FC2ブログ

記事一覧

巨大な爆弾要因になり得る多国籍企業の自社株買い

ポイント
・米国に資金逃避していた中国勢がリスク回避局面になったことでそれを米国債にシフトしているだけでは、FRBが今後も利上げを推進している姿勢を示しているにもかかわらず、長期金利が政策金利をやや上回る程度にまで債券が買い進まれた理由を説明できない。
・トランプ大統領は20年の大統領選挙での再選が危うくなることからFRBの利上げを牽制していると思われるが、政権で主導権を握っているナチズム系の勢力は習近平国家主席に外圧を利用させて国有企業改革を推進させるためにタカ派的な政策を推進させている。
・ナチズム系がタカ派的な政策を推進させているもう一つの目的が、中国に生産拠点を設けている多国籍企業に拠点を米国内に回帰させることであり、特にトランプ政権がネット関連のハイテク企業群と激しく対立しているのは周知のことだ。
・グローバル生産体制が機能しなくなり、多国籍企業が高収益を上げられなくなったにもかかわらず株価が高騰したのは、米欧日の中央銀行が強力な量的緩和策を推進したことで社債発行が激増し、それを自社株買いに回すことで自己資本を削り債務を増加させたからだ。
・FRBが利上げ推進姿勢を示していることで資金調達コストの上昇から社債の金利が上昇しており、16年前半には新興シェール企業の社債の償還リスクが高まったが、今回は多国籍企業が窮地に陥りつつある。


米金融市場を舞台にした熾烈な権力闘争

(前回からの続き)しかし、米国に資金逃避していた中国勢がリスク回避局面になったことで資金を米国債にシフトしているだけでは、米連邦準備理事会(FRB)が今後もまだ利上げを推進していく姿勢を示しているにもかかわらず、長期金利が政策金利をやや上回る程度に過ぎないほどに債券が買い進まれている状況は解せないものだ。
 一部、結論から先に言うと、実は債券を策動的に買い進んでいる勢力と株式を売り崩している勢力は異なるようであり、単に債券市場から株式市場に資金シフトが進んでいるだけでは説明できない。言うまでもなく、そこには両勢力ともにその背後に巨大な政治勢力が控えているはずであり、米金融市場を舞台にした熾烈で大きな権力闘争が繰り広げられていることがうかがわれる。


ナチズム系が中国に圧力を強める真の目的

 ジェローム・パウエルFRB議長の8月下旬のジャクソンホールでの講演以来、その発言内容がその時々により大きく振れているのは、本来的にドナルド・トランプ政権で主導権を握っている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層の意向を受けて動いていながら、大統領の度重なる批判的な言動にも影響を受けているからだろう。トランプ大統領が利上げを嫌っているのは、単に株安や景気の悪化が自身の支持率の低下、及び20年の大統領選挙での再選に向けて障害になるためと思われるが、政権に影響を及ぼしている有力大企業=多国籍企業の経営者の意向も無視できないはずだ。
 これに対し、ナチズム系の権力者層が6月20日の米朝首脳会談と同時期の連邦公開市場委員会(FOMC)の開催以来、タカ派的な金融政策姿勢を推進させているのは、親イスラエル左派的でリベラル的、世界単一政府志向のコスモポリタン系の勢力と同調して「オール・アメリカン体制」で貿易摩擦で中国に圧力を強めることになったからだ。ただ、ナチズム系が中国に圧力をかける目的は習近平国家主席にその外圧を利用させることで、いまだに江沢民派や共産党の子弟群である「太子党」の勢力が利権を握っている国有企業の簿外の天文学的な巨大な債務(≒国有銀行の不良債権)を顕在化させ、抜本的な改革を推進させるためだ。


もう一つの目的が多国籍企業に生産拠点を米国内に回帰させること

 そのもう一つの目的が中国沿海部に生産拠点を設けている多国籍企業に圧力をかけて、その拠点を米国内に回帰させることだ。特にトランプ政権がグーグルの親会社のアルファベットやアマゾン・ドット・コム、アップル、フェイスブックといったネット系ハイテク企業と激しく対立しているのは周知のことだ。
 これからナチズム系の権力者層は世界各地に駐留している米軍を徐々に撤退させて属国群を独立させて軍事力を強化させ、それらの国々と連携して中国を相手に「新冷戦」構造に持ち込むことで、それらの国々に兵器やその装備品を積極的に輸出することで米国内で生産活動を活発化させようとしている。そこでは、多国籍企業がこれまで通り中国国内で生産活動を繰り広げ、またネット系ハイテク企業も中国国内で大多数の顧客をつかんでいては甚だ不都合であるからだ。
 また、多国籍企業に生産拠点を米国内に回帰させることでグローバル生産体制を崩壊させれば、国内労働者の賃金が上がることで(実際には企業は人口ロボットや人工知能(AI)を駆使するなど様々な合理化を図るので、それほど思惑通りにいくとは思えないが)、インフレ率の上昇により名目的な売上期待を向上させることで企業の設備投資を誘発させ、生産性を上昇させることも目論んでいるわけだ。


懸念される社債の発行による自社株買い戦略

 そもそも、どうしてナチズム系の権力者層がこうした戦略を打ち出しているのかというと、グローバル生産体制が機能しなくなってしまい、多国籍企業が米国の世界覇権の絶頂期とでもいうべき90年代から00年代までのような高収益を上げられなくなったからだ。低付加価値の加工組み立て生産工場が集積している中国沿海部で賃金が高騰していることや、「世界の一大需要基地」だった米国でもリーマン・ショックによる巨大な金融危機に見舞われたことで資産効果が剥落してしまい、中産階級が没落して格差の拡大が顕在化したことで家計の購買力が弱体化したからだ。
 にもかかわらず、株価が当時の巨大な金融危機を克服して大きく上昇していき、ダウで最近の10月3日にザラバで2万6,951ドルの史上最高値を付けるまで高騰した最大の原動力が自社株買いである。世界中の主要国・地域の金融政策を実質的に統轄、管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)の意向を受けてその地位に就いたベン・バーナンキ元FRB議長や、現在でもその地位に就いている欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁や日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁が超強力な量的緩和策を推進したことで、先進国や中国を中心とする新興国を問わず社債の発行が急増した。FRBが量的緩和策を終わらせ、さらに段階的に利上げを推進してきたことで資金調達コストが上昇し、世界的に社債価格が9年ぶりの水準に下がっているのは、21日付の日本経済新聞の1面トップ記事でも指摘している通りだ。
 またFRB内部では、以前からラエル・ブレイナード理事が国債に対する社債の上乗せ金利である信用スプレッドの拡大傾向を指摘して警鐘を鳴らしていたものだ。


パウエル議長の金融政策姿勢で窮地に陥りつつある多国籍企業

 米国内の社債不安と言えば、15年後半から16年前半にかけての中国危機の際には、主にエネルギー業界での財務内容が脆弱な新興シェール産業の社債の償還が、16年4月頃に集中して到来したことで不安が高まったのが想起される。当時、米国で起債していたベネズエラの国営石油会社「PDVSA」の社債も償還を迎えることで、債務不履行(デフォルト)リスクの高まりとともに、同国に簿外で巨額の融資をしている中国に対する不安も一段と助長されたのが想起される。
 ただ、当時はそれほど問題にならなかったが、資本主義の中心地である米国で、それもその世界覇権の維持を目指すコスモポリタン系の勢力にとって最も重大な問題は、多国籍企業が社債を発行して超低コストで調達した資金を自社株買いに回すことにより、自己資本を削りながら債務を激増させることで株価を高騰させてきた多国籍企業が、ナチズム系の権力者層の意向を受けたパウエルFRB議長の金融政策姿勢により窮地に陥りつつあることに注目する必要がある。


 明日もこの続きを掲載します。
 週末の明日は窮地に陥りつつある多国籍企業と攻撃する側の両者の勢力に焦点を当てて考察します。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。