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米長期金利の急上昇に見られるFRB執行部とG30勢力の連携

ポイント
・ここにきて、米長期金利が急上昇してきたことでリスク回避が強まっているが、これまで長期金利が低位安定した状態にあったところに急激に上がってきたので市場が狼狽して当然だ。
・ただし、この動きは前週末に中国株を買い戻しておいて、中国市場が国慶節で1週間もの休場中に米系投機筋が米国債を売り崩した形跡があり、策動的なものであるようだ。
・基本的にパウエル議長主導のFRBの金融政策姿勢はトランプ政権の外交政策から影響を受けており、政権の背後のナチズム系の権力者層と米国の世界覇権の維持を目指すコスモポリタン系が志向する方向性が「打倒中国」で一致したことがある。
・かつて、15年後半から16年前半にかけての中国危機の際にはG30主導でFRBがタカ派的な姿勢を推進していたことがあったが、ナチズム系とコスモポリタン系が協調路線になったことで、現在のFRBの政策姿勢がG30のそれと一致することになったといえる。
・ただし、現在主導権を握っているナチズム系は中国でバブル崩壊が進むことを望んでおらず、インフレが顕在化していけば経済活動が活発化しやすいこと、当時のように脆弱な中小石油企業の社債償還問題が高まる恐れがなく、極端に信用収縮が強まる状況ではない。
・これまでFRBの政策姿勢とは裏腹に米長期金利が上がらず、イールドカーブがフラット化していたのは、新興国勢が資本逃避により資産を米国にシフトさせ、その多くが米長期国債に向かったからであり、その多くが中国勢だった。


米長期金利の急上昇に市場が動揺して当然

 先週は前半にはリスク選好が強まって株高になったが、後半になると一転して米長期金利の急上昇から急速にリスク回避が強まり、中国市場が休場だったもののアジア株主導で世界的に株安傾向に見舞われた。週前半までリスク選好ムードをもたらしていた一因は良好な米景気指標の発表が相次いだことにあったが、それにより米長期金利が上昇し始めると一転してリスク回避が強まることになったものだ。
 これまで、米国を中心とする株高傾向の背景には、良好な状態にあった米国経済が、ドナルド・トランプ政権が大規模減税政策を成立させたことで一段と高成長が実現されていたなかで、連邦準備理事会(FRB)が段階的に利上げを推進していく姿勢を示していたにもかかわらずに長期金利がそれほど上がらず、イールドカーブがフラット(平坦)な状態にあったからだ。そこに長期金利が急速に上昇してきたので、短期的に狼狽売りを浴びておかしくなかったと言えるだろう。
 実際、米国の長期金利は、指標となる10年国債利回りで9月半ばまで3%を下回っていたが、週明け17日に3%台に乗せて以降、1週間超ほどは3.0%台での安定した推移を続けた後、先週3日に急上昇して以来、週末5日には一時3.23%にまで一気に駆け上がったのだから、市場が動揺して当然である。


策動的な動きも見受けられる米長期金利の急上昇

 もっとも、相場というのは節目となる水準を超えるとその方向に勢いよく動く傾向があり、その意味では先週後半の長期金利の急上昇は特に驚くものではないが、策動的な動きもうかがわれる。
 先週は国慶節で中国市場が1週間もの休場だったが、その隙に米系投機筋が米国債を売り崩した形跡が見受けられるからだ。しかも、長期休場に入る直前の前々週末28日にかけて、中国株の買い戻しを進めて市況を大きく戻しておいて、他の市場関係者に安心感を与えておいて一気に売り崩すことも、“獰猛なプロ”の投機筋が好んで行うことだ。
 いうまでもなく、その背景には9月25~26日の連邦公開市場委員会(FOMC)や、ジェローム・パウエルFRB議長の会見及び講演でタカ派的な姿勢が示されたことがある。以前、当欄で述べてきたように、ホワイトハウスの“イエスマン”であるパウエル議長の金融政策姿勢の背景には、トランプ政権の背後の親イスラエル右派的な国家主義的、民族主義的志向が強いナチズム系の権力者層の意向がある。


打倒中国でナチズム系とコスモポリタン系が足並みをそろえる

 これまで、当欄では“イエスマン議長”が率いるFRBの金融政策姿勢がトランプ政権の外交政策に影響を受けていることを指摘してきた。
 今春頃にFRBが「政策金利の天井」を議論するなどハト派的な姿勢を示していたのは、トランプ政権が在韓米軍の撤退を目的に朝鮮半島の非核化に最優先で取り組むにあたり、朝鮮戦争の当事国である中国に配慮する必要があったからだ。ところが、非核化に向けた動きと朝鮮戦争の終戦宣言のどちらを優先的に進めるかで米国と北朝鮮が対立したのを表向きの理由として、実際には日本人拉致問題が障害になって暗礁に乗り上げたことで、米国はそれをひとまず棚上げにして、中国に対して貿易問題で圧力を強める路線に回帰した。
 それに伴ってFRBの政策姿勢もタカ派的になっていったが、それまでトランプ政権を排撃していた世界単一政府志向の社会主義的なコスモポリタン系の勢力も、「打倒中国」でトランプ政権の背後の権力者層と足並みをそろえたことは、これまで当欄で述べてきた通りだ。


ナチズム系のFRB執行部とコスモポリタン系のG30の姿勢が一致

 その意味では、ここにきて米長期金利が急上昇してきたことで新興国通貨不安が再燃する兆しが出ているのは、15年7月に人民元切り下げを機に第一次中国危機が起こり、その後小康状態を経て年明け16年初頭にスタンレー・フィッシャーFRB副議長(当時)が「今年4回利上げをするとの見通しは妥当」と述べたことで第二次危機が始まったことを想起させるものだ。
 フィッシャー副議長は世界の主要国・地域の中央銀行の金融政策を実質的に統轄、管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)の最高幹部の一員としてFRB執行部に送り込まれていた。このG30では米ロックフェラー財団が強力に支援しているロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の人脈が強い影響力を行使しており、親イスラエル左派的で社会主義的な世界単一政府志向であるコスモポリタン系の“巣窟”のような国際的な組織だ。
 今回、ナチズム系とコスモポリタン系の目指す方向が、その目的意識が異なる“同床異夢”でありながらも「中国総攻撃」で一致したのを背景に、FRBの金融政策姿勢もナチズム系の権力者層の意向に従って運営しているパウエル議長の姿勢がG30のそれと一致したと言える。


かつてのような中国危機から信用収縮が強まる状況ではない

 ただし、それでは国際金融市場では15年後半から16年前半にかけての時期と同じように信用収縮が強まっていくのかというと、筆者はそのようには見ていない。
 当時はバラク・オバマ前政権の後半期であり、ヒラリー・クリントン元国務長官が次期大統領に就任することが確実視されていたなど、まだコスモポリタン系が支配的な地位にいた。この勢力は米国の世界覇権の維持を目指すにあたり、それを脅かす勢力である新興大国「BRICS」を、それもとりわけ中国を撃滅させようとしていた。中国は多くの国有企業が簿外で天文学的な債務を抱えているなかで、FRBに積極的に利上げを推進させることでバブル崩壊を促進させようとしていた。またこの勢力を構成しているウォール街の金融資本の利害が一般的な米国人のそれより優先されていた。
 それに対し、現在主導権を握っているナチズム系は今でこそコスモポリタン系と共闘姿勢を示しているものの、本来的に中国の国有銀行や国有大企業に米系資本が“寄生虫”のごとく乗っ取って“蚕食”していく路線を推進しようとしているので、中国で本格的にバブル崩壊が進むことを望んでいない。トランプ大統領もその“人気取り的”な単純な性格から、株安が続くことを望んでいないはずだ。

 また当時は原油価格が低迷していたなかで、米国内でシェール産業にかなりの投資をしていた脆弱な中小石油企業が発行した社債の償還問題が高まったことが危機を増幅した。ただ現在ではそうした企業の整理淘汰が進み、原油価格も指標となるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)市況で70ドル台にまで高騰しており、そうした状況に陥る心配がなくなっている。
 さらに経済ファンダメンタルズ面でも、当時はまだデフレ圧力が強い状態だったが、現在では米長期金利が本格的に上昇してきたように、インフレ圧力が顕在化していく兆しが出ていることも指摘できる。それはすなわち、売上高が伸びることで企業部門の間で名目的な収益期待が高まり、設備投資が活発になって米国経済を中長期的に活発にさせていく重要な要素であるからだ。


これまで米長期金利が上昇しなかった主因は主に中国勢の資本逃避

 そもそも、どうしてこれまで米長期金利がそれほど上昇していなかったかというと、ジャネット・イエレン前FRB議長の時代にはフィッシャー副議長(当時)主導で段階的に利上げを推進していく姿勢を示していたにもかかわらず、労働市場がひっ迫していきながらも賃金が上がらず、インフレ率が上昇していく兆しが一向に見えないことが指摘されていたものだ。
 ただより資金移動の観点でいえば、FRBが段階的に利上げを推進する姿勢を示してきたなかで、新興国通貨不安が根強い状態が続いたことで中国勢を中心とするそれらの投資家勢が資産を米国にシフトさせていき、その多くが米長期国債に向かっていたからだ。いうまでもなく、15年後半から16年前半にかけての時期には人民元相場に下げ圧力が強まったように、中国勢が資本逃避を加速させてドル建て資産にそれを移していたが、最近でもトランプ政権が貿易戦争を仕掛けていたなかで、そうした動きに拍車がかかっていたようだ。


中国の経常収支の赤字化は資本逃避もその一因か?

 実際、中国国家外貨管理局の統計によれば、中国の今年1-3月期の経常収支が341億ドルの赤字に転じており、4-6月期には黒字に戻ったが、それでも58億ドルとわずかなものに過ぎない。その理由として、海外旅行者による“爆買い”からサービス収支の赤字がかなりの規模に達していることや、海外企業が売り上げを本国に送金したことが指摘されている。
しかし、なにしろ海外で調達した資金を「偽装輸出」により国内に持ち込むことがごく一般的に平然と行われているような国なので、サービス取引を装っていながら本当は資本逃避の目的で海外に流出している部分がかなりあっておかしくない――すなわち、本来なら資本取引の流出分として計上されるべきものが、経常取引の中のサービス取引として計上されているということだ。

 いずれにせよ、中国が国慶節で1週間にもわたる長期休場中に米長期金利が一気に急上昇したのは、米国債のかなりの部分を中国勢が資本逃避により“高値づかみ”していた状態にあったなかで、米系投機筋がその隙をついて売り崩したからだ。いうまでもなく、投機筋は9月25~26日のFOMCでFRBが再びタカ派的な姿勢に回帰したことに支援されているのだが、その背景にはコスモポリタン系とナチズム系が連携して「オール・アメリカン」体制で中国への攻撃に当たるようになったことがあるのは、しっかり押さえておく必要があるだろう。それによりナチズム系主導のFRBの金融政策姿勢も、コスモポリタン系の“巣窟”であるG30の姿勢と一致するようになったわけだ。


 明日、明後日では、そうしたFRBのタカ派的な姿勢や米長期金利上昇をもたらしている背景として、オール・アメリカン体制による水面下での中国への総攻撃の動きを見ていきます。
 そのうち、ペンス副大統領が来日する意味合いについて簡単に考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。