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米権力者層と安倍首相とのつながりの変遷 戦後の時代の終わり

ポイント
・安倍首相はこれまで、その時々に米国で主導権を握っている権力者層の意向通りに動いてきた。第一次政権の際にはチェイニー副大統領(当時)に嫌われて短命政権で終わったが、12年末に返り咲いてからは以前の失敗を教訓に米国側ににらまれないように動いてきた。
・安倍首相は13年末に靖国神社を参拝したことでバイデン副大統領の怒りを買ったが、国内勢力からは大歓迎を受けたなか、米国でも主導権が民主党系ネオコン派のクリントン前国務長官(いずれも当時)に代わったことで権力基盤が強化された経緯がある。
・それ以降、安倍首相は尖閣問題その他で中国に対する強硬路線を貫き、対中国包囲網の構築に動いたが、それは日本と中国が対立関係にあることが望ましかった民主党系ネオコン派に配慮してのものだ。
・トランプ現大統領が大統領選挙に勝利すると、安倍首相は背後の宗教勢力を介して現大統領と個人的な関係を築くのに成功したことで、官僚勢力を排して官邸主導の統治システムを構築することに成功し、それにより70年余り続いた戦後の時代が終わったと言える。
・安倍首相がインド太平洋戦略を提唱するとトランプ大統領がそれを受け入れ、TPPについても米国が一方的に離脱した後に日本が11カ国をまとめて合意にこぎ着けるなど、この地域の管理は米国が放棄したことで日本に任せられている。
・安倍首相は訪中して日中首脳会談で民間企業による「一帯一路」への協力を取り決め、帰国するとすぐにインドのモディ首相と対中国包囲網を想定して軍事的な協力を取り決めるあたり、現在の米国で主導権を握っているナチズム系の権力者層の意向通りに動いている。


共和党系ネオコン派に嫌われて短命に終わった第一次安倍政権

 これまで、安倍晋三首相の動きはその時々において、米国で主導権を握っている勢力の意向通りに動いていることがわかる。
 06年9月から翌07年8月まで1年間の短命に終わった第一次安倍政権では、首相が独自にアジア太平洋戦略を打ち出そうとしたところ、当時、ジョージ・W・ブッシュ政権で主導権を握っていた共和党系新保守主義(ネオコン)派のリチャード・チェイニー副大統領が激怒したとされる。しかも、安倍首相の背後の右翼的な宗教勢力の存在も、チェイニー副大統領から忌み嫌われて短命政権で終わったものだ。
 当時、安倍内閣では不祥事を暴露されて陥れられる閣僚が続出したが、特に額(ひたい)に絆創膏を貼って会見に出てくる大臣が話題になるなど、農林水産大臣がことごとく失脚させられていったものだ。
 ネオコン派は好戦的でタカ派的な性格ではあるが、その出自は「世界革命論」を唱えているトロツキストの社会主義者であり、典型的なコスモポリタン系である。いうまでもなく、そうした“現実離れ”した理想主義的な勢力を軍産複合体が支援して、アフガニスタン戦争やイラク戦争といった「対テロ戦争」を敢行させていたわけだ。


民主党系ネオコン派に迎合して対中国強硬路線を貫く

 その後、12年12月にその地位に返り咲いた安倍首相は、以前の失敗を教訓にして、米国でその時々に主導権を握っている権力者層ににらまれないように行動していたものだ。
 翌13年12月26日に靖国神社を参拝した際には、当時、バラク・オバマ政権で外交問題評議会(CFR)系を率いていたことで主導権を握っていた親中国的なジョセフ・バイデン副大統領が、中国でのシャドーバンキング(影の銀行)の焦げ付き問題による信用不安を沈静化させるために、日本側に巨額の資金拠出をさせる計画で動いていたのが水泡に帰したとして激怒したことがあった。しかし、当時は国内の財界や官僚勢力が一様に“諸手を上げて”その動きに賛同したなかで、米国でもヒラリー・クリントン前国務長官(当時)率いる民主党系ネオコン派から支持されたものだ。結局、バイデン副大統領は対極東政策の失敗を背後の権力者層から責められて影響力を後退させ、代わってクリントン前長官が主導権を回復させるとともにその時点では次期大統領に“内定”したなかで、安倍首相の地位も強化されていった経緯がある。
 それ以降、安倍首相は尖閣諸島の問題その他で中国に対して強硬姿勢を貫き、対外的にも東南アジアはじめ各国に対して反中国的な包囲網の構築を推進するようになったものだ。日本と中国が対立関係にあるのは、軍産複合体を中核とするコスモポリタン系にとって、それも特にネオコン派の勢力にとっては好都合だったからだ。


トランプ大統領が登場し安保体制下での戦後の時代が終了する

 状況が一変したのは、16年11月にドナルド・トランプ現大統領が大統領選挙に勝利してからである。以前、当欄で指摘したように、安倍首相は背後の宗教勢力の人脈を利用して、トランプ現大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー現上級顧問の背後のユダヤ教右派、さらに現大統領を熱烈に支持しているキリスト教福音派の最大勢力であるバプティスト派と連携して、現大統領が就任する以前から個人的に親密な関係を築くのに成功した。
 それにより米権力者層と外務官僚とのつながりが完全に途切れたのを背景に、安倍首相はじめ官邸の勢力は天下り斡旋問題で高級官僚を追放するなどして官僚勢力に決定的な打撃を与えたことで、それ以降、官邸主導の統治体制が構築されて現在に至っている。戦後、属国日本では日米安全保障条約を基盤として米権力者層につらなる官僚勢力が事実上、統治する形態が続いてきたが、そうした統治体制がその時点で崩壊したことになる。
 いわば、日本ではその時点で70年余りにわたる戦後の時代が終わったということが出来るだろう。


アジア太平洋の管理から米国が撤退し日本に任せる

 今からちょうど1年前の17年11月にトランプ大統領が来日した際に、安倍首相はかつてのアジア太平洋戦略にインドを加えた「インド太平洋戦略(正式名称は「自由で開かれたインド太平洋戦略」)」を提唱したところ、大統領は「いいね、シンゾー、それでいこう」と応じたとされる。まさにこうした米国側の対応は、第一次安倍政権の際にチェイニー副大統領(当時)が怒ったのとは対照的である。
 実際、トランプ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)についても離脱した後、日本が11カ国をまとめて合意にこぎ着けているなど、この地域の管理は完全に日本に任せている状態になっている――すなわち、安倍首相の背後の宗教勢力が理想としている「大東亜共栄圏」構想の実現に向けて近づいているといえなくもない。


米ナチズム系の権力者層の意向通りに動いている安倍首相

 特に安倍首相が現在の米国で主導権を握っている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層の意向通りに動いていることが如実に表れたのが、つい最近の10月下旬に訪中して26日に習近平国家主席と日中首脳会談を行い、帰国するとすぐにインドのナレンドラ・モディ首相を自身の山梨県鳴沢村の別荘に招待するなどしてもてなしたことだ。
 日中首脳会談では声明で「競争から協調へ」を打ち出して日本の民間企業が第三国で中国側と協力することになり、事実上、日本政府の後押しで本邦民間企業が「一帯一路」構想の動きに協力することになった。その直後の29日の日印首脳会談では、デジタル分野やロボティクス分野といった面での経済協力もさることながら、最も重要なことは外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開始することを決めたことであり、これは対中国封じ込めの一環としての軍事協力にほかならない。
 これこそ、まさに米ナチズム系の権力者層が安倍政権に求めていることにほかならない。これまで当欄で述べてきたように、ナチズム系の権力者層は表面的には中国を相手に「新冷戦」体制を構築することで、兵器やその装備品の輸出を伸ばそうとしている。その一方で、将来的に米系資本が「一帯一路」構想に乗ってグローバル規模で利権を獲得していこうとしているので、米国側がまだ関与できない間に日本側が協力し、その動きを軌道に乗せていくのは大きな意義があるわけだ。


 今週はこれで終わりになります。
 来週もこれまで通り、19日の月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込みをお願いします。
 また、筆者のお話を直接お聞きしたいようであれば、少人数でもかまいませんので、講演会をお引き受けさせていただきます。御希望があればご連絡ください。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。