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異常な米長期金利の低下傾向が収束に向かう時とは?

ポイント
・長期金利が米国では2.7%台前半に、日本でもマイナス状態に沈んだが、いかに米国経済がこれから減速していくとの見通しが強いとはいえ足元では潜在成長率を上回っており、いかにも市場の雰囲気が悲観的に傾き過ぎているといえる。
・これまで社債発行で資金調達して自社株買いをしてきた多国籍企業の財務内容が悪化しており、FRBが利上げを推進しているなかで、コスモポリタン系の意向で債券が防戦的に買い進まれているのに対し、ナチズム系は株売りでそれに打撃を与えようとしている。
・妥当な長期金利の水準は名目GDP成長率と一致するはずであり、足元では5%台半ば程度だが、米国経済の減速を織り込んでそれを潜在成長率並みに低下させても4%台前半から半ば程度まで上昇しておかしくない。
・妥当な長期金利の水準と現実の水準の乖離はいずれ収束するはずであり、これから米国経済が減速して20年にはリセッションに陥るとしても、それ以前に債券相場の買われ過ぎの是正が進んで長期金利が上昇しておかしくない。
・そのカギを握るのが、FRBの利上げの有無もさることながら、米中貿易戦争の行方がどうなるかだろう。世界経済減速懸念については、欧州経済はドイツの中国向け輸出に大きく依存しており、必要以上に不安心理が増幅されている印象を拭えないからだ。



市場の雰囲気があまりに悲観的に傾き過ぎているのは明らか

 日米の株価は10月3日にダウで2万6,951ドルの史上最高値を、日経平均もその前日に2万4,376円の年初来高値(いずれもザラバ)をつけて以来、急落している一方で債券が買い進まれ、指標となる10年債利回りベースで足元では米国で2.7%台前半まで低下し、日本ではついにマイナス状態に転落して越年となっている。
 とはいえ、米国経済が実質国内総生産(GDP)成長率で4-6月期の前期比年率4.2%から減速しつつあるとはいえ、足元では依然として潜在成長率を上回っている。いかにこれから大規模減税政策による景気押し上げ効果が確実に剥落していき、20年頃には景気後退(リセッション)に陥る懸念がくすぶっているとはいえ、市場の雰囲気があまりに悲観的に傾き過ぎているのは明らかである。


多国籍企業をめぐる防戦的な債券買いと株価を売り崩す勢力

 以前、当欄ではグローバル生産体制が機能しなくなり、多国籍企業が90年代後半から08年8月のリーマン・ショックまでのような高収益を計上できなくなったにもかかわらず、日米欧の中央銀行が強力な量的緩和策を推進していたのを背景に、多国籍企業が社債を積極的に発行して資金調達して自社株買いにより株価を高騰させてきたことで、財務内容が悪化していることを指摘した。
 ドナルド・トランプ米政権で主導権を握っている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層の意向を受けて、ジェローム・パウエル議長率いる連邦準備理事会(FRB)が段階的に利上げを推進していくタカ派的な姿勢を示していたなかで、多国籍企業の財務内容の脆弱性が顕在化するのを恐れて、親イスラエル左派的でリベラル的な世界単一政府志向のコスモポリタン系の勢力の意向を受けた大手投機筋が債券を防戦的に買い進んでいる。それにより長期金利が“異常な”水準に低下してイールドカーブが不自然にフラット(平坦)化しており、一部の期間では5年債の利回りが2年債を下回る逆イールド状態になっている。それに対し、多国籍企業に打撃を与えて生産拠点を中国から米国内に回帰させようとしているナチズム系の権力者層の意向を受けた別の投機筋が、ネット系ハイテク株を中心に多国籍企業の株価を売り崩している。
 世界経済の減速懸念や米政府機関の閉鎖等による悲観的な雰囲気のなかで、資金をリスク資産である株式から安全資産である債券にシフトする動きが出ていることが、そうした長期金利低下や株安傾向を助長しているのはその通りだが、その根底にはそうしたことがあることをしっかり押さえる必要がある。


妥当な長期金利の水準は名目GDP成長率

 そもそも、妥当な長期金利の水準はどの程度なのかというと、純粋に経済学的な観点で言えば、金利は資金供給者がその見返りに得られる期待収益率の“集大成”と言い得ることが出来る。
 マクロ的に見た名目的な収益値の伸び率は、付加価値の総額である実質GDP成長率にインフレ率(デフレーター)を加えた名目GDP成長率と等しくなるはずだ。足元の米国経済の名目GDP成長率は5%台半ば程度なので、先行きの収益率≒成長率の低下観測を債券相場が織り込まなければ、“教科書的”には長期金利はその水準まで上昇していなければおかしいことになる。もちろん、市場では減税効果の剥落期待その他で先行き米経済成長が減速していくとの見方が支配的だが、それでも実質GDP成長率を潜在成長率並みに低下させても、期待名目成長率≒期待収益率である長期金利は4%台前半から半ば程度まで上昇しておかしくないはずだ。
 トランプ大統領やピーター・ナバロ米国家通商会議(NTC)委員長はインフレ懸念がまったくないことを理由にFRBの利上げ推進姿勢を批判しているが、これは経済学的な観点からは的を射ていないものと言わざるを得ない(言うまでもなく、為政者は“教条的”に経済学的な観点から経済政策を推進すべきではないが)。


妥当な相場水準と現実の水準の乖離は必ず収束する

 間違いなく言えることは、経済環境を背景とする妥当な相場水準と現実のそれとの乖離現象がいつまでも続くはずはなく、いつかは収束していくことだ。すなわち、これから米国経済が一段と大幅に減速して名目成長率が低下していくか、債券相場の買われ過ぎ状態が解消されて長期金利が上昇していくか、その両方の現象が進むことで乖離が収束されていくことになる。
 おそらく、多くの識者が予想しているように米国経済がこれから減速していくことが避けられず、一部では20年にはリセッションに陥るとの悲観的な見方についても、筆者は十分その可能性があり得ると見ている。ただし、相場の“習性”としての観点からは、それまで長期金利が妥当な水準より低めの状態が――すなわち債券相場が割高な状態が続くと考えるのは非現実的であり、19年中に債券相場の修正安=長期金利が修正的な上昇を見せる局面が到来しておかしくない。


米中貿易戦争の行方が大きなカギを握る?

 そのきっかけとして考えられるのが、市場では19年中に1回も利上げを決められないことを織り込んだ状態にあるなかで、18~19日の連邦公開市場委員会(FOMC)の際に公表されたドットチャートで示されたように、2回もの利上げを決める場合だ。あるいは現在の悲観的な環境を構成している要素として、1月21日には英国で議会での欧州連合(EU)からの離脱協定案の採決の期限を迎えるが、この件については離脱の是非をめぐる国民投票がもう一度実施できないのであれば、「合意なき離脱(ハード・ブレグジット)」に陥るリスクを考えるべきだ。
 とはいえ、米政府機関の一部閉鎖の問題については、つなぎ予算の成立をめぐりトランプ大統領がメキシコの壁の建設費用の捻出を求めているなかで、年明けから開会される議会では下院で野党民主党が多数を占めるのでよけいにその成立が難しくなるものの、そうした状態が長期にわたり続くと考えるのは非現実的である。
 世界経済減速懸念については、一見したところ中国や欧州では楽観視できる要素がなく、“独り勝ち”状態だった米国経済も減速していけば一段とそうした状態に拍車がかかることになる。ただし、確かに中国や欧州では経済状態がかなり悪化しているが、欧州経済はそのかなりの部分がドイツの中国向け輸出に依存しているなかで、米中貿易戦争の激化から一段とそうした不安心理が増幅されている印象を拭えない。そうした意味では、米中貿易問題の行方が大きなカギを握るのは間違いない。


 明日は2019年に入ることを念頭に、今後の米中貿易戦争の見通しや焦点になることを押さえたうえで、FRBの金融政策の展望や、米中貿易戦争の次に焦点として浮上しそうなことを考察します。
 明後日はそれを踏まえて日本の立場や安倍政権が取り組むべきこと、日本人に求められる意識改革について考えることにします。
 週末には、それらのことを踏まえたうえで、最近、巷間をにぎわせている韓国の駆逐艦による日本の海上自衛隊の哨戒機に対するレーダー照射事件を採り上げたうえで、最近の日韓関係の本質について考えます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。