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北朝鮮問題における拉致問題の高まりの本質

ポイント
・米朝首脳会談の開催前にその打ち合わせを目的に日米首脳会談が開催されたが、そこでは両首脳のすれ違いが目立ったといった論調が多かったがそれは正しくなく、実際には安倍首相も米朝両首脳の“猿芝居”のメンバーだったことが明らかになった。
・日本では北朝鮮問題では核・ミサイル問題以上に拉致問題に対する関心が高いが、この問題は国家の安全保障の土台を揺るがすような問題ではなく、それとは次元の異なるものだ。
・米国で現在のトランプ政権で主導権を握っている勢力は北朝鮮により多くの賠償金を払わせるために拉致問題を利用しており、注目されればされるほどその金額が吊り上がることになる。中国や韓国もそれに同調している。



欧州への挑発に油を注いだトランプ米大統領

 先週は12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談というビッグイベントを控えて、その調整をする目的で安倍晋三首相が訪米し、7日に日米首脳会談が行われた。そして両首脳はそのままカナダに向かい、8~9日にシャルルボワで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開催された。

 サミットへの参加を控えて、ドナルド・トランプ米大統領はツイートで激しく欧州連合(EU)やカナダの保護主義的な関税制度を批判する論調を繰り広げており、挑発に“火に油を注ぐ”ことをした。そしてこの首脳会議にロシアを復帰させて「G8」に戻すべきだと主張したことで、右翼政党やポピュリズム政党による連立政権であるイタリアを除く欧州勢のさらなる怒りを買った。さらにカナダのジャスティン・トルドー首相の言動に反発し、サミットの閉幕を待たずして米朝首脳会談が行われるシンガポールに向かう機中で共同声明に署名しないように指示することもした。
 トランプ大統領は閉幕式に出席しないでシンガポールに向かったが、事前にそうした首脳会談の日程を組んだあたり、最初から欧州勢を相手にしないつもりだったのは明白である。ただ、米欧関係にロシアを含む今後の情勢を考える前に、まず日米首脳会談の意義について考察する。


安倍首相もプロレスじみた猿芝居に入っていた

 今回の日米首脳会談では、日本では米朝首脳会談を控えてトランプ大統領が拉致問題をしっかり採り上げるかどうかに関心が集まったが、会談後の記者会見では、大統領は日本との貿易協議の問題で多く発言した。そのため、識者の間ではトランプ大統領が「安倍首相と建設的で価値のある協議を行った」、安倍首相も「日米は常にともにある」などと述べたとはいえ、両首脳間ですれ違いがあったといった指摘が聞かれるが、それは正しくない。
 結論から先に言えば、これまで安倍首相はトランプ大統領から朝鮮半島情勢を中心にしっかり説明や指示を受けており、それに基づいて行動をしている。いわばこれまで当欄で指摘したように、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は“阿吽の呼吸”で“プロレスじみた猿芝居”を演じてきたが、その構成メンバーに安倍首相も入っていたことが、今回の首相の記者会見で明らかになったといえなくもない。
 その意味では、今回の首脳会談では安倍首相の会見内容の方が極めて重要であるといえる。


拉致問題は核・ミサイル問題と比較すべきではないもの

 日本側は非核化やミサイルの廃棄だけでなく拉致問題の解決も主張しており、今回の日米首脳会談では安倍首相が再三にわたり金正恩委員長との会談でそれを採り上げるように要請したことで、トランプ大統領からその確約を得たとされている。実際、米中首脳会談でも詳細は明らかにしていないとはいえ、トランプ大統領はしっかりそれを採り上げたと明言していた。
 ただし、物事の本質論からいえば、拉致問題は確かに人道上、非常に重要な問題ではあるが、国家の安全保障の土台を揺るがすような問題ではない。巷間では核・ミサイル問題以上に拉致問題の方により関心が集まりがちだが、これこそはまさに“洗脳工作”に踊らされているというべきものだ。実際、拉致された人たちは日本人だけでなく韓国や米国にもいるが、日本ほどこうした問題で騒がれていない。
 拉致された人々やそのご家族の方々には誠にお気の毒としか言いようがないが、あえて誤解のないようにはっきり指摘すれば、この問題で悲しい思いをされているのはそうした人たちに限定されている。核ミサイルで日本の本土が狙われる危険性と比較すべき問題ではないものだ(ただし、核ミサイルの恐怖も多分に米国の軍需産業系により仕組まれたものだが)。


拉致被害者の存在の本当に意味するもの

 米国の軍需産業系はこれまで、拉致問題による被害者の悲しみと北朝鮮の行為による悪質性を増幅させることで、米軍が韓国や特に沖縄はじめ日本に駐留し続けることを正当化する根拠の一つとしてきた。
 ただ現在の状況を考えるうえで重要なことは、トランプ政権で主導権を握っているナチズム系が拉致問題で好意的な姿勢を見せているのは、それだけ日本から多額の資金を拠出させようとしているからだ。日朝間で国交を結ぶ段階になれば、当然のことながら日本側が北朝鮮に戦後賠償金を支払うことが俎上に上ることになるが、その際に拉致問題が注目されて大きく取り上げられれば取り上げられるほど、その支払う金額が吊り上がっていくことになる。
 そしてその資金は、米国が平和条約を結んで国交が締結された後、米系資本が優秀なハイテク技術を有する日本の産業界とともに北朝鮮に進出し、世界最大の埋蔵量を誇るとされるウラン鉱石をはじめ、豊富な天然資源を採掘して事業化していくことに利用されることになる。実際、トランプ大統領が北朝鮮に経済支援をしていくにあたり、「その資金は中国や韓国、そして日本が支払う」と述べた通りだ(さらに米朝首脳会談が終わった後、資金拠出国として中国をはずして韓国と日本を挙げている)。
 その意味では、このように述べると拉致被害者やそのご家族の方々は気を悪くされるかもしれないが、拉致被害者は“体の良い人質”なのである。


拉致問題で騒ぐほど支払う金額が吊り上がる

 いうまでもなく、日本がより多くの資金を拠出すればそれだけ自分たちの支払う金額が減るので、中国や韓国にも好都合である。以前、6ヵ国協議を主催していた際には、中国政府は北朝鮮側が機嫌を損ねてしまい、それだけ合意に向けた動きを阻害するので、拉致問題にこだわり続けていた日本側に対して不快感を示していた。韓国でも北朝鮮との融和姿勢を掲げていた左派系の勢力もそれと同様な姿勢だった。
 ところが現在では、韓国では左派系の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が拉致問題の解決を北朝鮮側に働きかける姿勢を示し、中国も先日、訪日した李克強首相がそれと同じような姿勢を見せたのは、日本側により多くの資金を出させようとしているからにほかならない。私たちはこのことをしっかり認識する必要がある。


 明日はこの続きとして、主に安倍首相の動きの本質に焦点を当てて考察します。
 週末の明後日では、シャルルボワ・サミットで米国と欧州が主に通種問題で対立を激化させましたが、その背後にどのような事情があるかを、ロシア問題も含めて考えることにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。