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注目される日銀の超緩和策の修正措置

ポイント
・今回の日銀の超緩和策の修正見通しによる長期金利の急上昇は20日の暴露報道がきっかけだが、日銀がこれに抗議していないあたり、信憑性が高いと判断できるものだった。
・今回、日銀が修正措置に動くことになったのは、金融機関への配慮といったものは今に始まったことではなく、トランプ米大統領が中国やEUを名指しで自国通貨安政策を推進していると批判したことがありそうだ。
・日銀はこれまで、イールドカーブ・コントロールにより長期金利の誘導目標水準が0%だったなかで上下0.1%をその許容範囲としてきたが、これは正式な決定ではないため、今回の修正措置を決める際にその範囲を拡大させることは本来なら望ましいものではない。
・かといって誘導目標水準の引き上げはあからさまな利上げの決定になるためにリフレ派が猛反対することが予想され、また展望リポートで物価見通しの下方修正が確実視されるだけに“辻褄が合わない”といえる。
・そうした意味では、誘導目標水準を据え置いたうえで、その対象とする国債を現行の10年債からより償還期限の短い中期債に代えることで、実質的に10年債利回り=長期金利の水準の引き上げを目指すことが望ましかったのではないか。



日銀は本当に緩和策の修正を決めるつもりか

 先週の市場で特筆すべき動きはやはり日本の長期金利が急上昇したことだろう。先々週末20日にロイターと時事通信が、今週30~31日に開催される金融政策決定会合で日本銀行(日銀)が金融機関に配慮して超低金利政策の一部の修正を決めると報道したことがきっかけになったものだ。海外では日銀が近く修正に動くとの見方が根強かったのに対し、国内ではそうした観測がほぼ皆無のような状態だったため、その報道が出たことで市場ではやや狼狽的な売り圧力に見舞われたものだ。
 これまで日銀に関する暴露報道が出ると、それが不正確なものであれば必ずといってよいほど日銀から抗議が来ていたものだ。それが今回は来ていないあたりこの報道は信憑性が高いものであったということができるだろう。


この時期の日銀の政策変更の背後に米国の存在が・・・・

 これまで、日銀は「金融機関のために金融政策を運営しているわけではない」として、三菱東京UFJホールディングスをはじめとする銀行勢の反対をはね付けて、現行の超大規模な金融緩和策を続けてきた。実際、米国で貿易赤字の削減を“錦の御旗”としている現在のドナルド・トランプ政権が成立したことで、ドル高をもたらしている各国・地域の中央銀行による金融緩和策が批判されるようになってからも、世界的に信用収縮が強まるのを避けるためにこうした日銀の政策は容認されていたはずだった。
 ところがここにきてその修正に動くことになったのは、一つには金融機関が打撃を被っている状態が長期化していることがあるのはいうまでもないことだ。ただ、この時期にそうした動きが出てきたのはやはり米国との関係を考えないわけにいかない。
 先々週19、20日に連日にわたりトランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的な政策姿勢やドル高を牽制した際に、貿易摩擦の対象国・地域である中国や欧州連合(EU)の金融・通貨政策を批判した。当面、米国は日本と通商交渉をしているわけではないなかで、そこに日銀の政策が糾弾されないように、ジェローム・パウエルFRB議長が主要国・地域の中央銀行の金融政策を実質的に統括・管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)を介して黒田東彦総裁に忠告し、雨宮正佳副総裁が各審議委員に対して根回しに動いていたのだろう。


許容範囲の拡大は日銀の正式な金融政策の変更ではない

 具体的な施策については、事前に紙上では株式に対する上場投資信託(ETF)での購入配分の見直しといった報道が出ているが、これは主に株価下支え策であって金融政策とは直接関係がない。
 現在、日銀はイールドカーブ・コントロールにより10年国債を対象にその利回りを0%に誘導することを目標とした金融政策を推進しており、利上げを決めるならその誘導目標水準を引き上げることになる。現行の政策を決めてからの経緯から、日銀は上下0.1%をその許容範囲としていることが市場では一般的な認識になっている。実際、先週も23日には長期金利が0.09%に上がった時点で日銀は0.11%での「指し値オペ」の注文を、また週末27日には0.1%に上がった段階で0.105%での2回目の注文を出しているあたり、やはり0.1%付近を上限とする上下0.1%を許容範囲としているのだろう。
 ただし、この範囲を拡大することでその上限を引き上げるというシグナルを市場に送ることにより実質的に超緩和策の修正としてもかまわないが、この政策はあくまでも日銀が“暗黙の了解”で市場に浸透させているものに過ぎない。日銀としては正式な修正を決めることにはならないため、出来ることなら何らかの政策修正をする方が望ましいのではないか。


イールドカーブ・コントロールの引き上げは辻褄が合わない

 かといって、最もオーソドックスな超緩和策の修正はイールドカーブ・コントロールの誘導目標水準を引き上げることだが、これは紛れもなく利上げを正式に決めることになるため、この手法も望ましいものではない。
 現在、日銀では若田部昌澄副総裁や原田泰審議委員、それにとりわけ以前、さらなる緩和策の強化を求めて反対票を投じた経緯がある片岡剛士審議委員といったリフレ派が猛反対するのが目に見えているからだ。
 しかも、今回の決定会合では「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しが下方修正されることが確実視されているなかで、あからさまな利上げを決めることは“辻褄が合わない”といえる。


誘導対象指定国債の交代による長期金利の上昇の演出手法

 そうした意味では、筆者は長期金利の誘導目標の対象とする国債を、長期債から償還期限がより短いものに代えることが望ましかったと思っている。
 現在、その対象とする国債は10年債だが、0%の誘導目標水準をそのまま据え置いたうえで、これを例えば5年債や2年債といった中期債に代えるわけだ。そうすれば、逆イールドの状態にならない限り期間の長い国債の利回りが高くなるはずなので、10年債利回りを指標とする長期金利は現在の水準より上昇することになる。
 この手法であれば日銀としては正式に政策変更をすることになり、それでいて明確に利上げを決めることにならないので、筆者は適切な政策手段であると考えている。

 30~31日に開催された金融政策決定会合では、金融緩和政策における運用を柔軟化して、極めて低い長期金利の水準を維持するとしながらも、その長期化にも配慮して長期金利が一時的に上振れすることも容認することになった。曖昧な政策決定ではあるが、いろいろと制約要因があるなかで、やむを得ぬ措置だったのだろう。機会があれば、いずれ近いうちに詳細については検討することにした。


 明日からの2日間では、先週に悲観的な見方が強まっていた米EU首脳会談が一転して妥結との結果になりましたが、その背後事情や意義、またそこからさらに話を発展させてEUの権力機構の特質についても考えていきます。
 週末には中国で最近、習近平国家主席の影が薄くなり、李克強首相主導で景気刺激重視の政策が採られていますが、その背後事情について考察します。
 今週もよろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。