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トランプ政権の外交政策に影響を受けてきたFRBの政策姿勢

ポイント
・FRBの政策姿勢はトランプ政権の外交政策に影響を受けており、今春頃にハト派的だったのは朝鮮半島の非核化が優先されていたためだ。6月のFOMCや米朝首脳会談の開催を機に貿易問題で中国に圧力を強めることになったことで金融政策もタカ派的になった。
・その後、トランプ大統領がFRBの利上げを牽制してドル高を嫌う姿勢を示したのでFRBの政策姿勢もハト派的になったが、今回のFOMCでタカ派的な結果になったのは米権力者層の路線が中国への攻撃路線に変化がないことを示唆している。
・トランプ大統領自身は貿易赤字を縮小することしか関心がないところを見ると基本的に米権力者層に操られているに過ぎないことがうかがわれる。本来的に権力者層は自在に操ることが出来なくなるので優秀な人物を大統領に据えないものだ。
・トランプ大統領が中間選挙に向けて中国がサイバー攻撃で妨害していると演説したが、こうしたことは当然、行われていて然るべきものであり、大統領側もその証拠をしっかりつかんだうえで暴露したものと思われる。
・トランプ政権で主導権を握っているナチズム系が中国に圧力を強める路線にシフトしたことで、もとより米国の世界覇権の維持を目指すうえで中国を排撃しようとしていたコスモポリタン系と利害が一致し、オール・アメリカン体制で中国総攻撃体制が強まっている。


米朝首脳会談の開催を機にFRBの政策姿勢がタカ派的に転換

 これまで当欄で指摘してきたが、そもそも「通貨の番人」である中央銀行は表向き政府から独立しているとされているとはいえ、実際にはその影響を強く受けているものだ。とはいえ、米連邦準備理事会(FRB)では特にホワイトハウスの“イエスマン”であるジェローム・パウエル議長が就任して以来、そうした傾向が強まっている。
 今春頃に連邦公開市場委員会(FOMC)委員が盛んに政策金利の天井について発言するなどハト派的な姿勢を示していたのは、ドナルド・トランプ政権の外交政策の優先事項が在韓米軍の撤退を目的に朝鮮半島の非核化を志向していたことがあった。朝鮮戦争の休戦協定を終戦協定に変えるにあたり、“本音”としては排除したいと思っていても、当事国である中国をそこに関与させざるを得なかったからだ。
 ところが、6月にFOMCが開催されたのと同じ時期の12日にシンガポールで米朝首脳会談が開催されたのを機に、非核化の先行実施を求めている米国側と終戦協定の締結を優先して段階的な非核化を主張している北朝鮮側との間で歩み寄りが見られなくなった(ただし、これは表面的なことに過ぎず、実際には拉致問題が阻害要因になって日本側が巨額な資金拠出をするメドが立たなくなったことがその真因である)。
 そこでトランプ政権はこの問題をひとまず棚上げにして貿易問題で中国を攻撃する路線に回帰することになり、それに応じてFRBの政策姿勢がタカ派的になっていった。それによりグローバル的に信用収縮を強めて米国に資金還流が進みやすくなる状況にすれば、新興国通貨不安が起こりやすくなることで、天文学的な簿外債務を抱えている中国経済は苦しい状況に陥らざるを得なくなるからだ。7月17日の議会証言で、パウエル議長が米国経済の高成長がまだしばらく続くと予想されるため、政策金利を中立金利を上回る水準にまで利上げを続けていくことを正当化したのも、トランプ政権の権力者層の意向に従って発言したものと考えるべきである。


トランプ大統領の圧力でハト派的になるも再びタカ派的に回帰

 ところが、トランプ大統領はその直後の19、20日と連日にわたり、通商政策面で中国や欧州連合(EU)を激しく非難するとともに、こうしたFRBの政策姿勢に不満を表明して利上げを牽制し、またドル高が進むことにも懸念を表明した。そして米ワイオミング州ジャクソンホールでの国際会議の直前(おそらく、パウエル議長の講演を意識してのものと思われるが)の8月20日にも、再びトランプ大統領がFRBの利上げを牽制した。
 これを受けて、パウエル議長はこの国際会議での講演では「過熱リスクは高まっていない」「インフレ率が2%を大きく上回る兆候はまだ見られない」としてハト派的な内容になった。さらに議長の講演をも受けて、ダラス連銀のロバート・カプラン総裁はじめ中立派のFOMC委員の多くが、政策金利が中立金利に達した段階で利上げをひとまず中止することを唱えるようになったものだ。
 ところが、今回のFOMCでのドットチャートやパウエル議長の会見及び翌日の講演では、再び政策金利を中立金利を上回る水準にまで利上げを続けていく姿勢に回帰した。今になって振り返ると、それに先立つ9月12日にハト派の代表格であるラエル・ブレイナード理事が講演でそうした趣旨の発言をしていたのが、今回のFOMCでの政策決定をあらかじめ示唆していたと言えなくもない。


トランプ大統領は権力者層に操られている

 ここでうかがわれることは、パウエルFRB議長がトランプ政権で主導権を握っている権力者層の意向を受けて金融政策を運営しているとすれば、トランプ大統領は奔放に振る舞っているように見えながら、実際には単にその権力者層に操られているに過ぎないということだ。
 米国で最近、ホワイトハウスの内幕を描いたボブ・ウッドワード著の暴露本で、ジェームズ・マティス国防長官がその知識及び理解水準を「小学5~6年生並み」と愚痴っているなど、おそらく、トランプ大統領は貿易赤字を“悪”と見なす思考概念に凝り固まっており、またそれしか関心がない人物であるということだ。
 いうまでもなく、その背後の権力者層は貿易問題で各国を攻撃して多国籍企業に生産拠点を米国内に回帰させたり、世界的に駐留している米軍を撤退させて属国群を独立させたうえで中国を相手に「新冷戦」構造に持ち込んだり、米系資本を中国国内に蚕食させてこれまで、米国があまり進出していなかった未開拓分野に進出していくために貿易問題で中国を攻撃するにあたり、その強烈な個性と攻撃的な性格の持ち主であるトランプ大統領を前面に押し立てた方が有利であるからそうしているのである。
 そもそも、権力者層は本当に優秀な人物を大統領に据えると、その意向に従わずに独自に動くことになりかねない。そうなるとジョン・F・ケネディ大統領(当時)のように“抹殺”しなければならなくなるため、それなりに“ボンクラ”な人物を擁立するものだ。バラク・オバマ前大統領はミシェル夫人とともにかなり優秀だったが、それは前任のジョージ・W・ブッシュ元大統領が読み書きも満足に出来ないほどあまりにボンクラ過ぎた反動による面もあるだろう。


トランプ大統領はサイバー攻撃が中国の仕業との証拠をつかんでいる

 トランプ大統領は先週26日の国連の安全保障理事会での演説で、11月6日の中間選挙を控えて中国がサイバー攻撃で妨害しようとしており、共和党を敗北させることで政権に打撃を与えようとしていると批判した。
 実際、米国では今では選挙の投票のほとんどが電子システム化されており、そこに攻撃を仕掛けることで選挙結果を操作することは、実際に各国の諜報機関によって行われてきたことだ。それだけに、16年の大統領選挙でロシアがヒラリー・クリントン元国務長官側の陣営に、また今回の中間選挙においても貿易問題で対立しているトランプ政権の政権与党である共和党に中国がサイバー攻撃を仕掛けておかしなことではなく、むしろ攻撃していなければおかしいとさえいえるものだ。
 ただし、このサイバー攻撃を最初に開発して実際に最も多様しているのはイスラエル及び、米中央情報局(CIA)に潜入している諜報員であるという。そもそも、16年の大統領選挙で本当はクリントン元国務長官が勝っていたのがトランプ現大統領の勝利とされたのは、そうした“インチキ集計”によるものだったはずだ。
 そうしたイスラエルの工作員が最も多く扱っているものだけに、今回の中間選挙を巡る中国のサイバー攻撃については、その証拠についてもしっかり押さえたうえでトランプ大統領が暴露したと考えるべきだろう。


オール・アメリカン体制で中国総攻撃へ

 またそれに先立つ20日には、米政府は中国が昨年からロシアから戦闘機や地対空ミサイル等の兵器を購入しているとして、米国がウクライナ問題や大統領選挙での妨害行為を理由に行っているロシアへの制裁に違反していることを理由に、中国政府の防衛担当部局に経済制裁を科している。しかも、台湾に対しても兵器を売却する姿勢を強めており、さらにはその台北の政府が正当な中国の政府であり、大陸・北京の共産党独裁政権には正当性はないといった声までが、共和党上層部から漏れ伝わるようになっている。
 今回のFOMCでのタカ派的な姿勢は、そうしたトランプ政権や共和党上層部の対外姿勢が「中国総攻撃」で一致したなかで打ち出されたことに留意する必要がある。その背景には以前、当欄で指摘したように、トランプ政権で主導権を握っている国家主義的、民族主義的で親イスラエル右派的なナチズム系の勢力が、在韓米軍の撤退を目的とする朝鮮半島の非核化の動きをひとまず棚上げにして、貿易問題で中国に圧力を強める路線に回帰したことがある。それにより、軍産複合体を中心に社会主義的で世界単一政府志向の親イスラエル左派的な旧来のコスモポリタン系の勢力は、米国の世界覇権の維持を目指すうえで以前から中国を打倒しようとしているが、ナチズム系の勢力と目的意識が異なる“同床異夢”でありながらも中国総攻撃の方向で一致したわけだ。
 いわば「オール・アメリカン」による体制の下で、ナチズム系が主導権を握っているホワイトハウスの意向で動いているパウエル議長の姿勢が、本来的に世界中の主要国・地域の中央銀行の金融政策を統括、管理しているコスモポリタン系の“巣窟”であるグループ・オブ・サーティ(G30)の路線とも一致することになったといえる。ブレイナード理事がFOMCでの政策決定を前にして、パウエル議長の“先導役を買って出た”のもこうした事情があると考えると得心がいくというものだ。


 明日からの2日間では、先週の日米貿易摩擦により日米間で物品貿易協定(TAG)の協議を開催することになり、その間には米国側が自動車輸入関税の引き上げに動かないことになりましたが、その背景や意義について考察します。
 明日は今回の会談の背後事情について検証した後、週末の明後日には最も重要なことを指摘します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。