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貿易戦争など米国に攻撃されて受け身に立つ中国経済

ポイント
・中国経済は固定資産投資が抑制されており、絶望的な所得格差の拡大から個人消費も最近では息切れしてきたなかで、輸出も激減すれば失速してバブル崩壊が進む危険性が高まる。
・米国はエネルギー供給網を遮断したり、FRBが積極的に引き締め政策を推進することで資金流出を加速させることで、その気になれば中国を潰すことができる。
・中国の国有企業の多くは巨大な粉飾を続けてきたことで簿外で巨額な対外債務を抱えており、人民銀行が元買い介入を続けたのは実質返済負担が激増するのを避けるためだった。
・足元で元安圧力が強まっているなかで人民銀行が介入せず放置しているのは、中国危機の際に比べるとそれが弱いなかで、市場に足元を見られないようにするためだ。



輸出が打撃を受ければ中国経済に失速の危機

 米中二大国間の貿易戦争は長引けば長引くほど中国としては不利なので、同国の当局者は米連邦準備理事会(FRB)がイールドカーブのフラット(平坦)化が進むことでひとまず政策転換せざるを得なくなることを、“神仏に祈る思い”で待ち望んでいるだろう。単純に考えても、貿易戦争が激化して輸入品に関税の“発動合戦”が繰り広げられれば輸入が多い赤字国が有利だが、両大国の経済構造や景気循環的な側面がそうした傾向を助長しているからだ。
 米国経済は足元で景気が好調に推移しているだけでなく、中国からの輸入が滞ってもそのかなりの部分は他の地域からの輸入で代替が可能である。むしろ、ドナルド・トランプ政権で主導権を握っている親イスラエル右派的なナチズム系は、親イスラエル左派系のコスモポリタン的な多国籍企業に圧力をかけて生産工場を米国内に回帰させようとしている。
 それに対し、中国経済はもはや非効率で間違いなく不良債権を累増させることになる固定資産投資を鈍化させているなかで、都市戸籍の保有者と農村戸籍のそれとでは絶望的に所得格差が拡大しているなかでは個人消費がマクロ経済を牽引していくことにはなり得ず、実際に最近ではそれが息切れしてきている。そうしたところに輸出が激減すれば中国経済は失速する危険性が高まってしまい、それによりバブル崩壊に拍車がかかる恐れが高まることになる。
 実際、中国関係の市場関係者の間では、中国は近くリーマン・ショックと同等かそれを上回るほどの巨大な金融危機に陥る危険性を指摘する向きが増えつつあり、国務院傘下のシンクタンクからもそうしたことを警告する報告書が出ているほどだ。


米国はその気になれば中国を潰すことが出来る

 これまで当欄で指摘してきたが、米国はその世界覇権が斜陽期に転じたとはいえまだまだその勢力は巨大なものがあり、遠い将来にその地位を継承するとしても、少なくとも現時点ではその中国をその気になれば潰すことが出来る状況にあるのはしっかり押さえておく必要がある。
 かつて、米権力者層はソ連を巨大な軍事国家に仕立てて“ヤラセ”の冷戦構造を演出したが、そうした経済成長路線が限界に突き当たったと見るや、サウジアラビアに指示して増産させることで原油価格を極端な安値に押し下げることによりソ連を崩壊させたものだ。現在でも米中両大国の軍事力にはまだまだ“雲泥の差”があり、米軍がサウジはじめ中東の親米的な産油国も動員させながらエネルギー供給網を遮断すれば、中国経済は“一夜”にして“あっという間”に崩壊してしまう。そうした“荒療治”をしなくても、FRBが積極的に金融引き締め政策を推進すれば資金流出が促進されてバブル崩壊が促進され、やはり中国経済は崩壊する危険性が高まることになる。
 米国がリーマン・ショックによる巨大な金融危機の後遺症で苦しんでいた頃、中国経済が4兆元の景気対策を打ち出したことでいち早く離陸して世界経済を支えた状況を見て、一部の“中国びいき”の評論家が近い時期に世界覇権が中国に移るなどと“馬鹿げた”ことを主張していたが、非常識も甚だしいと言わざるを得ない。“裏事情通”の間では、米国がその気になれば中国を崩壊させることが出来るのは“常識”になっている(ただし、トランプ政権で主導権を握っている権力者層は「豚(中国)は太らせてから喰え」戦略を推進しているので、筆者は足元のコンドラチェフ・サイクルの上昇局面が天井を打つまではそうしたことはしないと見ているが)。


簿外で天文学的な対外債務を抱えている国有企業

 これまで当欄で何度も指摘してきているように、中国では多くの国有企業が高度成長期の頃から本当は慢性的な赤字体質だったのであり、それを海外でドル資金を調達して「偽装輸出」で国内に持ち込み、それを人民元に換えて売り上げに回すことで巨大な“粉飾”を続けて黒字決算を装ってきたことで、簿外で天文学的な対外債務を抱えている。
 人民元相場が上がり続けていた際には放っておいても実質的な返済負担が軽減していたので何度でもそれを続けることが出来たが、それにより慢性的にそうしたことを繰り広げることが慣習化したなかで、反対に相場が下がっていくと“雪だるま式”に実質負担が激増していくことになる。15年7月の人民元切り下げを機とする第一次中国危機や、翌16年初頭にFRBが積極的に利上げ推進路線を表明したことで第二次中国危機がもたらされた際に、強力な人民元売り圧力に対抗して人民銀行が必死に元買い介入を続けたのはこのためだ。
 人民元を基軸通貨である米ドルに連動させている背景には、多くの中国の人たちが政府が発行している人民元という通貨を“心底”では信用していないことがその主因ではあるが、より差し迫った実務的な要因がこうしたことにあるわけだ。元売り圧力が強まっていた際に、そうした中国経済の“裏側”の実情を理解していない向きからは、元安が進めば輸出を伸ばす効果が見込めることもあり、中国政府は大国意識の面子を捨てて介入を停止し、放置すべきだといった指摘が見られたが、“馬鹿げた”主張以外の何物でもなかったわけだ。


元安の放置は市場に足元を見られないため

 現在でも中国はFRBの利上げ継続姿勢から資金流出圧力に見舞われて元安圧力が強まっているが、人民銀行は当時とは異なり特に元買い介入をすることなく、元安が進むのを放置している。その理由として、多くの報道機関は輸出後押しを意図したものであり、米国が貿易戦争を仕掛けていることに対する“当てつけ”といった認識を示しているが、的外れも甚だしい指摘だと言わざるを得ないものだ。
 15年後半から16年前半にかけての際には人民銀行が連日、必死に元買い介入を続けていたなかで、公式には3兆ドル以上もあるとされている中国の外貨準備が、実際には1兆ドルほどしかないといったことがまことしやかにささやかれてしまい、市場に足元を見られてよけいに投機筋による売り攻撃が助長されたものだ。現在、人民銀行が意図的に介入をしないで元安が進むのを放置しているのは、再び外貨準備がそれほどないことがささやかれるなどして市場に足元を見られるのを避けるためだ。
 幸いなことに、当時に比べると現在の元安圧力はそれほど強くないので、この程度の元安圧力なら凌ぐことが出来ると当局が見込んでいるのだろう。いうまでもなく、当時と同じように極端に元安圧力が強まることがないとは言い切れないため、その限りではこうした当局の姿勢は“危険な賭け”のように思えてくる。とはいえ、米国で主導権を握っている勢力は中国を“殺す”ことは考えていないはずなので、それ自体は賢明な判断なのだろう。


 明日もこの続きを掲載します。
 明日は中国側が貿易摩擦問題に対処するにあたり、習近平国家主席の存在感が極端に薄くなっていますが、その実情を探るうえで、その背後勢力に焦点を当てて考察します。
 週末の明後日には、NATO首脳会議でトランプ米大統領が特にドイツに対して強硬な姿勢を示したことで物議を醸しましたが、その件について簡単に考えることにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。