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足元の衝突では米国が勝利し中国への覇権の交代はすぐには実現しない

ポイント
・貿易摩擦が激化すれば、米国は中国からの輸入が滞っても他の輸出国からの代替が可能であるのに対し、中国では経済成長に占める輸出依存度が高く、しかもFRBが引き締め政策を強めればバブル崩壊が進んでしまうので明らかに不利である。
・「中国製造2025」や技術強要の禁止を受け入れれば、中国はこれまでの経済発展モデルを破壊されてしまう。米国の世界覇権は斜陽期に転じているが、コンドラチェフ・サイクルの期間を考えても、中国への覇権の交代はまだかなり先の話である。



チキンレースは長引けば明らかに中国が不利

 さしあたり、この米中間の貿易紛争は“チキンレース”の様相を呈しつつあるが、長引けば明らかに中国の方が不利である。
 米国としては中国からの輸入が滞っても、その多くは日本企業が多く進出している東南アジアその他の地域からの輸入で賄うことが可能であり、こうした地域は米国向けの輸出を伸ばす好機と考えているだろう。大豆の輸出が停滞することで米国の農家が打撃を受けるとの指摘があるとはいえ、与党共和党はそうした政策を嫌うかもしれないが、そうした人たちに所得補償をすることで解決できる。むしろ経済成長に占める輸出依存度の大きさを考えれば、固定資産投資の伸びが鈍っており、都市戸籍の保有者と農村戸籍のそれとでは格差が絶望的なまでに拡大していることから個人消費も思うように伸びないなかで、中国の方が打撃が大きいはずだ。
 さらにいえば、本格的に両大国が“ガチンコ”で対決する事態になるようなら、少なくとも現状では世界最強の軍事力を保持しており、基軸通貨国でもある米国の方が圧倒的に有利である。それは、米軍が軍事封鎖をしてエネルギー供給を遮断するといった荒療治をしなくても、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め政策を強化することで世界的に信用収縮を強めれば、中国では資本流出が促進されてバブル崩壊が進んでしまうからだ。FRBの金融政策姿勢は、中国に対しては極めて強力な“脅し”になり得るのである。
 中国は世界最大の米国債保有国であり、それを売ることで米国に強力な打撃を与えることが出来るといった指摘が聞かれる。しかし、そのようなことをすれば信用収縮が進んで自らのバブル崩壊に拍車をかけてしまうので、そうした“自縄自縛”なことをするはずがない。


中国への覇権の交代はまだ長い時間を要する

 最終的に「中国製造2025」の撤廃や技術強要の禁止といった米国側の要求を受け入れざるを得なくなると、中国としては新興産業を興したり技術革新を推進する能力に著しく欠けるだけに、他の何らかの発展モデルを見出さなければ経済発展が出来なくなってしまう。そのため、それが軌道に乗るまでの間は中国経済は低成長が続かざるを得ない。米国の世界覇権は今や斜陽期に転じており、長期的な視点では中国にその地位を明け渡していくのだろうが、その時期が遠のくことで延命されていくのだろう。
 歴史及び景気循環の観点でいえば、リーマン・ショックを機に下降局面に転じたヘゲモニー(覇権)・サイクルが底入れするまでに、約60年周期のコンドラチェフ・サイクルが底入れしてから天井を打って底入れするまで1回転する必要があり、それだけの長い期間を要するということだ。米国でリーマン・ショックによる巨大な金融危機に襲われてしまい、4兆元の景気対策が奏功して中国がいち早く不況から脱して一時的に世界経済を牽引していた際に、識者の間でごく短期間のうちに米国の覇権が凋落して中国にその地位を譲るといった“馬鹿げた”予測をする向きがいたものだ。しかし、そうした人は経済構造だけでなく「歴史の法則」も理解していなかった“愚か者”といわざるを得ない。


技術盗用が出来なくなれば国有企業改革が必要に

 大事なことは、中国がこれまでの外資の技術を盗用したうえでの共産党独裁国家による経済発展モデルを追求出来なくなれば、かつてのソ連のように埋没していくのを避けるには、本格的に国有企業改革に取り組まなければならなくなることだ。
 中国では市場経済システムが十分に機能しておらず、投資活動や企業経営における「採算」や「収益」、「自己責任」といった概念が非常に希薄である。だからこそ、居住者がほとんどいない「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンを建てたり、高度成長期には資源や食料を買い漁る「資源爆食」と呼ばれる現象が見られたのである。
 そのため、多くの国有企業は本当は高度成長期の頃から赤字体質だったようであり、それを海外でドル資金を調達して「偽装輸出」で中国国内に持ち込んで人民元に換え、売り上げに回す粉飾をしていたようだ。人民元相場に下げ圧力が強まっていた際に、人民銀行が必死にそれを買い支えていた最大の理由は、元安が進むことで実質的な債務返済負担が激増するのを避けるためである。

 米権力者層は中国政府が国有企業改革に取り組むのに乗じて資本進出していこうとしているが、ユダヤ金融資本は昔からそうして覇権国を渡り歩きながら、その裏側で政治経済を扇動しながら利権を握ってきた。中国共産党幹部がそうしたユダヤ資本の戦略に屈してしまうのか、今後の大きな“見どころ”だが、「歴史の法則」からは屈していくことが容易に予測できるといえよう。


 今週はこれで終わりになります。今週もご拝読いただき、御礼申し上げます。
 来週もこれまでと同様に、週明け2日(月)から掲載していくので、よろしくお願いします。
 なにかありましたら、書き込んでいただければ幸いです。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。