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逆イールド化を強めるも米経済のリセッション入りはまだ先の話か

ポイント
・先週半ばにFOMCでのハト派的な姿勢が打ち出されたのを受けて、さらに週末のドイツを中心とする製造業PMIの発表を受けて長期金利が大きく低下し、逆イールド化を一段と強めており、これはリセッションを先取りしていると言えなくもない。
・ただし、80年代にはブラックマンデーを経て、また90年代にもロシア危機からLTCMの破綻による信用危機に見舞われたもののもう一度景気が浮揚していったように、今回も中央銀行が緩和策を推進することで、リセッション入りはまだ先の話になりそうだ。
・ここにきての世界経済の減速懸念の中心は中国経済が失速したことにあり、同国と関係性が強い国・地域ほど景気が悪化している。その背景には、中国経済が構造的に高成長を見込めなくなったこともあるが、FRBのタカ派的な金融政策姿勢も大きく影響している。
・ただし、トランプ政権で主導権を握っているナチズム系の権力者層は中国に仕掛けた貿易戦争を収束させるにあたり、FRBにハト派的な金融政策姿勢を推進させようとしており、中国株がかなり反発しているのに見られるように今夏頃から緩やかに回復していきそうだ。
・これまで、米国はリセッションに陥ると戦争を引き起こして軍需を創出させてきてきたが、トランプ政権が各地の駐留米軍を撤退させようとしているなかで、今度リセッションを迎える際には米軍が直接関与しないで大きな軍事衝突が引き起こされることになりそうだ。


リセッションの先取りを示唆する可能性のある逆イールド化の動き

 米連邦公開市場委員会(FOMC)でのハト派的な姿勢は、週末にリスク回避が強まったことから、特に債券市場では一段と注目を浴びている。特にドイツを筆頭とする欧州でのIHSマークイット社による製造業購買担当者景況指数(PMI)の悪化から安全資産である債券が買われるなど、先行き米経済が景気後退(リセッション)に陥るのを先取りする展開になっている。
 米長期金利は10年債利回りベースで先週前半には2.6%超の水準で推移していたが、20日にFOMCで打ち出されたハト派的な政策姿勢を受けて前日比0.09%近くも急低下し、さらに週末22日も製造業PMIの発表を受けてリスク回避が強まったことから同0.1%超とさらに大きく低下し、週明け25日も一段と低下したことから、2.4%すれすれの水準にまで一気に下がっている。その結果、先週前半の段階では連邦準備理事会(FRB)の金融政策姿勢を反映する3カ月物金利を下回っている中長期金利は5年債利回りだけであり、10年債利回りは上回っていたが、先週末の急低下を受けて10年債利回りまで下回ってしまい、イールドカーブの逆イールド化が一段と強まっている。
 長期金利がこれほど下がっているのは、将来的にFRBが利下げに動くことを織り込んでいると言える。そうした意味では、市場は将来的に中国や欧州だけでなく、米国でもリセッションに陥るのをはじめ不況感が強まるのを先取りしていると言えなくもない。


拡大局面後期に信用不安に陥っても金融緩和策から再浮上へ

 ただし、これまで当欄で述べてきたように、筆者はドイツはじめ欧州経済についてはともかくとしても、米経済についてはそれは時期尚早であり、今年半ばにかけての“踊り場”を経て、後半には“ダメ押し”ならぬ“ダメ上げ”局面が到来して再浮揚していくと見ている。
 例えば、80年代の景気拡大局面の後期では87年10月19日のブラックマンデーによる株価急落に見舞われたが、日本銀行(日銀)が超低金利政策を推進したことで日本経済がバブル化するとともに米経済も再浮上していき、本格的にリセッションに陥ったのは90年8月だった。
 その後のニューエコノミーバブルによる90年代の景気拡大局面では、98年8月のロシア危機が米金融市場にも波及して、秋頃には大手ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が破綻したことでいったん信用危機に見舞われた。しかし、「コンピューター2000年(Y2K)」問題を上手く煽って先進各国・地域の中央銀行に流動性供給策を推進させたことで再び株価が高騰していき、完全にバブルが崩壊してリセッションに陥ったのは01年4月だった。景気拡大期間は戦後最長となる120カ月に及んだものだ。
 現在の拡大局面はリーマン・ショックによる極端な景気の落ち込みを克服した09年6月から始まり、もうすぐ前回の拡大局面を抜いて戦後最長となるが、これは達成されるだろう。前回や前々回と同じように、今回も長期にわたる拡大局面の制度疲労を迎えて金融市場が動揺しても中央銀行が金融緩和策に転じることで、もう一度浮揚していくことが想定される。


世界経済減速の主因は中国経済の失速

 今回の場合、世界的に景気が減速しつつある主因は、FRBが量的緩和を含む超金融緩和策の出口に向かい、さらにその後もタカ派的な金融政策姿勢を推進したことから新興国経済が打撃を受け、特に中国経済が昨年には事実上、失速状態に陥ったからだ。
 先進国・地域では欧州経済が大きく落ち込んでいるが、それはそれにより中核国であるドイツの輸出が著しく落ち込んでいるのがその主因だ。日本経済も戦後最長の景気拡大になったといわれながらそれが“幻”になり、実は昨秋から後退局面に陥っている可能性が指摘されているが、その主因も高性能な部品や資本財を中心とする中国向け輸出の落ち込みによるものだ。アジアでは特に韓国経済が激しく落ち込んでいるのに見られるように、中国経済への依存度が高い国・地域ほど大きな打撃を受けている。
 中国経済が失速状態になるまでに沈滞しているのは、特に昨年終盤の輸出の激しい落ち込みは外国資本からの技術盗用(パクリ)による限界がここにきて一気に露呈した面もあるが、FRBの金融政策に大きな影響を受けているのは言うまでもないことだ。


米国の戦略によるFRBの政策姿勢に影響を受けてきた中国経済

 その背景には、世界覇権国としての米国の戦略が大きく影響している。
 バラク・オバマ前政権期には英国のフェビアン社会主義協会直系として、親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的なコスモポリタン系の“巣窟”であるグループ・オブ・サーティ(G30)が、米国の覇権の維持を目指す観点から中国はじめ新興大国を撃滅するためにFRBに意図的にタカ派的な金融政策姿勢を推進させていたものだ。13年5月にベン・バーナンキ議長が量的緩和策の縮小に向けて動くことを表明して以来、「バーナンキ・ショック」と呼ばれる新興国通貨不安や、中国でもシャドーバンキング(影の銀行)による信用不安が引き起こされたものだ。ジャネット・イエレン議長時代にも、G30幹部としてFRB執行部に送り込まれたスタンレー・フィッシャー副議長(いずれも当時)主導で意図的にタカ派的な政策が推進されたことで、15年8月11日の人民元切り下げを機に始まった中国不安がひとまず落ち着いた後も、翌16年初頭には第二次不安が引き起こされたものだ。
 現在のドナルド・トランプ政権に代わってからも、その背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層が中国に貿易戦争を仕掛けるにあたり、昨年後半にはジェローム・パウエル現議長にタカ派的な政策姿勢を推進させたことが、中国経済を深刻な状態に陥らせたのは言うまでもないことだ。


中国経済はFRBのハト派的姿勢に後押しされて今夏頃から回復へ

 米ナチズム系の権力者層は中国に仕掛けた貿易戦争を収束させるにあたり、これまで当欄で述べてきたように、昨年末にかけて戦略的にタカ派的な金融政策姿勢を推進させて中国主導で信用不安を強めていき、年明けからハト派的な姿勢に転じることで株価を反発させる路線で動いている。先週19~20日に開催されたFOMCで表明された政策姿勢も、そうした路線に沿って打ち出されたものである。
 中国政府は李克強主導で高速鉄道を再開するなど、これまで抑制していた公共インフラ事業を積極的に打ち出している。さらに今月5~15日に開催された全国人民代表大会(全人代)では税や社会保険料を2兆元引き下げ、状況によりさらに引き下げていく姿勢を打ち出す姿勢を示している。人民銀行も預金準備率だけでなく、政策金利も果敢に引き下げる姿勢を見せているが、言うまでもなくそうした種々の姿勢を打ち出せるのもFRBがハト派的な姿勢に転じたからである。
 おそらく、それにより中国経済は、輸出の落ち込みに見られる“パクリ経済”の限界やバブル経済の崩壊過程に入っているなど構造的な要因からそれほど高成長は見込めなくても、今夏頃から緩やかに回復過程に入っていくと予想できる。実際、中国の株価が政策当局の管理色が強く売り物が抑制されているとはいえ、年明け以降、かなり反発してきたのは、そうした実体経済の動きを先取りしていると言えるだろう。


リセッション時に軍需を創出するが次回は米軍が関与しない形に

 順当にいけば、87年10月のブラックマンデーによる株価暴落や98年秋の大手ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻から実際にリセッションが到来するまでの期間を考えると、次に米国経済がリセッションに陥るのは21~22年頃になると思われる。
 これまで米国でリセッションを迎えると、決まって中東をはじめとする地域で戦争を引き起こすことで軍需を創出させ、それを突破口にFRBが超金融緩和策を推進することで回復基調に乗っていったものだ。そうした意味では、先週21日にドナルド・トランプ大統領が「米国は(中東の)ゴラン高原をイスラエルの支配下にあることを認める時が来た」とツイッターに書き込んだのは、将来的にリセッションに陥った際の布石と言えるだろう。
 ただし、これまでは91年1月の湾岸戦争にしても、01年10月のアフガニスタン戦争や03年3月のイラク戦争にしても直接的に米軍が“悪の独裁政権”を攻撃したものだが、次回の戦争はそれとは様相を異にすることになるのだろう。親イスラエル右派的なナチズム系の権力者層の意向で動き、一般民衆の間でもキリスト教福音派の巨大な勢力を支持基盤とするトランプ政権はイランを軍事攻撃しようとするのだろうが、そこでは米軍が直接的に関与することにはなりそうもない。ナチズム系の権力者層は世界中に駐留している米軍を徐々に撤退させようとしており、イスラエルを保護する役割を担っている中東に駐留している部隊も例外ではないからだ。
 おそらく、シーア派大国であるイランに対し、“青二才”のムハンマド皇太子を操ることで、盟主サウジアラビアを中心とするスンニ派連合と対峙させることになるのは容易に推測が出来る。サウジは自前の軍隊を持たず、これまではエジプトやヨルダンからの兵士の供給に依存していたが、次回の「中東大戦」では「イスラム国(IS)」と激しく戦闘行為を繰り広げたクルド人の兵士がその役割の多くを担うことになりそうだ。


 明日からの2日間では米朝首脳会談で決裂したことを踏まえ、その理由とその背後の米国による北朝鮮に対する政策姿勢について考えることにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。