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FRBのバランスシート縮小措置の年内終了はそれほどハト派的でない

ポイント
・今回の議事要旨ではFRBの超過準備預金がピーク時から1兆2,000億ドル減ったとされており、それが総資産の減少分と等しいと思われるため、現時点での総資産は3兆3,000億ドル程度と思われる。
・FRBのバランスシートをどの程度の水準にまで縮小させるか、前、現議長はともに明示してこなかったが、概ねハト派は2兆5,000億~3兆ドル、ハト派は2兆~2兆5,000億ドル程度を想定していたと思われる。
・米コスモポリタン系の意向を受けていた際にはFRB執行部はタカ派路線から21~22年まで縮小措置を続ける姿勢を示したが、トランプ政権が中国との交渉をまとめ上げて北朝鮮問題に回帰しようとしていることで、ハト派路線から年内停止路線が標榜されている。


現在のFRBの総資産は3兆ドル台前半程度か

 ただ、バランスシートの縮小措置について、市場でやや誤解があるようなので述べておく。
 1月30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が終わった後の会見でジェローム・パウエル連邦準備理事会(FRB)議長が「想定より早く終了する」と述べている。そして今回、公表された議事要旨ではほとんどの委員が年内に終了するのが望ましいとの姿勢を見せていたので、市場ではその件についてはハト派的と受け止めているようだ。
 しかし結論から先に言えば、その件については確かにハト派的ではあるが、筆者は市場が受け止めているほどハト派的でもないと判断している。

 今回の議事要旨では、FRBの超過準備預金の規模がピーク時の2兆8,000億ドルから現在では1兆6,000億ドルと1兆2,000億ドル減ったとされている。これに法定準備預金を加えたものがFRBのバランスシート上での民間銀行に対する「負債」であり、これに相対比率としてはわずかな規模の資本金(その株主構成は欧州ロスチャイルド財閥やその米国での“大番頭”のモルガン財閥、米ロックフェラー財閥で握られている)を加えたものが「資産」の規模と一致するはずだ。
 FRBの総資産は08年9月のリーマン・ショック以前には9,000億ドル程度だったのが、巨大な金融危機を受けて3度にわたる強力な量的緩和策を推進し、国債や住宅ローン担保証券(MBS)を買い入れてきたことで、ピーク時には4兆5,000億ドル程度にまで膨らんだとされている。それから現在に至るまで、法定準備預金や資本金には変更がなかったはずなので、総資産はピーク時から超過準備預金の減額分だけ減っていることになる――すなわち、現在の総資産の規模は3兆3,000億ドル程度だということだ。


バランスシート縮小の水準と時期をめぐる動きについて

 問題はその総資産をどの程度の水準まで減らすかということであり、パウエル議長もジャネット・イエレン前議長もそれについては明確に指針を示してこなかった。おそらく、政策のフリーハンドを握り続け、またその不透明感を利用して中国はじめ米国に敵対する新興国を攻撃したり牽制するための手段として利用しようとしたのだろう。ただ、バランスシートの縮小措置が視野に入る時期でのFOMC委員の発言内容から推して、大雑把に言えばタカ派は2兆~2兆5,000億ドル、ハト派は2兆5,000億~3兆ドル程度を想定していたと思われる。
 以前、世界中の主要国・地域の中央銀行の金融施策を実質的に統轄、管理しているグループ・オブ・サーティ(G30)から送り込まれてFRB執行部で主導権を握っていたスタンレー・フィッシャー前副議長は前者を想定していたようだ。これに対し、巨大財閥系銀行の利害で動いているセントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は利上げを1回にとどめる一方でバランスシート縮小を積極的に推進することを主張しており、おそらく2兆ドル以下の水準にまで減らしていくことを望んでいたのではないか。それに対し、“本音”ではハト派的だったイエレン前議長は後者を望んでいたようであり、その“子分”のサンフランシスコ連銀のジョン・ウィリアムズ総裁(当時、現在はニューヨーク連銀総裁)がインフレ率の目標値を2%以上に引き上げることを主張していたのにそれが見て取れる。
 縮小措置が始まった当初、その終了は21年から22年にかけての時期といった見通しが流布されていたのは、中国はじめ新興大国を撃滅することで米国の世界覇権の維持を目指している親イスラエル左派的でリベラル的、社会主義的なコスモポリタン系の意向を受けていたフィッシャー前副議長の意向が強く反映されていたためである。ただ全体的には、ハト派的な3兆ドル以下の水準を想定した向きが多かったように思われる。


権力者層の路線転換で3兆ドル以下までの路線に回帰か

 そうしたなかで、ハト派的だったパウエル現議長(当時は理事)は後者の路線を支持していたと思われる。現議長はその地位に就くと、具体的に総資産をどの程度にまで縮小するか明示してこなかったが、それでも昨年12月18~19日のFOMCまでは「縮小計画を見直す必要はない」との姿勢を示し続けていた。パウエル議長はトランプ政権の背後で主導権を握っている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層の意向通りに動いていることを考えると、そうした姿勢は緩やかながらも段階的な利上げの推進路線とともに、貿易戦争を仕掛けている中国を牽制するための有力な手段として利用されてきたことが容易に推測できる。
 しかし年明け以降、そうした権力者層の意向が中国との貿易交渉をまとめる方向に傾き、それとともに外交政策の路線が朝鮮半島の非核化に回帰してきたのに伴ってハト派的な金融政策姿勢に転じてきた。そうしたなかでFRBのバランスシートの縮小についても、もとより優勢だった3兆ドルかそれを下回る水準までで打ち止めにするとの本来の路線が再浮上してきたようだ。

 今、FRBは毎月500億ドルのペースでバランスシートを縮小しており、年間で6,000億ドル減っていることになる。現状でFRBの総資産は3兆3,000億ドル程度にまで減っていると考えられるので、これから半年も縮小措置を続ければ当初、想定していた水準の上限に到達することになるわけだ。
 すなわち、年内にその措置を打ち切るというのは、それ自体はハト派的なものではあるが、冷静になって考えると言われているほどでもないということだ。


 明日、明後日は米中貿易問題をもう一度振り返ることにします。
 米中間で合意を目指している覚書の項目の中に、トランプ政権の背後の勢力が最も求めていたはずの国有企業への補助金支給問題が入っていないことに着目し、その背後事情を考察することにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。