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米中貿易摩擦面から見た米朝ドタバタ劇のもう一つの狙い

ポイント
・米国は中国に対して2,000億ドルもの対米貿易黒字を減らすように求めているが、いかに中国側が輸入を大規模に増やそうとしても、米国内では製造業が空洞化しているだけに供給能力がないことから、そうした要求は非現実的である。
・米国は貿易協議で本当は中国に対して「中国製造2025」や技術強要の廃止を求めているが、新興産業を興したり技術革新の能力がない中国はそれを受け入れると経済発展できなくなってしまうので、全面的に拒絶して当然である。
・米国はそうした経済発展モデルを封じることで国有企業改革に取り組まざるを得なくなる状況に持ち込むことで、買収も含めて中国そのものを“蚕食”しようとしており、その中国が発展していくことでグローバル規模で利権を拡大していこうとしている。



非現実的な米国の中国に対する赤字削減要求

 また先週24日に一時的に米朝首脳会談が中止になる可能性が高まった背景には、その前週に米国と中国との間で行われた貿易協議が密接に関係しているようだ。
 そこでは中国側が米国からの輸入を大幅に増やすとされたが、具体的な数値目標の設定は拒否した。米国側はこの中国側の譲歩にまったく満足しておらず、追加関税の発動はとりあえず見送ったが、それでもあくまでも保留にとどめておき、後から発動することを表明したことにそれが見て取れる。

 ただし、米中間の貿易問題の本質を理解するうえで大事なことは、ドナルド・トランプ政権は一見したところ、貿易赤字を“目の敵”にしているように見えるが、本当は米国側が望んでいることはそうしたことではないことだ。
 そもそも、米国側は中国に対して2,000億ドルもの対米貿易黒字を減らすように求めているが、そうした要求自体が非現実的であるところがそれを端的に物語っている。米国のモノに限定した対中貿易赤字は現在、3,500億ドルを超える程度であり、輸出が1,500億ドル程度なのに対して輸入が5,000億ドルに達している。そこで中国としては経済成長の失速を避けるため、対米輸出を減らさずに輸入を大幅に増やすことを提唱しているが、実際にはいくら関税を引き下げて非関税障壁もすべて撤廃し(実際にはあり得ないことだが)、国内で米国製品の購入を呼びかけても、製造業が空洞化しているだけに米国自体にそれだけの供給能力がないので不可能なのである。


重要なのは「中国製造2025」の廃止と技術強要の禁止要求

 今回の貿易協議で争点になったのは、①中国による米国からの輸入の増大による対米貿易黒字の縮小、②米国による中興通訊(ZTE)への制裁の緩和・撤廃、③中国による「中国製造2025」の廃止や技術強要の禁止――の三つの項目についてである。
 ここで重要なことは、米国が本当に求めているのは③の項目なのであり、貿易赤字の大幅な縮小を求めているのも、またZTEに対して7年間にわたり米企業との取引を禁じる制裁を科したのも、この要求を受け入れさせるための取引材料として利用しているに過ぎないことだ。


中国が経済発展できなくなるのだから全面拒否は当然

 これまで当欄で指摘してきたように、中国は共産党による国家指導型の経済発展モデルを追求してきた。習近平国家主席はかつて、朱鎔基首相(当時)が推進した民営化路線を否定して国有企業の合併を進めて肥大化させ、さらに国有企業の間でも共産党による指導体制を一段と強化しつつあるなど、そうしたモデルをさらに強めようとしている。
 ただそこでは個人の自由な思想や発想が阻害されているために新興産業が生まれることながく、また知的財産権が確立されておらず、いわゆる露骨な“拝金主義”が蔓延しているため、技術革新に磨きをかけてより高品質な製品を造る能力もない。その代わり、“国家ぐるみ”で巨大な中国市場といったものを“餌”に外資を導入してそこに介入して技術を強要させ、それを巨大な国有企業に修得させて大規模に生産活動を活発化させることで、中国はこれまで経済的に躍進することが出来た。
 こうした路線をさらに将来的に先端産業にまで拡大させることを謳った「中国製造2025」の撤廃や技術強要の廃止を強要されても中国側が全面的に拒絶したのは、それを受け入れれば中国はこれ以上、経済発展ができなくなってしまうのだから当然である。


米国は韓国で行ったことを中国でも行おうとしている

 米国はどうして中国に対して強硬にこうした要求をしているのかというと、中国がこれ以上、米国の世界覇権に挑戦する勢力に台頭していくのを阻害するためといった見方をしがちだが、そうした認識は必ずしも正しくない。ヘンリー・キシンジャー元国務長官を中心とするナチズム系は米国の覇権を徐々に後退させていく一方で、中国をそれに対抗する勢力に発展させることで、「新冷戦」構造を構築することで軍需を盛り上げながら、ユーラシア経済圏をも興隆させて、そこに米系資本も利権を伸ばしていこうとしているからだ。
 ただし、米系資本が利権を拡大していくには国有銀行や代表的な国有企業に対して積極的に資本参加をしていき、完全な買収もしていきながら中国そのものを“蚕食”していく必要がある。98年11月にアジア通貨危機が波及したことで韓国が経済破綻をしてしまい、国際通貨基金(IMF)の支援を受けたことで、有力な財閥系企業の多くが米系金融資本に発行済み株式の過半を握られた。それによりその後、韓国経済が復活して企業が高収益を計上しても、その多くが配当により米系資本に渡ったものだ。米国はそれと同じことを中国でも行おうとしているのである。


米国は中国そのものの“蚕食”を狙っている

 それには、実際の買収や資本参加にあたってはまだ当局による裁量によるところが大きいとはいえ、少なくとも制度面では資本取引の自由化がかなり進んだなかで、今後は中国政府にいかに国有企業改革に取り組ませていくかが課題になる。
 多くの国有企業はこれまで市場経済による規律が働かず、高度成長期の頃から共産党幹部により、「収益」「採算」を無視した“親方日の丸”の“ドンブリ勘定”の経営を続けてきたことで、簿外で巨額な債務を抱えている。本当に改革に踏み出すとそうした債務が顕在化することで、国有銀行の巨額な不良債権も明るみにならざるを得ないからだ。
 中国政府が米国側の要求に屈して先進国からの技術「盗用」による経済発展モデルを封じられてしまえば、もはや本当に国有企業改革に取り組むことで資産内容が正常化されたうえで、買収されることで外資による技術を移転させないことには経済発展できなくなってしまう。米国は貿易摩擦による中国に対する激しい攻撃を通じて、本当はそうしたことを狙っているわけだ。


中国に攻撃リスクをちらつかせて牽制する意味合いも

 米国は中国にそれを求めていくにあたり、昨年末までは北朝鮮への軍事攻撃をちらつかせることで攻撃してきた。攻撃すると大量の難民が国境を越えて中国の領域内に押し寄せることが想定されるが、それにより都市部で大暴動が発生し、共産党による統治体制すら危機的な状況に陥りかねないからだ。
 親イスラエル左派系の軍需産業系は、それも特に職業軍人系は年末頃には本当に攻撃を考えていたが、ナチズム系は最初からそれは想定しておらず、あくまでも中国を“脅す”手段と考えていたようだ。習近平主席が絶対的な権力を掌握するメドが立ったのを機に、年明け以降、中国に対して圧力を強める手段を、貿易摩擦の問題を煽ることで通商交渉に切り替えたことは、これまで当欄で述べてきた通りだ。
 今回、通商交渉で中国側が米国側が求めている肝心の事項についてはいっさい受け入れなかったので、次回の交渉に向けて、一時的にせよ再び朝鮮半島で軍事的な緊張状態が高まる状態になる恐れを抱かせることで、中国側を牽制する意味合いもあったようだ。

 前回の当欄で振れたように、国内での権力闘争だけでなく外交・安全保障面でも権謀術数が渦巻いているのであり、また世界各国・地域にはスパイ活動をする工作員がうごめいて密かに工作活動に従事しており、焦点となる当該国の政府要人ですらそれに操られていることが多い。表面的な事象だけを追うのではなく、その裏側の真実を見抜くために冷静に観察して分析し考察していく必要があるのはいうまでもないことだ。


 今週はこれで終わりになります。今週もご拝読いただき、ありがとうございました。
 来週もこれまで通り、週明け4日(月)から掲載していくので、よろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込んでいただければ幸いです。できる限り、ご返信させていただこうと考えております。
 また、少人数形式でもかまいませんので、セミナー等のご要望がありましたらご連絡いただければ幸甚です。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。