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日ロ首脳会談の意義と独自外交路線を強めつつある安倍政権(1)

これまでと異なる今回の踏み込んだ日ロ首脳会談

ポイント
・ロシアの国営電力大手に政府系企業や財界の有力商社が出資することになったのは、それ自体が画期的なだけでなく、日本の核開発に向けた動きが隠されている可能性がある。
・今回、日ロ間で交渉の進展が具体化する兆しが見えるようになった背景には、日本の“宗主国”である米国の対ロシア政策の変化がある。


安倍長期政権が樹立されて解決に向けて曙光が見える

 今月2日にウラジオストクで安倍晋三首相とウラジーミル・プーチン大統領による日ロ首脳会談が行われた。この会談で正式にプーチン大統領が12月に来日することが発表され、15日に安倍首相の地元である山口県長門市で首脳会談を行い、北方領土の返還問題を含む両国間の平和条約の締結に向けて大きく前進させることが謳われた。

 これまで、日本側は第二次世界大戦での敗戦で失った北方領土の返還を求めてきたのに対し、旧ソ連時代以来、米国による経済包囲網により苦しんでいた旧ソ連・ロシア側が経済協力を引き出そうとして虚々実々の駆け引きが演じられてきた。
 特に首脳会談で事態が前に進みそうになった局面としては、まずは98年4月18日に橋本龍太郎首相とボリス・エリツィン大統領が静岡県川奈で会談して「川奈提案」が示されたことが挙げられる。その時には択捉島とクルップ島の間に国境線を引き、当面は北方4島の施政権をロシア側に委ねることが謳われたことがあった。

 その後、01年3月25日には森喜朗首相とプーチン大統領がイルクーツクで会談した。そこでは、森首相が「2島先行返還論」を提起して歯舞群島と色丹島の返還交渉を優先して行い、残る国後島と択捉島は継続協議にすることを提案した。
 ただ、その後米国で「9.11同時多発テロ事件」が起こるとジョージ・W・ブッシュ政権が「対テロ戦争」へと突き進んでいったなかで、小泉純一郎政権は長期政権を樹立したものの対米追従姿勢に傾倒していった。そうしたなかで、小泉首相は北朝鮮の金正日総書記とは首脳会談を行ったものの、対ロシア外交は後回しにされてしまった。
 さらにその後、日本では民主党政権時代も含めて短命政権が続いたことでロシア側とじっくり交渉することができず、ようやく現在の安倍長期政権が樹立されたことでこの問題の解決に向けて曙光が見えてきたところだ。


ロシアの中核的な国営大手に日本の政財界が出資

 今回、安倍首相とプーチン大統領との会談がこれまでの日ロ両国のそれと比べると、より合意の締結に向けて具体性を帯びているのは、“上辺”だけの経済協力姿勢ではなく、国家間の緊密な関係の構築に向けた案件が俎上に上っているからだ。といっても、具体的に詳細な案件が明らかになっているわけではなく、おそらくまだ決まっていないと思われる。安倍首相の側近としてこのたび、ロシア経済分野協力担当相を兼務することになった世耕弘成経済産業相を中心とする日本の政財官界とロシア側との間でこれから決められていくのだろう。
 ただ、今回の日ロ間の交渉で決定的なのは、政府系の国際協力銀行(JBIC)と財界を代表して三井物産がロシア国内最大の発電会社である国営ルスギドロに出資することになったことだ。

 ロシアの基幹産業の国営大手に外資が出資することになったこと自体、画期的なことだが、問題はそれだけにとどまらない。この国営会社は表向き、主力が水力発電ということになっているが、発電事業を扱っているだけに原子力発電の分野に関与していないはずがないからだ。世界最大の核兵器の保有国で密かに原発事業をも扱っている国営会社に出資するということがどのような意味を有するのか、いちいち説明する必要はないだろう。
 しかも今回、ロシア側は人道支援や環境面での清浄化を理由に、東京電力福島原子力発電所の事故に伴う放射能の除染作業まで協力することが水面下で話し合われているというが、これは核兵器開発の技術協力に転じていく可能性を秘めるものだ。
 そうしたロシアによる日本の核兵器開発の流れを、米国については後述するが、少なくとも中国は北朝鮮が活発にミサイルの発射や核実験を強行して核保有国になろうとしているなかで、極東での“パワー・バランス”の観点から日本の動きを止められなくなっていることがうかがわれる。

 さらにそれだけでなく、日本側では経産省がロシア最大の石油会社であるロスネフチに出資することが検討されていることも報じられている。石油産業といえば、まさに金融業以上に米国の世界覇権の基盤の産業とでもいうべきものであり、そこに君臨しているロックフェラー財閥の中核産業とでもいうべきものだ。
 これまで、日本でもロッキード事件で“嵌められた”田中角栄元首相はじめ、そうした米国を中心とするエネルギー面での世界的な秩序に抵抗しようとすると、決まって謀略めいた事件を引き起こされてことごとく失脚していったものだ。
 にもかかわらず今回、それが実現するかどうか現時点では不透明な状況だが、米国の“敵国”とされたはずのロシア最大の国営石油会社に出資するというのは非常に大きな問題であると考えないわけにいかない。米国の覇権が衰えているのか、米国の世界戦略が変化しつつあるのか、忠実な「属国」だった日本が米国から離反しようとしているのか・・・・何らかの構造的な大きな変化が起きつつあるかもしれないからだ。


日ロ間に特殊な勢力が・・・・

 そもそも今回、安倍政権下でロシアとの交渉が劇的に進む可能性が出てきているのには、いうまでもなくそれなりの理由があるはずだ。
 安倍首相がプーチン大統領と首脳会談を行うのは今回で実に14回目になるのも、両首脳の個人的な関係があるからだが、それは首相の背後に控えている極東地域に根付いている特殊な宗教勢力の存在を抜きに語れないはずだ。プーチン大統領が訪日して歴史的な首脳会談を行う場所が安倍首相の地元で決まったのも、その背後にこうした宗教勢力の影響力の強さをうかがわせるものだ。
 両首脳は本来、こうした勢力が背後に控えていたことから個人的には親密な関係にあったのであり、ウクライナ問題でロシアが米国や欧州から厳しい金融制裁を科された際には、安倍首相はその対立を仲介する意欲を見せたものだ。14年2月に開催されたソチ・オリンピックで米欧側が政府側の代表の出席を見合わせた際にも、先進7カ国(C7)では唯一、日本だけがそれを派遣したものだ。

 ただいうまでもなく、ここにきて両国間で交渉の進展が具体化する兆しが見えるようになったのは、日本の“宗主国”である米国の対ロシア政策の変化があることはしっかり押さえる必要がある。次回ではその件について述べることにしたい。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
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