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今回の南北首脳会談の本質と背後事情を考察する

ポイント
・今回、文在寅大統領が訪朝して南北首脳会談が開催されて打ち出された平壌宣言ではそれほど実効性のない項目が並んでいるが、それでもトランプ大統領がこれを歓迎するなど米国側が高評価を与えている。
・非核化を巡っては米国側が完全に非核化を達成してから経済制裁の解除や支援の実施に踏み切ろうとしているのに対し、北朝鮮側は先行して朝鮮戦争の終戦宣言を先行させるなど小出しに核放棄を実現することを主張するなど、両者の主張はまったくかみ合わない。
・ただし、これらの表面的な動きは猿芝居なのであり、本当は金正恩委員長は米国のトランプ政権の背後で主導権を握っているナチズム系の権力者層の指示通りに動いている。
・ナチズム系は表面的に非核化を達成することで在韓米軍を撤退させ、資源開発その他、北朝鮮に経済進出しようとしているが、拉致問題でつまずいて日本側から巨額の資金拠出をさせるメドが立たなくなったため、貿易摩擦を強めて中国を攻撃する路線に回帰した。
・そこで北朝鮮に対しては非核化を実現した後で制裁の解除や支援に動く姿勢を崩さないなど表面的に続けているが、戦争に至ることを避けるために時折り柔軟な姿勢を見せてガス抜きをする必要があり、そこで南北融和を唱えている文在寅政権が利用された。
・ナチズム系の米国が文大統領に訪朝する条件として大勢の財閥の幹部を同行させたが、財閥系の有力企業の多くは株式の過半数を米系金融資本に握られているので、これらの同行者は米国の“名代”としての性格を帯びていたと言える。



北朝鮮側が軟化せずも米国側は歓迎の意向を示す

 今週の最後として、先週18日から20日にかけての韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪朝や19日に行われた南北首脳会談、及びそれによる「9月平壌(ピョンヤン)宣言」について、ポイントとなる点について簡単に触れておく。
 今回の文在寅大統領の北朝鮮訪問や首脳会談では、米国と北朝鮮との間で朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争の終戦宣言に向けた動きが停滞しているなかで、南北融和を目指す大統領が北朝鮮側から核施設の申告や核弾頭の廃棄に向けた方針を明示することを得られるかどうかが焦点だった。しかし結論から先に言えば、北朝鮮側はまたしても米国側が求める前提条件なしでの非核化を否定し、自らの体制保証や先行して経済支援を行うように求める姿勢を崩さなかった。
 平壌宣言では東倉里(トンチャンリ)のミサイル試験場と発射台を永久に廃棄することや、米国が相応の措置を採れば寧辺(ニョンビョン)の核施設を廃棄する用意があるとされた。しかし、既に北朝鮮は移動式での発射台を手にしており、東倉里の固定式のものについては不要になっている。また寧辺の核施設についても既にかなり老朽化していると見られており、おそらく北朝鮮国内にはそれ以外にも複数の核施設があるはずだ。なにより、既に保有している核兵器についてはまったく言及されていない。
 文在寅大統領は今回の共同宣言に盛り込まなかった非公開の内容があり、それを24日の米韓首脳会談でドナルド・トランプ大統領に報告すると述べたが、少なくとも表面的には北朝鮮側がこれまでの姿勢をいっさい軟化させなかったのは明らかである。それでも会談後にトランプ大統領はツイッターでこれを歓迎する姿勢を見せており、またマイク・ポンペオ国務長官も李容浩(リ・ヨンホ)外相を米国に招待して会談を再開させたい意向を示した。


両者の主張はまったくかみ合わないが・・・・

 以上が今回の南北首脳会談の概要だが、ここでまず指摘すべきことは、米国側が“ガリガリ”の共和党系新保守主義(ネオコン)派であるジョン・ボルトン大統領補佐官の戦略に沿って、北朝鮮に対して原則的に「完全かつ検証可能で不可逆的な核放棄(CVID)」を求めていることだ。非核化の時期については20年に米国で大統領選挙が行われるのを意識して21年1月までとされ、寧辺の核施設についても国際原子力機関(IAEA)の査察官の立ち合いの下で永久廃棄することを求めている。
 これに対し、北朝鮮側はあくまでも朝鮮戦争の終戦宣言を先行させて米朝間の平和条約の締結にも道を付けたうえで、核兵器や実験場の廃棄は段階的に行い――すなわち“小出し”にしながら、その都度、経済支援を受けることを要求している。
 このように両者の主張はまったくかみ合わないが、それでもどうしてトランプ大統領やポンペオ国務長官がこれを歓迎する姿勢を示しているのかを考える必要がある。


表面的な猿芝居と北朝鮮問題の本質

 そもそも、これまで述べてきたことはあくまでも表面的なものに過ぎず、結論から先に言えば、これまでの米朝間のやり取りは“猿芝居”に過ぎない。
 これまで当欄で指摘してきたように北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は“影武者”であり、米国側のトランプ政権の背後のナチズム系の権力者層の指示通りに動いている。本当はナチズム系の権力者層は米国の世界覇権を後退させていくにあたり、まずは在韓米軍を撤退させようとしており、そのためには朝鮮半島の非核化と朝鮮戦争の終結、及び米朝間で平和条約を締結する必要がある(ただし、本当は体制を維持したままで非核化が達成されることはあり得ないのであり、中国はこれまで通り北朝鮮の核兵器の脅威にさらされ続ける一方で、それが明らかになることで日本の世論が核保有への容認に傾いていくことが意図されている)。
 平和条約の締結後には米系資本が北朝鮮に経済進出していくことが計画されているが、そこでは「カジノ王」シェルドン・アデルソン氏の意向を受けてマカオ以上のカジノ国家にするとともに、豊富な地下資源の開発が期待されている。なかでも世界最大の埋蔵量を誇るとされているウラン鉱石の利権を握ることがその最大の“目玉”であり、トランプ政権やその背後の権力者層はその利権を中国を排除させたうえで、“お仲間”であるロシアのウラジーミル・プーチン大統領や日本の安倍晋三首相にも分け与えようとしている。


北朝鮮問題の棚上げのために表向きCVID路線が継続される

 日本が利権の分け前を得られるのは安倍首相が“お仲間”であるだけでなく、戦後賠償金やその後の復興支援の目的で巨額の資金拠出が求められているからであり、当然のことながら安倍政権の有力な支持基盤である産業界からは技術支援も期待されている。拉致問題はそれをうまく“人質”として扱うことで、日本側がその“身代金”として多くの資金を出す手段として利用されようとしている。
 おそらく、安倍首相は巨額の資金拠出に応じても、利権の分け前にあずかることでそれを上回るメリットが得られると読んでいるのだろう――すなわち、北朝鮮に支払う資金は「借款」としての意味合いが強く、また安倍首相や経済産業官僚、財界もそのように考えているということだ。
 ところが、拉致被害者の多くは北朝鮮の国家機密事項を知っており、とりわけ被害者の中でもその象徴的な女性は最も重要な機密事項である金(キム)王朝に関することに触れているため、帰国させるわけにいかない事情が出てきてしまった。そこで日本から巨額の資金拠出をさせるメドが立たなくなってしまったため、トランプ政権はひとまず北朝鮮問題を棚上げにして、貿易問題を強めることで中国を攻撃する路線に回帰したことはこれまで、当欄で述べてきたことだ。
 そこで北朝鮮に対しては表面的に“ギクシャク”した関係を演出し続ける必要が出てきたのであり、表向きボルトン大統領補佐官が唱えている路線をそのまま続けることになったのである。これが裏側の真相である。


南北融和を唱えている韓国の左派政権が利用される

 ただし、トランプ政権としては表面的には北朝鮮側がいつまで経っても要求に応じなければ、昨年末まで現実性が高いと見られていたように軍事攻撃が視野に入らざるを得なくなるため、時折り柔軟な姿勢を見せることでそれを回避させる必要がある。軍需産業や職業軍人系をその中核基盤とする軍産複合体から主に構成されているコスモポリタン系とは異なり、ナチズム系は在韓米軍を撤退させようとしているので絶対に戦争を引き起こしてはならないからだ。
 そこで利用価値があるのが南北融和を唱えている韓国の左派政権なのであり、先に文在寅大統領に金正恩委員長と会談させたうえで米朝間の関係改善ムードを演出することで、時折り表面的な米朝間の対立の“ガス抜き”をするわけだ。


米系資本の名代として財閥幹部が大挙して同行する

 これも以前、当欄で指摘したように、トランプ政権が北朝鮮問題を棚上げにしたもう一つの理由が、文在寅大統領が“前のめり”で南北間で鉄道を敷設しようとしたのに対し、米国側ではコスモポリタン系、ナチズム系ともにそれが“逆鱗に触れた”ことだ。在韓米軍がそのまま駐留し続けることを望んでいるコスモポリタン系は当然だが、ナチズム系としても北朝鮮の利権を“お仲間首脳”だけで握ろうとしており、中国や韓国の左派勢力をそこから排除しようとしているからだ。
 そこでトランプ政権は今回、文在寅政権を利用するにあたり、大統領の“仇敵”であるはずの財閥の幹部も大挙して同行することをその条件としたのである。97年にアジア通貨危機が波及して韓国でも危機に見舞われたことで国際通貨基金(IMF)の管理体制に入ったが、その際に緊急融資の条件として対外的に資本取引の自由化に踏み切ったことで、有力な財閥系企業の多くが米系金融資本に過半数の株式を握られている。今回、文大統領に同行した多くの財閥の幹部はいわば米系資本の“名代”としての性格が強いのであり、平壌宣言に南北間の鉄道や道路を結ぶ着工式を年内に実施することが許されたのもそのためだ(ただし、コスモポリタン系の米国が北朝鮮に軍事用に転用されかねない鉄鋼その他の物資を輸送することを許すはずがなく、それが実現する可能性は低いが)。


 今週はこれで終わりです。
 来週も週明けの1日月曜日から掲載していきます。
 日米首脳会談やFOMCといった大きなイベントがあったので、検証していきたいと思います。
 なにかありましたら書き込みをお願いします。
 少人数での懇親会形式でもかまいませんので、講演のご依頼があればお引き受けいたします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。