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グローバル生産体制とWTO体制の崩壊を目論むトランプ政権

ポイント
・トランプ政権の発足当初は親イスラエル左派系がロシアゲート事件等で揺さぶっていたこともあって通商政策面では穏健派が主導権を握ったが、そうした揺さぶりが下火になるとともに右派的なナチズム系が勢力を強めて強硬派にそれが移っていった。
・中国の米国向け輸出の多くは米系多国籍企業によるものなので本質的に米中貿易摩擦は存在しないと主張している向きは、トランプ政権が本来的に目指しているものを理解していない“愚か者”である。
・トランプ政権が中国を相手とする「新冷戦」構造の構築や保護主義的な通商政策を打ち出している背景には、米国の世界覇権が絶頂期を過ぎて斜陽期に転じるとともに、多国籍企業主導によるグローバル生産体制が機能しなくなってきたことがある。
・トランプ政権が中国に対して保護主義的な圧力を強めているのは、軍事的に対峙していくにあたり、そこに生産工場がある多国籍企業やサービス事業を展開しているSNS関連企業が阻害要因になるため、生産拠点を米国内に回帰させることがその目的の一つだ。
・米国側の最大の目的は中国側に「中国製造2025」の撤廃や技術強要の禁止を受け入れさせることであり、本来的に中国のこれまでの経済発展は技術を盗んで「規模の経済」をフル活動させることにあったため、発展を出来なくさせることで国有企業改革を促進させることにある。
・いわば、これまでの中国の経済発展はスターリン政権時代のソ連経済の高成長と基本的には同じなのであり、「新冷戦」に向かうにあたり、WTO体制を崩壊させて中国やその衛星国を排除した新しい通商体制を構築していくことは“自然な流れ”といえる。



強硬派に主導権が移り中国に貿易戦争を仕掛ける

 先週末6日に米政府が中国からの輸入340億ドル相当分に25%の追加関税を発動し、すかさず中国側がそれと同等分の報復措置に動き、さらにその制裁として米国側が今週10日に2,000億ドル相当分に10%の追加関税を課すなど、いよいよ両大国間で貿易戦争に突入する状況になってきた。そこで今回はこの問題を採り上げることにする。
 これまで、ドナルド・トランプ米政権の背後の親イスラエル右派的なナチズム系の勢力の真の目的その他、大事なことについては当欄で指摘してきたが、今後の中長期的な経済動向や国際情勢に大きな影響を及ぼすので、改めて考察していくことにする。

 トランプ米大統領は既に16年の大統領選挙戦中には中国からの輸入に45%の追加関税を課すことを提唱していた。実際に17年1月に大統領に就任すると、安全保障面では早速、中東のイスラム教国からの入国禁止措置を決めるなど強硬な姿勢を打ち出したものの、通商政策面では当初は穏健な姿勢を採った。
 例えば、大統領選挙戦中に中国に対する強硬姿勢を打ち出すにあたり、その理論的支柱となったピーター・ナバロ・カリフォルニア大学教授(当時)を新設の国家通商会議委員長に任命しようとしたものの、政権が発足すると通商製造政策局長に格下げせざるを得なくなった。その結果、中国に対する通商政策面ではゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューシン財務長官が主導権を握った。
 その背景には、一つには中国を攻撃するにあたり、当初は度重なるミサイル発射など北朝鮮に強硬姿勢を採らせたことが指摘できる。ただそれ以上に重要なのが、選挙戦で民主党のヒラリー・クリントン元国務長官を支援した親イスラエル左派的な軍産複合体系が「ロシアゲート事件」を引き起こすなどして、トランプ大統領の本来の主要勢力である親イスラエル右派的なナチズム系が攻撃されていたことがより大きかったといえる。その結果、ウォール街でもデイヴィッド・ロックフェラー直系のシティ・グループがクリントン元長官を支援した関係から、選挙戦でトランプ候補を支援したゴールドマンの系列が“漁夫の利”を得たものだ。
 ところが最近では、職業軍人系のハーバート・マクマスター大統領補佐官や、世界最大の石油メジャーの会長兼最高経営責任者(CEO)だったレックス・ティラーソン国務長官が更迭されるとともに、ロシアゲート事件によるトランプ大統領周辺への追求も下火になり、ゴールドマンの社長兼最高執行責任者(COO)だったゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長(いずれも当時)も辞任した。それとともに通商政策面でも主導権がムニューシン財務長官ら穏健派から強硬派に移り、ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とともにナバロ局長も大統領補佐官に“格上げ”され、それとともに中立派だったウィルバー・ロス商務長官も強硬派にシフトしていった。
 米政府が中国に対して高圧的に貿易戦争に打って出ている背景には、そうしたトランプ政権内部での権力構造の変遷があった結果と言えるわけだ。


「貿易問題は存在しない」と指摘している向きは本質が理解できていない

 中国に貿易戦争を仕掛けるにあたり、トランプ大統領は中国側に年間で2,000億ドルもの対米貿易黒字を減らすように求めていたが、これはいかにも非現実的である。中国側がかなりの無理をしてその分だけ米国からの輸入を増やそうにも、米国では製造業が空洞化しており、それだけの供給能力がないからだ。あくまでもそれを要求したのは真の目的を中国側に呑ませるための手段に過ぎない。
 その目的とは「中国製造2025」の撤廃と技術強要の禁止であることはこれまで、当欄で述べてきた通りだが、短期的には多国籍企業に圧力をかけて生産工場を米国内に回帰させることを標榜することにあることはしっかり押さえる必要がある。今回、中国側が報復措置を打ち出すにあたり、商務省の報道官が「米国側の340億ドルもの制裁関税のうち200億ドル分は外資による米国向け輸出で占められており、そのうち大部分が米系企業によるものなので、不利益を被るのは米国側だ」と主張している。
 実際、中国からの対米輸出のかなりの部分が米系多国籍企業なので、貿易問題は本来的に存在しないと主張している識者が見受けられる。しかし、これはあくまでも経済現象の表面的な部分だけを見ている議論に過ぎず、トランプ政権が本来的に目指しているものが理解できていないものといわざるを得ない。


グローバル生産体制が機能しなくなり新冷戦体制を構築へ

 これまで当欄で何度も指摘しているように、米国の世界覇権は08年秋のリーマンショックによる巨大な金融危機とそれによる経済活動の激しい落ち込みがもたらされたことで、その絶頂期を過ぎて斜陽期に転じるとともに、絶頂期に確立されたグローバル生産体制がうまく機能しなくなってしまった。生産工場が集積している中国沿海部で人件費が高騰していることや、最終消費地である米国でも住宅資産バブルの崩壊で資産効果が剥落し、資産・所得格差の拡大から中産階級が没落している状態が顕在化したことで慢性的に購買力が低下したからだ。
 すなわち、米国を代表する多国籍企業が思うように高収益を上げられず、先行き需要が盛り上がるとの見通しが立たず、慢性的に収益期待が上向かなくなってしまったわけである。そのため、中央銀行が量的緩和策を強化して資金供給を“ジャブジャブ”に拡大しても設備投資が思うように伸びなかったことから、米国経済の生産性≒潜在成長率が低下してしまった。
 そこでトランプ政権で主導権を握っている親イスラエル右派的なナチズム系の勢力は、世界中の米軍を徐々に、それでいて次々に撤退させることで財政負担を軽減させながら、浮いた財政資金で巨大なケインズ政策を打ち出すことになった。その第一弾が昨年末に大型税制改革を実現したことで法人税を大幅に引き下げ、また企業が海外に滞留させている資金を国内に還流させるインセンティブを与えたのであり、それにより実際に恩恵を受けている企業が従業員の賃金を引き上げる事例が増えている。
 また大規模な公共事業を打ち出す意向も見せているが、なんといっても最も大きな需要創出効果が見込めるのが中国を対象に「新冷戦」構造を構築することであり、それも属国群を次々に独立させて国防体制を強化させたうえで、それらの国々と提携していくことで中国と対峙していこうとしている。それにより米国が財政負担を負わずに、それらの国々に兵器やその他装備品の輸出を伸ばすことで、貿易赤字を減らしながら国内の生産活動を活発化させようとしている。こうしたことはこれまで当欄で述べてきた通りだ。


貿易戦争の目的の一つはグローバル生産体制を瓦解させること

 ここで重要なことは、トランプ政権がこうした米国第一主義(アメリカ・ファースト)による国内の生産活動の活発化や新冷戦構造による中国敵視政策を推進していくにあたり、中国に生産拠点を築いている多国籍企業が大きな阻害要因になることだ。さらにいえば、フェイスブックに代表されるような、国境の壁が完全に取り払われて瞬時に世界中の人たちと自由に手軽に情報交信ができるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)関連企業も、大規模な軍需を創出していくうえで阻害する要素になり得るといえる。実際、米国の多国籍企業の多くは、米国の世界覇権の絶頂期に「世界皇帝」として君臨したロックフェラー財閥の総帥デイヴィッド・ロックフェラーの系列が多く、フェイスブックの共同創業者であるマーク・ザッカーバーグ会長兼CEOはその孫であるとされている。
 さらにいえば、中国にはドイツはじめ欧州の主要企業もかなり入り込んでいるが、そのオーナーであるロスチャイルド財閥も含めて、その性格はいずれも社会主義・共産主義思想に通じる親イスラエル左派的でコスモポリタン的な世界単一政府系である。
 今回、そうした系列と抜本的に対立する勢力である国家主義的・民族主義的志向が強い親イスラエル右派的なナチズム系が主導権を握っているトランプ政権が中国に貿易戦争を仕掛けた大きな目的の一つが、中国沿海部に生産拠点がある多国籍企業に打撃を与えてグローバル生産体制の瓦解を助長することであり、合わせてSNS関連企業による中国はじめ敵側の陣営にサービス展開するのを制限させることにあるわけだ。先日、中興通訊(ZTE)がイランや北朝鮮に禁輸措置品を納入していたことで米当局から摘発されたのは、こうしたSNS関連企業には相当な“脅し”になったはずである。
 こうしたことを考えれば、中国の米国向け輸出の大部分が米系企業が生産したものなので、本来的に貿易摩擦は存在しないなどと“馬鹿げた”ことを主張している向きは、米国の権力者層の変遷過程や、それに基づいたトランプ政権の本質、それも特に中国に対する政策の真の目的をよく理解していない“愚か者”と言わざるを得ないのである。


これまでの中国の経済発展は本質的にソ連の高成長と変わらない

 とはいえ、米国が貿易戦争を仕掛けている最大の目的が、中国側に「中国製造2025」の撤廃や技術強要の禁止を受け入れさせることで、国有企業改革を促進させることにあるのはこれまで、当欄でたびたび指摘してきた通りだ。
 中国はこれまで、外資に技術強要していくことでそれを“盗み取り”し、共産党一党独裁体制により後押しされた国有大企業に巨額な補助金を与えて、そうして盗み取った技術をフル活用していく「規模の経済」により経済発展を邁進してきた。だからこそ、本当の意味で市場経済による“規律(ディシプリン)”が機能しておらず、巨大な“無駄”の発生を伴う非効率極まりない経済構造でもそれなりに機能してきたのである。いわば、これまでの中国経済の発展は、ヨシフ・スターリン政権時代のソ連経済が高成長を続けたのに比べるとより資本主義的な要素を取り入れたように見えながら、またそれだけ近代的になっているように見えるものの、本質的には変わらないものといえるだろう。
 中国としてはもとより米国のように創造性を発揮して新産業を興したり、日本のように“職人気質”を働かせて技術革新に磨きをかけるといった能力に著しく欠けるなかで、米国側の要求を呑まざるを得なくなって技術強要が禁止されてしまえば経済発展が出来なくなってしまう。それにより国有企業改革を推進せざるを得ない状態にさせていくことで、米系資本が中国そのものを“蚕食”していくことを目論んでいるのは、これまで当欄で指摘してきたことだ。


ソ連を追放したGATT体制創設時と現在とでは符合する

 かつて、第二次世界大戦が終わり戦後の国際貿易体制を構築していくにあたり、米国は「関税と貿易に関する一般協定(GATT=ガット)体制」により西側の自由主義・資本主義陣営だけで自由貿易体制を確立していき、そこに社会主義的なソ連やその衛星国が加盟することを許さなかった。自由主義的で資本主義的な経済構造ではあくまでも消費者のニーズに沿った経営理念の下で民間企業の間での競争がその経済活動の前提になっており、そこに国家権力によって後押しされた国有大企業が参入していくのは「不公平(アンフェア)」であり、本来の市場経済的なシステムや理念を歪めるというのがその理由だった。
 それはまさに、現在のトランプ政権が通商問題で中国を非難している論理と同じものである。実際、当時はロックフェラー財閥の中のナチズム系の最大の大物だったジョン・フォスター・ダレス国務長官(当時)がホワイトハウスで主導権を握っていた。現在のトランプ政権ではその後継者であるヘンリー・キッシンジャー元国務長官が大きな影響力を行使しており、当時と符合している。トランプ政権が議会とともに中国資本による産業上、重要な技術を有する米国企業の買収を阻止したり、中国に対して高度に優秀で重要なハイテク技術が組み込まれたものの輸出を制限する動きが強まりだしているのは、まさにソ連を相手とした旧冷戦時代の「対共産圏輸出統制委員会(ココム)規制」の復活をほうふつとさせるものだ。
 いうまでもなく、米国の世界覇権の絶頂期においてグローバル生産体制を機能させることを目的に設立された世界貿易機関(WTO)体制が崩壊していくのは“自然な流れ”とでもいうべきものだ。さしあたり、それを議論するのは時期尚早と見てロス商務長官がそれを否定したが、トランプ政権内部からWTOからの離脱を検討する発言が出てきたのも“自然な流れ”である。


 週末の明日もこの続きを掲載します。
 2日目となる明日は、主にトランプ政権による保護主義的な政策が長期的に経済情勢にどのような影響をもたらすかを考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。