプ大統領が送った書簡では6月12日の開催は中止しても、その後の会談については必ずしも拒否していなかったことから、厳密にいえば「中止」ではなく「無期限延期」と言い得るものだった。それでも、米軍に攻撃できるように指示を出していたなかで、本当に会談が開催できずに米軍が攻撃すれば確実に体制が崩壊するからだ。
 しかし、多くの識者は最近の北朝鮮の強硬姿勢は中国の後ろ盾を得たことをその理由にしていたにもかかわらず、米軍の攻撃が視野に入ったことで北朝鮮側が柔軟な姿勢に転じたことを正当化するのは矛盾しているというものだ。


最初から仕組まれていたシナリオ通りの動き

 これまで当欄で何度も指摘しているように、北朝鮮の独裁者の金正恩委員長は親イスラエル派の“傀儡”である“影武者”であり、実際にそれを操っているのが朝鮮系の某国の工作員だ。いわば、金委員長とトランプ大統領の背後勢力は“一心同体”なのであり、両者は“阿吽の呼吸”で動いている。
 すなわち、両政府間の動きは“プロレスじみた猿芝居”なのであり、最初から仕組まれていたシナリオ通りの動きなのである。トランプ大統領が首脳会談の中止を通告する書簡を送ると、何のためらいもなくすかさず北朝鮮側の姿勢が穏健的になったり、26日には何の予告もなしに急遽、南北首脳会談が開催されたあたり、事前にシナリオが密かに進行していたことを疑わざるを得ないものだ。


国際的及び国内的の利害調整が困難のため猿芝居を演じる

 どうしてこうした猿芝居を演じる必要があったのかというと、トランプ政権で主導権を握っている親イスラエル右派的なナチズム系が在韓米軍を撤退させるメドをつけるために朝鮮半島で平和条約を締結するにあたり、国際的及び米国内での様々な利害対立を調整することが困難であり、一筋縄でいかない事情があるからだ。
 例えば米国内ではトランプ政権でナチズム系が主導権を握っているといっても、政財界では依然としてかつて、「世界皇帝」として君臨したデイヴィッド・ロックフェラーが率いた勢力が優勢である。すなわち、この勢力は軍需・石油産業を中心に米国の世界覇権の維持を目指す“コスモポリタン”的な世界単一政府系の勢力のことだ。
 この勢力がいまだに放送メディア界の主要部分も押さえているため、ナチズム系としては平和条約を結ぶにあたり、本当は核放棄の手順を巡りできる限り北朝鮮側に受け入れられやすいような段階的な措置を主張したくても、政官財や国内世論も含めて、圧倒的に強硬姿勢を支持する雰囲気が強いため、トランプ政権は「完全かつ検証可能で不可逆的(CVID)」に、また経済制裁の解除や支援はそれが終わった後で行う「リビア方式」を主張せざるを得ないのである。

 その一方で、トランプ政権としては国際的には、平和条約を締結するには朝鮮戦争の当事国の一つである中国を参加させなければならない。ところが、その中国は北朝鮮問題に関与を強めるにあたり、同国が望んでいるとされている段階的非核化を主張している。また米国主導でそれが進むことを嫌っているなかで、その米国が少なくとも表面的にはCVIDによるリビア方式の採用を提唱しているため、よけいにそうした主張を強めている。


人質にとることで妥協させて落としどころを探る

 そこでトランプ政権としては双方の主張を受け入れながら、また妥協するにしても仕方なくそうせざるを得ない状況を演出することで、落としどころを探る必要があったといえる。
 すなわち、米国内でCVIDによる一括処理を主張する勢力に対しては、北朝鮮側が首脳会談の開催を“人質”にとってその緩和を要求してきたので、ある程度はそれに妥協せざるを得なかったといった状況を作り出す必要があったわけだ。実際、17日にはトランプ大統領は北朝鮮側の抵抗を利用して、「北朝鮮に対してはリビア方式は考えていない」と表明することでボルトン大統領補佐官の強硬路線を封じようとしたものだ。
 その一方で中国に対しても首脳会談の開催を人質にとることで、それなりに一括処理に近い形で合意されるのを容認させようとしているわけである。実際、今回の“ドタバタ劇”を受けて、核放棄の手順を巡り中国の影響力が著しく減退している一方で、緊急で南北首脳会談を開催したことで文在寅大統領の存在感が再び高まっている。


大事なことは平和条約を締結して在韓米軍を撤退させること

 大事なことは、北朝鮮の核放棄を巡りCVIDによる一括処理であっても段階的な放棄であっても、また経済制裁の解除や経済支援は完全に核放棄が実施された後で行うリビア方式であっても、段階的に放棄していきながらその都度、行っていく「南アフリカ方式」であっても、それ自体はまったく大きな問題ではないということだ。実際に北朝鮮に完全に核放棄を実施させ、そのうえで核拡散防止条約(NPT)体制に再加盟させて定期的に国際原子力機関(IAEA)による厳格な核査察を実施させても、そうした国際社会や国際機関が想定していないところに隠せば査察をしても発見されることがないからだ。
 また本当に完全に廃棄されても、既に北朝鮮は核開発の技術を修得しており、その気になれば再び製造できる。さらにいえば、米国が求めているように技術者を全員、国外に居住させても、ドナルド・ラムズフェルド元米国防長官が関与しているスイスの軍需企業に再び教授してもらえば良いのである。
 トランプ政権で主導権を握っている勢力が目指しているのは、あくまでも平和条約を締結することで在韓米軍を撤退させることである。そこでは、一括処理であっても段階的放棄であっても、リビア方式であってもなくても、それ自体は本来的にどうでも良いことなのである。


 週末の2明日もこの続きを掲載します。
明日は前週の貿易協議の結果を含めて、米国の対中国戦略との関係について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。