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信用不安の到来を画策する米権力者層や政策当局

 毎度、当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
 最初に筆者からお知らせがあります。
 このたび、筆者が講師を務める講演会が大阪で行われることになりました。
 11月19日に大阪堂島商品取引所にて、午後1時より講演を行わせていただきます。
 またそれが終わった後も、午後3時より懇親会において、気軽に質問をしていただければお答えさせていただきます。
 無料で入場できるだけでなく、皆様方と触れ合える数少ない機会ですので、大阪及びその周辺にお住まいの方は是非、下記サイトにてお申込みをしていただいたうえでご来場いただければと思います。

http://www.sunward-t.co.jp/seminar/2016/20161119_3/index.html


ポイント
・FRBが利上げを志向している背景には、米権力者層が軍需創出経済体制に移行する前に、過剰な緩和策で水膨れした体質をスリム化する狙いがある。
・米株価は米企業収益を勘案すると割高な状態にあり、本格的に調整局面入りするとそれが長引く可能性がある。
・株価に連動している原油相場は株安になるとOPECの不協和音や米国内在庫の増加傾向が材料視されて下げたが、いかにも意図的に押し下げようとしているのがうかがわれる。



FRB執行部で主導権を握っている勢力の思惑

 前回の当欄で指摘しているように、雇用統計では平均時給の伸びが高まって実際にインフレ圧力が増している。ただし、これまで当欄で指摘してきたように、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを志向しているのは、一部では確かにインフレ圧力の顕在化からスタグフレーションに陥るのを懸念して予防的に動こうとしている向きも見受けられるが、米権力者層の意向を受けた執行部の本当の思惑はそれとは別のところにある。
 現在の連邦公開市場委員会(FOMC)委員のなかでいえば、以前からタカ派的な姿勢を見せていたリッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー、カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ両総裁は、あくまでも自身の信念に基づいて利上げを主張しており、純粋にインフレ圧力が顕在化するのを懸念しているようだ。これに対し、執行部で主導権を握っているスタンレー・フィッシャー副議長をはじめ、セントルイス連銀のジェームズ・ブラード、アトランタ連銀のデニス・ロックハート、ボストン連銀のエリック・ローゼングレン各総裁は権力者層の意向に従う形で、世界覇権国としての米国の世界経済管理体制の枠組みに沿って動いている。

 米権力者層はこれまで、過剰な金融緩和策に依存した経済成長路線を改め、財政政策の比重を高めようとしている。その“究極”の浮揚策が軍需の創出であり、米国の次期政権下で「新冷戦」構造を構築しようとしている。
 ただその前に、あまりに過剰な金融緩和策で“水膨れ”した状態を“スリム化”しようとしており、FRB執行部が利上げを志向している理由はそこにある。水膨れ体質が一段と進むといずれかの時点で確実に崩壊し、資産バブルの崩壊によるバランスシートの毀損から金融機関が致命的な打撃を被ってしまうため、それを避けるためだ。
 またそれとともに、水膨れ体質は先進国以上に中国を中心とする新興国により顕著であり、また先進国では欧州の銀行に特に大きく見られる現象であるため、米国が大きな打撃を被らない程度に新興国や欧州勢に打撃を与えていくことで、米国による覇権体制を再確立していくことも意図されている。こうしたことはこれまで何度も当欄で述べてきたが、特に大事なことなのでここで改めて指摘する。


割高な米株価は調整局面入りすると長期化へ

 だとすれば、最近の米長期金利の上昇も単に12月の利上げが現実味を帯びてきたことや、賃金上昇圧力を市場が敏感に感じ取っているだけでなく、信用不安が高まるのを意識して作為的にもたらされている面があることにも留意する必要がある。
 また最近のリスク回避をもたらしているトランプ・リスクについても、それが高まることが仕組まれていた可能性が高いことも考慮すべきだ。11月8日の大統領選挙を目前に控えた10月28日に米連邦捜査局(FBI)がヒラリー・クリントン前国務長官の私用メール問題の再捜査を発表したのは、同月9日の第2回テレビ討論会の前にドナルド・トランプ候補による11年前の女性蔑視ビデオが報じられたのど同様に、いかにも仕組まれたものと言わざるを得ない。
 最近のFBIの再捜査の発表を契機とするリスク回避の動きは、裏側で操っている米権力者層としては、意図的にリスクが高まりやすい状況にするために「演出」した可能性を考えないわけにいかない。

 株価は大統領選挙の開票・集計が進んでいる段階の9日の東京市場ではゴールドマン・サックスによる策動売りから暴落したが、ニューヨーク市場に入ると一転して強烈に買い進んだことから一気に急騰していった。もとより米株価は米国の企業収益を勘案すると割高な状態にあったが、それにより一段とそれに拍車がかかりかねない。
 米国経済は設備投資が低調な状態が続いたことから生産性が低下していたにもかかわらず、株価は割高な状態にまで買い上げられてきた。日本銀行(日銀や欧州中央銀行(ECB)が大規模な量的緩和策を推進してきたことからキャリー取引により資金が米金融市場に流入しやすかったことや、FRBが利上げを推進する姿勢を見せてきたことで新興国から米国に資金還流が進んでいたこと、さらには株主重視の経営が一般的だったなかで自社株買いで償却されてきたことによるものだ。
 ただそれだけに、株価が本格的に調整局面に移行するとそれが長期にわたり続き、なかなか上昇局面に回帰できない可能性があることを覚悟する必要があるだろう。ただ繰り返し述べるが、それは財政出動政策――軍需創出経済体制に移行する前に米権力者層の意向によってもたらされるものだ。


株価に連動する原油相場に見られる米権力者層の意向

 そうした米権力者層や政策当局の意向は、株価に連動している原油相場の動向にもうかがわれるものだ。
 原油相場は9月28日に石油輸出国機構(OPEC)が生産量を制限することで合意したことで上昇が始まったが、そこでは米権力者層の基盤とでもいうべきサウジアラビアが姿勢を方針転換させたことが大きな役割を果たしたことが重要である。サウジは最近、ムハンマド副皇太子主導で脱石油政策に取り組んでいるように見えるが、本質的に同国は米石油資本と密接な関係にあり、それと“同体”と化しているといって過言ではない。
 米権力者層の思惑通りにトランプ・リスクや米長期金利の上昇からリスク回避が強まると、それとともにサウジの姿勢も根本的に変わり、イランが減産しなければ大幅に増産する姿勢を示して脅している。これはあたかも意図的に原油相場を押し下げようとしている動きであると解釈せざるを得ない。

 さらにいえば、原油相場が指標となるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)市況で50ドル台に乗せるまで上昇していた際には米国内在庫が減っていたのが、その後反落して下げに拍車がかかると一転して増加傾向で推移しており、それがさらに下げ圧力をもたらす要因になっている。
 こうした米国内在庫の増減は米石油メジャーが操作できることに留意する必要がある。それは、WTIを上場しているニューヨーク先物市場の受け渡し場所であるクッシング在庫を自在に操作できるだけでなく、全米規模でも流通経路を押さえていることでそれができるため、米エネルギー省(DOE)が毎週発表している在庫統計についても同様である。

 明日は今週最後になりますが、信用不安の対象として中国の構造問題を採り上げます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。