記事一覧

ロシアとの提携でNATOが崩壊・変質し欧州に危機が迫る

ポイント
・米国は中国に対して北朝鮮に対して軍事攻撃の可能性や貿易摩擦を強めて圧力をかけてきたなかで、外交面でもロシアと提携しようとしているのに対し、米朝間で水面下で交渉していた際に中国は上海協力機構の首脳会議を開催して同国を繋ぎ止めようとしていた。
・米朝首脳会談が実現した今、これからは日朝首脳会談とともに米ロ首脳会談の行方が焦点になるが、トランプ大統領が親イスラエル左派系からロシアゲート事件を引き起こされて身動きが取れないなかで、安倍首相の仲介が重要な意味を持つ可能性も。
・米国は世界的に駐留している米軍を撤退させようとしているなかで、ロシアとも提携しようとしており、欧州からも米軍を退かせようとしており、NATOが崩壊や変質のききにさらされていることで欧州勢が激しく反発している。
・米国が保護主義的な通商政策を推進していることで輸出依存度が高い中国とドイツが打撃を受ける恐れが高まっているため、両国はもとより経済的なつながりが強かったが、よけいに関係を深めていくことが想定される。
・米国は両国への圧力を強めるには本来なら信用収縮を強めるのが有効だが、当面は朝鮮半島で平和条約を締結するにあたり、中国への配慮からFRBがハト派的な政策を推進している。代わりにロシアやインドを引き入れてある種の包囲網を築く必要がある。
・米国が内向きで保護主義的な動きを強めれば経済的にブロック化が進んで軍事的にも分裂化が進んで群雄割拠化していくことになる。コンドラチェフ・サイクルの上昇局面では軍需の創出等から経済成長できるが、天井を打つと大恐慌が到来し世界大戦への危機も。



ロシアとの提携は中国を牽制することになる

 これまで当欄で述べてきたように、米国は表面的には属国群を独立させて連携したうえで中国と軍事的に対峙していきながら、その一方では中国そのものを“蚕食”していきながら「一帯一路」構想に乗ってユーラシア大陸に利権を拡大していくため、習近平政権に国有企業改革を推進させようとしている。
 そこでこれまで、北朝鮮に対して軍事攻撃をちらつかせて難民が国境を越えて中国の領域内になだれ込む恐怖を与えたり、貿易摩擦を強めて中興通訊(ZTE)を制裁したり「中国製造2025」の撤廃、技術強要の禁止を要求することで中国に対して圧力をかけてきた。
 中国の北方に位置し、世界最大の国土面積を誇ってユーラシア大陸を東西にアジアと欧州にまたがっているロシアと提携することは、「一帯一路」構想と競合することから中国を牽制することになる。当然のことながら中国もそのことは理解しており、12日の首脳会談に向けて米国と北朝鮮が水面下で活発に交渉していた際に上海協力機構(SCO)首脳会議を開催していたが、その主目的はロシアを繋ぎ止めることにあったといえる。


これから日朝とともに米ロ首脳会談の開催の行方が焦点か?

 米朝首脳会談が実現したことで、これからはアジア極東では日朝首脳会談の実現とともに、米ロ首脳会談の開催の行方にも注目が集まってきそうだ。実際にドナルド・トランプ政権はその実現に向けて準備をしており、ロシアと反目している欧州連合(EU)の中でも比較的親ロシア的とされるオーストリア政府にその仲介を求めているという。
 またナチズム系に反目している親イスラエル左派や軍需産業系からロシアゲート事件を引き起こされている状況では、トランプ大統領としてはウラジーミル・プーチン大統領とホットラインで連絡を取り合っていても直接的に会談できなかったなかで、安倍晋三首相がその仲介をしていたところもあったようだ。これからロシアゲート事件による反対勢力の追求が下火になれば、そうした動きが表面化しておかしくない――その時には日本でも、沖縄はじめ駐留米軍の撤退に反対している防衛族の政治家や親米的な官僚勢力、そうした勢力とつながっている親米的なマスコミ勢力が作為的に煽り、トランプ大統領とつながっている安倍首相を追い詰めている森友加計問題も薄れていくのかもしれない。


米ロ提携でNATOが変質し米軍撤退も

 米国とロシアが提携していけば、第二次世界大戦後、かつてのソ連や90年代以降のロシアの軍事的な脅威から欧州を守るために設立された北大西洋条約機構(NATO)も、その崩壊や廃止の可能性も含めて変質していかざるを得ない。いわば、この問題はトランプ政権で主導権を握っているナチズム系の勢力が世界中に展開している米軍を徐々に、それでいて次々に撤退させようとしているなかで、欧州に駐留している米軍が退いていく動きの一環であるともいえる。
 米国は基本的に中東の管理はロシアに任せていこうとしているが、ドイツはじめ先進国の連合体であるEUについては日本と同様に、自国・地域の防衛は米軍に依存せずに自分たちで賄っていくように仕向けられたものだ。今回のシャルルボワ・サミットで、トランプ大統領がロシアを復帰させて「G8」にしようと提唱すると、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領を中心に激しく反発したのは当然である。
 ただし、イタリアのジュゼッペ・コンテ新首相だけがそれに賛同したが、その連立政権では「同盟」のマッテオ・サルビーニ書記長がプーチン大統領の崇拝者であり、「五つ星運動」も米国の親イスラエル右派から支援を受けているのだから当然だ。おそらく、このイタリアの新首相自身は大学の教授なのでそれほどではないかもしれないが、その背後勢力は安倍首相とも気脈が通じるはずである。


米国に通商政策で狙われて中国とドイツが一段と提携も

 トランプ政権が大規模関税を発動する保護主義的な通商政策を推進していることで、米国向けを中心に経済成長に占める輸出依存度が高い中国やドイツが大きな打撃を受ける恐れが高まっている。
 そこで両国は内需を浮揚させる必要がある。このうち中国では、政府主導による採算を度外視した非効率な固定資産投資の比率を低下させようとしているなかで、個人消費の比率を上昇させようにも、都市戸籍の保有者と農民戸籍のそれとでは絶望的なまでに格差が拡大しており、それにも限度がある。またドイツでも、3月に第4次メルケル政権が発足したことで財政支出の拡大に比較的寛容な社会民主党(SPD)が重要閣僚を押さえたが、それでも首相の“お膝元”であるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)では健全財政の維持を主張している教条主義的な財政タカ派の影響力が強く、大規模な財政出動政策に踏み切るのは難しそうだ。
 そこで、もとよりドイツは中国経済とかなり連携が強かったが、さらにそれを強化していくことで、例えば電気自動車(EV)の開発や「一帯一路」構想の下でのユーラシア大陸での物流網の整備、さらにその活発化に向けて連携していこうとしている。


米国は信用収縮を強めるのが得策だがしばらく見送りへ

 米国としてはこうした中国や欧州の中核国であるドイツに打撃を与えるには、本来なら株価を暴落させるなど信用収縮を引き起こすことが有効であるはずだ。そうなると中国では資本流出が加速することでバブル崩壊が促進されるからであり、またドイツでは国債に資金が向かうことでその限りでは危機を免れ得るが、その一方でつい最近でもイタリアやスペインでの政情不安に揺れた際に経営不安が高まったドイツ銀行を筆頭に、資産内容が悪化している銀行が多いからだ。
 とはいえ、これまで当欄で述べてきたように、トランプ政権は朝鮮半島で平和条約が締結されるメドが立つまでは、中国を過度に追い詰めないためにFRBにハト派的な金融政策運営を推進させようとしている。そのため、少なくともそれまでは中国の北方に位置していてドイツに対しては直接的に軍事的な脅威になっているロシアや、さらに中国の南方のインドをも取り込むことで、それほど強力なものは必要ではないにせよ、ある種の包囲網を築く必要がある。
 幸いなことに、ロシアだけでなくインドでも、ナレンドラ・モディ政権の与党である人民党はヒンドゥー至上主義を掲げているだけに、親イスラエル右派の勢力と提携しやすいところがある。そこではかつて、「自由と繁栄の弧」という概念を提唱し、それにトランプ大統領が賛同した経緯があるだけに、安倍首相による仲介が重要になっていくかもしれない。


米国の動きは長期的な視点で大恐慌や世界大戦を引き起こす

 ただし、トランプ政権の登場により米国が内向きで保護主義的な動きを強めれば、通商面ではブロック経済化が進み、反グローバル的な動きが強まることで軍事的にも分裂傾向が顕著になって群雄割拠化していき、地域ごとに提携や対立を繰り返すことで不安定になりやすくなる。米国の世界覇権が絶頂期を過ぎて斜陽期に転じたので、それ自体は避けて通れないものだ。
 それでも、「新冷戦」により軍需が盛り上がり、またユーラシア大陸でのフロンティアが開拓されている間は世界的に経済成長の恩恵に欲することができる。しかし、それが行きつくところにまで行きついてしまい、もはやそれ以上の成長がもたらされなくなると、1930年代の世界大恐慌が再来し、世界的に大規模な戦争状態に陥る危険性が高まりかねない。
 ただし、それはまだ先の話であり、08年のリーマン・ショックの到来を機に底入れしたコンドラチェフ・サイクルが天井を打って以降のことである。


 今週はこれで終わりになります。今週もご拝読いただき、ありがとうございました。
 来週もこれまで通り、週明け18日月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込んでいただけると幸いです。出来る限り、ご返信させていただきます。
 また、筆者のお話を直接お聞きになりたいようでしたら、少人数での懇親会のような形でもかまいませんので、講演会をお引き受けさせていただきます。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。