FC2ブログ

記事一覧

トランプ大統領の中国に対する楽観的な姿勢の背後に見えるもの

ポイント
・先週は今月末の米中首脳会談を巡りトランプ大統領が楽観的な見通しを述べたことが好感されて株価が上昇する場面が目に付いたが、大統領がどうしてそうした発言をしたか、気になるところだ。
・米権力者層の間では、コスモポリタン系が米国の覇権維持の観点から中国を撃滅しようとしているのに対し、ナチズム系は米系資本が“寄生虫”のごとく中国そのものを“蚕食”していき、「一帯一路」構想に乗ってグローバル規模で利権を獲得していこうとしている。
・米権力者層は中国を相手に「新冷戦」構造に持ち込もうとしているが、ナチズム系は世界中に展開している米軍を撤退させて属国群を独立させ、それらの国々に軍事力を強化させることで兵器や防衛装備品の輸出を伸ばして生産活動を活発化させようとしている。
・ナチズム系はペンス副大統領の演説が“過激すぎる”と感じている可能性があり、基本的にバブル崩壊から中国が崩壊していくことは望んでいないため、先日に安倍首相が訪中して日本の民間企業が「一帯一路」に協力することになったのは好ましいと思っているはずだ。


気になるトランプ大統領の米中首脳会談での楽観的な言動

 先週は米中貿易問題を巡る米国側の動きに振り回されて株価が変動の激しい展開になったが、やはり気になるのはドナルド・トランプ米大統領が今月末にアルゼンチンで開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の際に開催される米中首脳会談で、この問題で合意に向けて楽観的な見方を示したことだ。
 米ブルームバーグ通信がトランプ大統領がその草案の作成を関係閣僚に指示したとの報道については、後にラリー・クドロー米国家経済会議(NEC)委員長がそれを否定したので、やや記者による“勇み足”のような感がしないでもない。ただ、クドロー委員長が合意に向けて慎重な発言をしている一方で、トランプ大統領が盛んに楽観的な見通しを表明しているのが気になるところだ。
 トランプ大統領は6月12日にシンガポールで米朝首脳会談が開催された際にも、大前提となる部分については首脳間で合意をしておきながら、その後の実務者レベルでの核放棄に向けた工程表の作成において対立してしまい、その後の協議がまったく進まなかった経緯がある(停滞している本当の最大の理由は日本人拉致問題でつまずいているからだが)。そうした意味では、今回の米中間での通商問題も同じような結果になりかねない。

 あるいは、トランプ大統領は合意に向けて水面下での協議が進んでいないにもかかわらず、意図的に楽観的な見通しを示すことで中国側にプレッシャーをかけているのかもしれない。だとすれば、首脳会談では中国側は米国側が満足できる条件を出すことが出来ずに物別れに終わり、11日にブルームバーグ通信が報じたように、米政府はすべての中国からの輸入に追加関税を課す措置を発動する公算が高いことになる。


コスモポリタン系とナチズム系の中国に対する目的意識の相違

 ただ気になるのは、トランプ大統領の背後で主導権を握っている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の勢力は、中国の習近平国家主席の背後の勢力ともつながっていることだ。
 米国側が通商問題で中国側に強硬な姿勢を示しているが、そこでは軍産複合体に代表される親イスラエル左派的で社会主義的、共産主義的なコスモポリタン系の勢力とナチズム系とでは目的意識が異なる。コスモポリタン系は米国の世界覇権を維持する目的から中国を撃滅しようとしているが、ナチズム系は将来的に中国に覇権を明け渡すことを前提に動いており、資本取引を自由化させたうえで習近平主席に抜本的に国有企業改革を推進させ、それにより米系資本が“寄生虫”のごとく中国そのものを“蚕食”していき、「一帯一路」構想に乗ってグローバル規模で利権を獲得していこうとしている。
 コスモポリタン系は軍事的に中国を封じ込めていき、金融政策面でも米連邦準備理事会(FRB)に積極的に引き締め政策を推進させることで完全にバブルを崩壊させることで中国を撃滅させようとしているが、ナチズム系はそれは望んでいない。


ナチズム系が目指す中国を相手とする新冷戦構造

 そうしたなかで、10月4日にマイク・ペンス副大統領がハドソン研究所で行った講演が、かつてのソ連を相手とした旧冷戦時代の幕開けとなった1946年3月のウィンストン・チャーチル元英首相の「鉄のカーテン」演説をほうふつとさせ、「新冷戦」時代の幕が切って降ろされたととらえる論調が強まっている。筆者はかなり以前から米国は中国を相手にこうした構造に持ち込もうとしていることを指摘していたが、ようやく昨年後半あたりから識者の間でもそうした認識が強まりだし、ついに今回のペンス副大統領の講演を機に国内では日本経済新聞もこうした言葉を用いるようになっている。
 ただ留意する必要があるのは、中国と軍事的に対峙していくとしても、その中国を撃滅しようとしているコスモポリタン系と、トランプ政権で主導権を握っているナチズム系のそれとではそこでも目的意識が異なることだ。ナチズム系は世界中に展開している米軍を徐々に撤退させて属国群を独立させていき、覇権を放棄していきながらそれらの国々と連携して軍事的に中国と対峙させることで軍事力を強化させようとしている。そうすることでそれらの国々に兵器や防衛装備品の輸出を増やすことで、貿易赤字を縮小させていきながら国内で生産活動を活発化させようとしている。


ナチズム系としては誠に好都合な安倍首相の動き

 そうした意味では、トランプ大統領やその背後のナチズム系の権力者層はペンス副大統領の演説内容について、あまりに“過激すぎる”と感じているかもしれない。中国の軍事的な脅威や米国の国益に直接関わる通商面での利害対立にとどまるなら良いが、米軍の撤退が進んでいない段階でイデオロギー面での対立や米国の覇権維持への脅威にまで踏み込んでしまうと撤退できなくなってしまい、これまで通り巨額の防衛予算を計上し続けなければならなくなるからだ。
 そうした意味では、先日に安倍晋三首相が訪中して26日に日中首脳会談に臨み、「競争から協調へ」が謳われたのはナチズム系としては誠に望ましいものであり、トランプ大統領としては中国に対する姿勢を緩和させる好機が提供されたといえるかもしれない。明らかに安倍首相はナチズム系の権力者層の意向通りに動いているといえるが、首相の背後の右翼的な宗教勢力がトランプ大統領やナチズム系の背後のキリスト教福音派の勢力につらなるのだから当然である。米国側では国務省や国防総省内部で従来のコスモポリタン系につらなる勢力が今回の安倍首相の動きに懸念を示す声が聞かれるが、ナチズム系としてはまさに歓迎すべき動きなのである。
 ナチズム系の権力者層としては、これから中国に「一帯一路」路線を推進させていくうえで、そこに世界で最も優れた製造技術と信用を誇る日本の産業界が協力することになったので、あとは米系資本が国有銀行や代表的な国有企業への支配権を握れるようにするだけになったといっても過言ではないといえよう。米中首脳会談で、背後の権力者層がナチズム系につらなる習近平主席がどのような譲歩案を米国側に出してくるかが大いに注目されるところだ。


 明日は中国経済の動向を左右する今後のFRBの金融政策姿勢に影響を及ぼす要因として、先週末に発表された米雇用統計の内容について簡単に押さえることにします。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。