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安倍―トランプ会談が意味する今後の日米関係

ポイント
・トランプ次期政権がこれから「双子の赤字」を積み上げていくのが確実な状況のなかで、大幅に増発される米国債を日銀に引き受けさせる制度を構築しておく必要がある。
・そのためにも米大統領は日本側の首相と良好な関係を構築する必要があり、トランプ次期大統領が最初に安倍首相を自宅に招いたのは重要な意義がある。
・かつてのレーガン、ブッシュ大統領も「双子の赤字」を拡大させるにあたり、中曽根、小泉首相と良好な関係を築いて、日本から米国に円滑に資金が流入する状況を構築してきた。
・かつての状況を振り返ると、これから日本でミニ・バブル的な状況が生成・発展していき、円安や株高がかなり進むことが容易に予想される。



是非とも必要な日銀による外債購入制度の構築

 ジャネット・イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長がドナルド・トランプ次期大統領が打ち出そうとしている財政出動政策に対し、世界でも群を抜く債務国において、連邦政府の債務残高も20兆ドルに迫ろうとしているのを背景に、それに難色を示している。ただし、いうまでもなく、そうしたことは米権力者層やその周辺の政策ブレーンの間でも“百も承知”のはずだ。
 そこで大統領はじめ米政策当局を背後で操っている権力者層は、米国が世界覇権を維持していくうえで、圧倒的な原油輸出大国であるサウジアラビアとともにその重要な「属国」である日本側に、大幅に増発される米国債を引き受けさせることをしっかり担保しておく枠組みを構築しようとしている。いわば、日米連合での強力なマネタイゼーション(国債の貨幣化)政策が推進されようとしているわけだ。

 その枠組みとしては、従来のように行政指導で民間金融機関に積極的に米国債に投資するように仕向けていくだけでなく、日本銀行(日銀)に外債を購入できるような制度を打ち立てていこうとしていることは、これまで当欄で何度も指摘してきたことだ。
 9月4~5日に中国・杭州で開催された主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が終わった後の会見で、安倍晋三首相が特に記者から質問を受けたわけではなかったにもかかわらず、自ら「日銀が外債を買うことは日銀法で禁止されている」と述べたものだ。
 今回はそれに加え、米国の権力者層や政策当局、国内でも財務官僚とつながりの深い複数の日銀の幹部のOBが、“口を滑らせて”「中国不安が高まれば、中国の当局が資金調達を目的に保有米国債を取り崩して換金売りせざるを得なくなるのに応じて、日銀がそれを引き取ることになっている」といったニュアンスのことを漏らしていることを付け加えておく。


「双子の赤字」対策で日本との関係が重要になる

 そのためにも、17日に安倍首相がペルーのリマで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するにあたり、途中、米国に立ち寄ったことが重要な意味を持ってくる。安倍首相がトランプ次期大統領の自宅(トランプタワー)を訪れて、表面的なものに過ぎないものだとしても、極めて友好的な雰囲気で行われたことが伝えられている。
 トランプ次期大統領は今月8日に大統領選挙が行われる以前に、ラスベガスの不動産王にしてイスラエルの保守政権与党のリクードに多額の献金をしているシェルドン・アデルソン氏の指示で、同国のベンヤミン・ネタニヤフ首相を自宅に招いたことはある。とはいえ、選挙が終わり次期大統領に就任することが決まってから、自宅に招き入れた他国の首脳は安倍首相が最初である。
 多くの報道機関や評論家、外交アナリストはそれを踏まえて、会談自体が和やかな雰囲気で行われ、信頼関係を構築するのに良い機会だったことを重視しているようだ。

 いうまでもなく、そうした評価自体は正しいものであり、筆者としても特に異論はない。トランプ次期大統領が本当に安倍首相を好感していたのか定かではないが、その背後で操っている権力者層の意向に次期大統領が従って動いているのは間違いない。
 トランプ次期政権が自身が提唱している財政出動政策を打ち出せば「双子の赤字」が積み上がるのが目に見えている。公共インフラ事業にとどまらず、さらに軍産複合体の意向も受けて国防費をも増額させていけば、それが飛躍的に膨れ上がっていくのも“自明の理”である。それだけに、日本との関係が極めて重要になるのは当然のことだ。


日本から米国に円滑に資金が流入する措置が講じられる

 かつて、米国で「双子の赤字」が膨れ上がった政権としては、80年代のロナルド・レーガン政権、00年代のジョージ・W・ブッシュ政権が指摘できるが、いずれも日本側では中曽根康弘首相や小泉純一郎首相と個人的な関係を築いた。いうまでもなく、そうすることで日本から円滑に資金を流入するような関係を構築しなければ、世界覇権国である米国の経済基盤が立ちいかなくなってしまうからだ。

 例えば、80年代前半には本邦機関投資家が大蔵省による事実上の行政指導で積極的に米国債投資に動いたものだ。85年9月22日のプラザ合意を契機に大幅なドル安になり、それがドル不安の様相を呈するようになって87年2月22日にルーブル合意がかわされ、さらに同年10月19日には株価大暴落(ブラックマンデー)が起こると、日銀は積極的に金融緩和策を推進した。それにより日本でバブルが生成・発展していくことで、米国に安定的な資金流入が見込まれることになった。
 00年代のブッシュ政権下でも、90年代後半の情報技術(IT)バブル崩壊により米国経済が景気後退(リセッション)から立ち直る過程でデフレ懸念が高まったのを受けて、アラン・グリーンスパンFRB議長(当時)が政策金利をインフレ率を下回る水準に誘導していく超金融緩和策を推進した。それに応じて日銀も量的緩和策を強化していくことで、日本から資金が円滑に米国に流入していく措置が講じられたことにより、米国経済は不況から立ち直ることができたものだ。


日本でミニ・バブル化の様相も

 こうした経緯を振り返ると、年明けにトランプ政権が成立して以降の政策姿勢と日米関係、日米経済状況がある程度は予想できることになる。
 トランプ政権下で膨れ上がる「双子の赤字」を賄うために、日銀が中核となって日本側はその負担を求められることになり、それを“担保”するのが日米首脳の“ヤラセ”めいた個人的な親密関係になっていくのだろう。おそらく、日銀の金融政策がそれに「貢献」させられることで、ドル・円相場はピーク時には1ドル=140円付近に、国内経済も“ミニ・バブル化”の様相を呈することで、日経平均株価は3万円付近にまで達するかもしれない。


 明日も掲載します。明日の掲載分で今週は最後になります。
 明日は景気・歴史的な循環から米次期政権の性格を考察します。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。