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ベトナム・ハノイで開催される米朝首脳会談の意義を探る

ポイント
・今回の米朝首脳会談を前にして、日本や韓国の保守層の間ではトランプ米大統領が段階的な非核化を受け入れるだけで部分的な制裁の解除に動くことを警戒する声が出ていたが、その背後の権力者層は本来的に在韓米軍の撤退を望んでいるので当然である。
・その懸念を払拭するためにトランプ大統領は在韓米軍の撤退を明確に否定したが、その代わりに韓国での駐留費用をめぐる交渉で妥協する代わりに有効期間を1年に短縮させ、毎年撤退が視野に入る状況にさせた。
・朝鮮半島の非核化では北朝鮮の核兵器を完全に廃棄することは不可能であり、各技術者も居残り続け、ミサイルも廃棄されるのはICBMだけで短中距離型が残ることで、日本ではいずれ核の脅威が高まることになり、改憲や軍事力増強、核武装を目指す勢力には好都合だ。
・今回の首脳会談がベトナムで開催されることになったのは、朝鮮戦争での休戦協定の締結の際を除き、朝鮮半島での利権から除外するために、同国と関係の悪い中国を極力会談から排除するためだ。
・もう一つの理由は文在寅政権が前のめりで統一に向かっているなかで、ライダイハンの問題を持ち出して同国の参加も排除するためだ。経済的に繁栄しているホーチミンではなく政治都市のハノイで開催されるのも、北から南を併合して統一することを宣言するためだ。


米大統領が段階的な非核化で制裁の部分的な解除に動くことも

 今週の最後に、来週27~28日にベトナム・ハノイで2回目の米朝首脳会談が開催されるので、その件について簡単に述べることにする。
 昨年6月12日にシンガポールで行われた1回目の首脳会談では、共同声明で朝鮮半島の完全な非核化が謳われた。しかし、その後の実務者協議では、米国側が完全な非核化の実現後に制裁の解除を主張したのに対し、北朝鮮側が段階的な非核化とその都度解除するように求めたことで、非核化の動きがまったく進んでいない。またそうした“表向き”の理由以外にも、北朝鮮に対する戦後賠償に加え、核放棄への支援金だけでなく経済復興を意図して韓国だけでなく日本が大規模な資金支援をすることになるが、拉致問題の“らちがあかず”、そのメドが立たないこともそこに隠れた大きな要因である。
 今回、2回目の首脳会談が決まった際には、多くの報道機関や有識者の間では米国側による“見切り発車”といった指摘をする向きが多かった。今回の会談では、ドナルド・トランプ大統領が段階的な非核化を受け入れるだけで部分的な制裁の解除に動く可能性が指摘されている。ロシアゲート事件に加えて、最近では35日間にわたる連邦政府の一部閉鎖をもたらしたことで不評を買っているなかで、トランプ大統領が支持率の回復を意図して外交的成果を上げることを望んでいるとされているからだ。


駐留米軍の費用負担の有効期限を1年にした意義について

 こうしたなか、日本や米国内の軍産複合体を中心とする勢力、韓国の保守層の間では、トランプ大統領が北朝鮮側に部分的な核放棄や、米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄を受け入れさせるだけで合意に動くことに警戒感を強めている。
 限定的に核関連施設を破壊して査察等の検証作業を行っても、それ以外の場所に隠れている核兵器を発見できるはずがなく、核製造技術を修得した技術者もそこに居残り続ける。またICBMが廃棄されても短中距離型ミサイルはそのまま温存されてしまい、周辺国は核の脅威から脱することが出来ないからだ。しかし、実はそれこそが、トランプ政権で主導権を握っている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的な米ナチズム系の権力者層の狙いなのである。
 トランプ政権が朝鮮半島の非核化に取り組もうとしているのは、在韓米軍を撤退させ、北部地域に地盤を固めてウラン鉱石はじめ豊富な地下資源の利権を握り、北側から半島を統一していくことを目論んでいるからだ。これに韓国の保守派が警戒しているのは当然であり、トランプ大統領が会談に先立って在韓米軍の撤退を否定して不安の払拭に努めたのもこのためである。
 とはいえ、トランプ政権は米軍の駐留費用に対する韓国側の負担として当初は倍増となる年間16億ドルを拠出するように求めたものの、結局25%増額の10億ドルで妥協した代わりに、その有効期間をこれまでの5年から1年に短縮させた。言うまでもなく、これは毎年、その費用負担の交渉をするたびに撤退が視野に入る状況になることを想定したものである。


北朝鮮で核兵器や短中距離型ミサイルが残ることが意図されている

 もとより北朝鮮のミサイルは日本の米軍基地ではなく、中国の人民解放軍の基地や西域の内陸部のミサイル及び核兵器の格納庫を照準にしており、その中国はこれまで通り北朝鮮の核ミサイルで狙われ続けることになる。
 それ以上に重要なのは、韓国から退いた後には沖縄からも米軍の撤退が視野に入るなかで、日本ではやがて北朝鮮の核兵器に対する脅威が高まることが予想されることだ。国内世論がそうした脅威を強めれば強めるほど防衛力の増強に、そして憲法改正に向けた勢力を後押しすることになる。

 これまで当欄で指摘してきたように、米ナチズム系の権力者層は世界各地の駐留米軍を徐々に撤退させ、属国群を独立させて“自前”の防衛力を強化させていこうとしている。そのうえで、そうした属国群と提携して「新冷戦」の相手である中国と対峙していくことで、それらの国々に兵器やその装備品等の輸出を伸ばすことで、国内で生産活動を活発化させながら財政及び貿易・経常赤字を減らしていこうとしている。東シナ海を挟む中国の隣国にして、世界でも群を抜く貯蓄超過国である日本はその最大の“御得意様”である。
 そうした観点では、トランプ政権の背後のナチズム系の権力者層や安倍晋三首相は、日本で北朝鮮の核の脅威が高まることで防衛力の増強や改憲に向けた動きが強まることを目論んでいる。だからこそ足元では、北朝鮮と“前のめり”で接近しようとしている親北的で左派的な文在寅(ムン・ジェイン)政権下の韓国と日本の関係が意図的に悪くなるように策動しているわけであり、こうしたことはこれまで、当欄で述べてきたことだ。


中国を参加させないためにベトナムで開催されることに

 そうしたなかで今回、米朝首脳会談がベトナムで、またその最大の経済都市であるホーチミンや米国との関係が深いダナンではなく、政治の中心である首都ハノイで開催されることになったのには、後述するようにそれなりの意味がある。

 そこでまず指摘すべきことは、ベトナムは従来から国境問題で、特に近年では南シナ海での領有権や漁業権を巡り中国と激しく対立していることだ。
 米ナチズム系の権力者層は在韓米軍を撤退させて北朝鮮に経済進出していくにあたり、平和条約の締結の前段階である朝鮮戦争の終戦宣言を出す必要があり、そのためには戦争の当事国である中国をそこに参加させることが不可欠だ。しかし経済進出していく際には、安倍政権の日本とウラジーミル・プーチン政権のロシアはそこに参加させて利権を分け与えても、「新冷戦」の相手である中国はそこから除外するつもりでいるという。そこで米ナチズム系の権力者層は終戦宣言を出す際の国際交渉では、習近平国家主席はじめ中国の代表団をそこに参加させても、それ以外の協議及び会談では極力参加させないで交渉を推進しようとしている。
 実際、今回の会談を前にして、米国側は実務協議で米朝2国間での不可侵宣言や平和宣言の採択を北朝鮮側に打診したとされているのも、中国の代表団の出席を必要とする終戦宣言を出す代わりに提唱されているものであることは容易に推測できることだ。だとすれば、中国と敵対しているベトナムで首脳会談を開催するのは誠に好都合なのである。


米国は韓国が協議に加わることも封じようとしている

 ベトナムで会談を行う利点はそれだけではない。昨年12月20日に能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、日本の海上自衛隊の哨戒機に対して韓国海軍の駆逐艦によるレーダー照射事件が起こったことでその信憑性が高まっているように、経済制裁を受けている北朝鮮に対して頻繁に「瀬取り」をして支援をしているなど、親北的な文在寅政権が前のめりで南北統一に向けて動いている。
 しかし、トランプ政権はナチズム系の権力者層の傀儡である金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を介して朝鮮半島北部の資源開発の利権を握ろうとしているので、そうした韓国側の動きに怒っており、習近平主席だけでなく文大統領が首脳会談に加わることも封じようとしている。


英保守派と提携しライダイハンの問題を宣伝して韓国側を牽制する

 「ミニ中華思想」的な韓国側は執拗に「東夷」に位置する日本側に従軍慰安婦問題での謝罪や賠償を求めているが、韓国と今回、首脳会談が開催されるベトナムとの間には「ライダイハン」の問題が横たわっている。ベトナム戦争に派遣された韓国軍兵士が現地のベトナム人女性を強姦して子供を産ませ、そうした子供たちが1973年1月のパリ協定により韓国軍が撤退し、その後の南ベトナム政府の崩壊により現地に取り残された問題のことだ。
 この問題については、中華思想的な観点から韓国人が「南蛮」のベトナム人を蔑視していることから韓国国内ではまったく問題視されていないが、昨年9月に英国の市民団体が支援組織を起ち上げた。その背景には、欧州連合(EU)からの離脱を推進している同国の保守派が、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を模索する姿勢を示しているなど、離脱後に日本への接近を望んでいることがあるようだ。年明け以降、この運動が高揚して国連に持ち込むことが要求され、それを英国放送協会(BBC)が報じたのも、その背景に米朝首脳会談の開催を控えていたことがあったと見て間違いない。


南部の経済都市でなく北部の政治都市での開催に大きな意義がある

 米ナチズム系の権力者層は日本の安倍政権の背後の右翼勢力とともに、豊富な地下資源に恵まれている朝鮮半島北部を地盤にして朝鮮半島を統一しようとしている。
 今回の首脳会談では北朝鮮の金正恩委員長に対し、経済成長路線に転じればこれほどの発展がもたらされる実例としてベトナムでの開催が決まったとされている。しかし、それならベトナムでも経済的に発展している南部地域で、それも最大の経済都市のホーチミンで開催した方が望ましいはずであるにもかかわらず、北部地域の政治都市のハノイで開催されることになった。
 それは、かつてのベトナム戦争で米国軍を撃退したことで、北側が南側を併合することで統一が実現した故事を利用して、今後の朝鮮半島情勢の展望を内外に示すことに隠れた意義があるわけである。


 今週はこれで終わりです。今週も御拝読いただき、ありがとうございました。
 来週もこれまでと同様に、週明け25日の月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込んでいただけると幸いです。
 また、筆者から直接お話をお聞きしたいようであれば、少人数での講演会でもお引き受けいたしますので、お申し付けいただければ幸甚です。
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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。