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EU分裂の動きを煽ることで欧州に対し優位に立つ米国

ポイント
・欧州に困難な状況をもたらした15年のシリアからの大量の難民の流入はISの強大化に直接的な原因があるために米国の策謀によるものとの観測が根強いが、現在、米国で主導権を握っている勢力はISを支援していたわけではないため、それは考えにくいだろう。
・ただし、欧州では統合を実現するには本来的に政治統合まですることで財政政策を一本化する必要があるにもかかわらず、それが実現できていないために欠陥システムなのであり、そうした脆弱な部分を米国が攻撃していることは間違いない。
・かつて、ヒトラーを裏側で支援していたのは、現在の米国で主導権を握っている勢力につらなる人物だったが、当時もヴェルサイユ体制による欠陥システムを米系財閥が攻撃して大恐慌を引き起こしていったあたり、現在と似ているところがある。
・ドイツではメルケル政権が閣僚の造反を防ぐためにもEU首脳会議で合意を取り付ける必要があったが、そこでは米国のナチズム系やロシアから支援されているイタリアのコンテ首相が声明案に合意するのを、最後の土壇場まで拒絶していたことから紛糾した。
・今回のEU首脳会議ではこれまで大きな影響力を行使してきたメルケル首相の神通力の低下が目に付いたように、先進7カ国の一角にしてユーロ圏、EUで3番目の経済大国であるイタリアを米国が“人質”にとることで米国が影響力を強めていることが明らかに。


大量の難民の流入が米国の策謀によるとの見方は疑問

 欧州での移民・難民問題について、ここで裏側での米国との関係を考えてみる。
 欧州で困難な状況をもたらした15年のシリアからの大量の難民の流入については、裏側で米国の策謀によるものといった観測が聞かれる。大量の難民を発生させることになったイスラム国(IS)をイスラエルやサウジアラビア、そしてその背後で米国が支援していたことや、欧州で移民・難民の排斥を主張している極右勢力を米国がロシアとともに支援しているからだ。
 ただ結論から先に言えば、後者の極右勢力を支援しているのは確かにドナルド・トランプ政権の背後で主導権を握っている親イスラエル右派的なナチズム系の勢力だが、ISを支援していたのは親イスラエル左派系の石油・軍需産業を中心とする軍産複合体なので、筆者はそうした見方は必ずしも正鵠を射ていないと考えている。こうした勢力は戦後の国際秩序とでもいうべき、米軍が世界中に駐留し続けることで米国の世界覇権の国際秩序の維持を目論んでおり、欧州との関係についても北大西洋条約機構(NATO)の枠組みを維持することでロシア(旧冷戦時代はソ連)に対処していく状況を継続していこうとしているからだ。
 そうした米国の勢力が、欧州の分裂にまで発展していく可能性をも秘めるような大量の難民を欧州に送り込むことを裏側で後押ししているとは考えにくい。


欧州の欠陥部分を米国が攻撃している

 ただ間違いなくいえることは、もとより欧州の統合には大きな欠陥があったが、そうした脆弱な部分を国家主義・民族主義的な志向が強い米国の親イスラエル右派的なナチズム系に攻撃されていることだ。
 いくつかの小さな自治体をまとめてさらに大きな自治体にすることで巨大国家を建設するには、経済・通貨統合だけでなく政治統合まで実現しないとうまく機能するはずがないのは正当な経済学でも立証されていることだが、それを欧州はあえて避けているからだ。自治体の統合体を機能させるには、統合体の中心部である豊かな地域から経済的に脆弱な地域に所得移転をすることが必要であり、それには政治統合まで実現することで財政政策についても一本化しなければならないからだ。
 それでも、経済状態がバブル化している際には経済的に脆弱な地域では所得以上に大きな購買力がもたらされていたが、それが破綻すると債務だけが残ってしまい、国家規模では財政破綻に陥ることになる。実際にギリシャ危機はそうして引き起こされたのだが、それでも世界経済規模で見るとまだ米国の世界覇権が斜陽期にさしかかったばかりの段階にあり、米ドル基軸通貨体制も盤石な状態にあるので、そうした危機は局所的なものにとどまった。
 しかし、その世界覇権が揺らいで本当に米ドルの基軸通貨としての信用が低下していくと、世界経済の悪化とともにそうした極右勢力は極めて危険なものになっていくだろう。


ヒトラー出現の当時と現在とでは符合している

 実際、かつてドイツのアドルフ・ヒトラーを操っていたのがスイスのバーゼルに滞在していたジョン・フォスター・ダレスだったが、その後継者が現在のトランプ政権で主導権を握っている勢力の最大の大物であるヘンリー・キッシンジャー元国務長官であることをよく認識する必要がある。
 当時、欧州ロスチャイルド財閥の英国本家の勢力は、1919年のヴェルサイユ条約で大規模な軍縮と法外な賠償金の支払いを義務付けることでドイツを再起不能な状態にし、英国の世界覇権の維持を図ろうとしたが、それ自体が巨大な“欠陥システム”だったことは説明するまでもないことだ。
 実際、それは「ヤング案」や「ドーズ案」を制定し、当時、最大の債権国だった米国で資産バブルを膨張させなければ機能し得ないものだったからだ。米ロックフェラー財閥はその資産バブルを破裂させて大恐慌を引き起こすことでそうしたシステムを破綻させ、最終的に英国の覇権を崩壊させることに成功したが、そのドーズ案を機能させるうえでバーゼルに米国から“スパイ”として送り込まれたのがダレスだった。
 そうした欠陥部分を攻撃している状況は、現在の米ナチズム系による欧州への攻撃と符合すると言えよう。


イタリア首相が共同声明への同意に拒否し続けた背景に米国が暗躍

 今回の欧州連合(EU)首脳会議では合意を優先させるため、当初は加盟国間で意見が分かれる難民受け入れのルールの大幅な見直しについては先送りし、15年のように大量の難民が流入するのを避けるためにEU域外で難民施設の設置を検討することや、難民対策の基金の新設を決めることで協調を演出しようとした。ドイツのアンゲラ・メルケル首相としてもホルスト・ゼーホーファー内相の造反を避けるには、首脳会議でリーダーシップを発揮して合意に持ち込むことが不可欠だった。
 ところが、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相がダブリン規約を根本的に見直すことに全加盟国が同意しなければ、首脳会議の声明案に同意しないと脅し続けた。その背景にはいうまでもなく、地中海を渡ってイタリアに漂着する難民の責任をすべて押し付けられていることに、国内で不満が高まっていたことを示唆するものだ。
 ただそれを今回の首脳会議で強硬に主張したのは、コンテ首相が地域的な右翼政党である「同盟」とポピュリズム政党である「五つ星運動」の連立内閣を率いているからであり、その背後に米国の親イスラエル右派的なナチズム系やロシアが暗躍していることを改めて指摘する必要がある。


イタリアを人質にとることで欧州に対する米国優位の状況に

 結局、今回のEU首脳会議では土壇場でコンテ首相が要求を取り下げたことで、メルケル首相はなんとか合意にたどり着けることができた。しかし、欧州最大の経済大国で長期政権を築いていたのを背景に、これまでフランスの協力を取り付けながらEU全体で強力な影響力を行使してきたメルケル首相の神通力が大きく低下しているのは否めない。
 実際、今回の首脳会議でも見られたように、米国の親イスラエル右派的なナチズム系の勢力は、先進7カ国(G7)の一角であり、ユーロ圏や英国が離脱していくEUでも3番目の経済大国であるイタリアを押さえてそれを“人質”にとることで、メルケル首相だけでなくEU当局を裏側で操っているハプスブルク家を中心とする貴族勢力の身動きが取れなくなっているのを見れば分かることだ。それは欧州全体の影響力を弱体化させることで、相対的に米国の影響力を強める方向に作用させることになる。
 確かに米国の世界覇権は絶頂期を過ぎて斜陽期に転じており、コスモポリタン的な世界単一政府系からナチズム系に主導権が移るとともに、世界的に駐留している米軍を徐々に撤退させる動きになりつつある。それでも、今回の米中貿易摩擦では中国に対して強硬な要求をすることで攻め立てていることで優位に立っているように、米国の覇権は衰えつつあるとはいえ比較相対的にはまだまだ健在であることがわかる。
 いたずらに“嫌米”感情から米国の覇権が今すぐにでも崩壊するなどといった“馬鹿げた”主張をするのは、非現実的で適切な情勢判断能力を失わせるので厳に慎むべきである。


 週末の明日は最近の情勢を基に、北朝鮮問題について考えてみます。
 先月12日に米朝首脳会談が行われましたが、まだ核放棄の手順や時期に向けた実務者協議が開始されていません。
 そのあたりの背後事情について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。