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先週の動き・・・・FOMCやECB理事会の結果からユーロ安・ドル高に

ポイント
・FOMCの内容がタカ派的と受け止められたことや、週末に米トランプ政権が知的財産権の侵害問題で中国からの輸入に制裁関税を課すことが発表されたことで米中貿易戦争への懸念が高まり、週後半にリスク回避から米株価が軟調な展開になった。
・外為市場ではFOMCの結果を受けてドル高圧力が、ECB理事会でのドラギ総裁の会見内容がハト派的とされたことでユーロ安圧力が強まった。米中貿易戦争への懸念を背景としたリスク回避による円高圧力は一時的なものにとどまった。


 先週の国際金融市況は米連邦公開市場委員会(FOMC)で打ち出された内容がタカ派的とされたことや、米中貿易戦争への懸念が現実味を帯びたことから、株価はどちらかといえば週後半に軟調な展開になった。

 米国株は週前半にはイタリアが欧州連合(EU)から離脱する懸念が遠のいた一方で、米消費者物価指数(CPI)が予想以上に伸びたことで連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速観測が強まり始めたことからダウは小動きにとどまり、ナスダックは12日に前日比43ポイント高になるなど堅調に推移した。13日にはFOMCでの委員による利上げの回数の見通しの分布状況(ドットチャート)がタカ派的とされたことで軟調な展開になり、ダウは同119ドル安になったが、ナスダックは小幅安にとどまった。
 翌14日には欧州中央銀行(ECB)理事会後のマリオ・ドラギ総裁の会見内容がハト派的とされたことで当初は欧州株に追随して上昇したが、その後ドナルド・トランプ米政権が中国に対して制裁関税を課すと報道されたことで下落していき、ダウは同25ドル安になった。週末15日には実際に制裁関税を課すことが発表されたためにリスク資産市況が全般的に軟弱な動きになり、ダウは一時同280ドル安まで下げたが、引けにかけて下げ幅を圧縮していき、同84ドル安にとどまった。

 日本株は為替が円安気味に推移したことから総じて堅調な展開になった。
 週初11日はイタリアのEU離脱懸念が薄れたことから上昇して日経平均は前週末比109円高になり、そうした地合いが翌12日も続いて前日比74円高になった。13日にはFOMCが開催されていたなか、米CPIの発表を受けて米利上げ加速観測からドル高(円安)になったことから続伸し、同88円高になった。
 その後、14日にはFOMCでの動きから米国株が下落したことで同227円安と反落したが、週末15日にはそれによりドル高(円安)に振れたことが好感されて同113円高になった。

 外国為替市場では総じて円安含みになったなか、週後半にはFOMCの結果を受けてドル高に振れ、またECB理事会を受けてユーロ安圧力が高まった。
 ドル・円相場は週初11日にはイタリアのEU離脱懸念が薄れたことでリスク選好から1ドル=110円台に強含んだ後も、12日には強気な米CPIの発表を受けて、さらに13日にはFOMCの結果がタカ派的と受け止められたことからドル高圧力が強まり、同日のニューヨーク市場では110円85銭まで上昇した。
 その後、14日にはそれにより米国株が下げたことや、そこに米中貿易戦争への懸念も加わってリスク回避が強まったことからいったん反落して東京市場では一時110円割ったが、米小売売上高がかなり良好な内容だったことからすぐに切り返した。そして週末15日にはECB理事会を受けたユーロ安圧力に伴うドル高圧力から一段高になり、東京市場の終盤では110円90銭まで上昇した。

 ユーロ・ドル相場は週初11日にはイタリアのEU離脱懸念が薄れたことで1ユーロ=1.182ドル台に上昇したが、その後12日には米CPIが事前予想を上回り、翌13日にはFOMCの結果を受けて米利上げ加速観測が強まりだしたことから上値を抑えられた。
 そして14日のECB理事会では既に年内に量的緩和策が終わることが織り込まれていたなかで、ドラギ総裁の会見を受けて来年夏まで利上げがないとの見方が出たことからロンドン市場では急激にユーロ安圧力が強まり、1.16ドル割れに急落した。
 週末15日には米中貿易戦争への懸念によるリスク回避から一時ドル安圧力が高まったものの、すぐにそれまでのドル高圧力が強い状態に回帰し、ニューヨーク市場では1.154ドル台に一段安になった。


ドル安のなかを金相場が急落したことに注目

 先週は週末15日に米政府が知的財産権の侵害に伴い、1,102品目に及び中国製品の輸入に対して500億ドル分に相当する25%もの関税を発動することが発表されたことで、米中貿易戦争への懸念からリスク資産市況が全面安になった。ただし、株価についてはダウが前記のように引けにかけて下げ幅をかなり縮小しており、ナスダックについてはそれほど下げ圧力が強くなかった。
 注目されるのは、外為市場でもリスク回避からドル安圧力が強まる場面があったものの、金相場が安全資産や“永遠不変”の「無国籍通貨」として買われることなく、反対に30ドル程度も急落したことだ。

 この急落については、米国との間で貿易戦争が高まることで中国で購買力が損なわれてしまい、金の需要が落ち込むことが警戒されたといった指摘が出ていたが、いかにも“取ってつけた”ような“後解釈”の感がしないでもない。
 貴金属市場は市場規模が小さいだけに、他の主要な金融市場に比べると値動きが大きい一方で、それらを先取りして動く傾向がある。だとすれば、この急落はリスク資産の代表である株価が上昇していくか、外為市場でドル高が進むことを先取りしている可能性がある。
 前者なら15日の株価が引けにかけて下げ幅を縮小していくなど“引け味”が良かったことが想起される。後者なら株高とともに米長期金利が上昇していったり、ECB理事会を機にユーロ安圧力が強まることでドル高が進むことを暗示した動きといえなくもない。


 今週は、明日はECB理事会の決定事項やドラギ総裁の会見について、明後日はFOMCの結果について検証します。
 ECB理事会ではハト派的な姿勢の背景について、FOMCについては本当にタカ派的な決定なのかについて検証します。
 週後半については先週12日の米朝首脳会談について採り上げます。
 トランプ大統領の本音や日本の資金拠出負担について考えることにします。
 今週もよろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。