FC2ブログ

記事一覧

利下げまで織り込む米逆イールドの不自然な状態

ポイント
・最近、米国では長期金利を株価は順相関の関係で推移しているが、その主因はリスク選好が強まると債券売り・株式買い、リスク回避局面では債券買い・株売りの指示が出るように設定されたプログラム売買が行われているからだ。
・ここにきて利下げを織り込むほどまでに長期金利が低下して逆イールド化が進んでいるが、中国経済や欧州経済はともかく、米経済は足元では特殊要因から落ち込んでいるとはいえ趨勢的には潜在成長率並みで推移していると考えられるため、行き過ぎの感が強い。
・ただし、トランプ政権の背後の権力者層は多国籍企業やハイテク企業に打撃を与えようとしており、それに基づいてパウエルFRB議長も動いているため、トランプ大統領がFRBを攻撃することでリスク回避を強めているとの見方はあながち的外れではない。
・最近、株価が堅調に推移しているのは米中貿易協議に楽観的な見方が強まっていることがあるが、実際には構造問題や罰則規定の導入をめぐり両国間でかなり見解の相違があり、合意することは容易にではないため、楽観的な見方が剥落すると応分の修正安へ。


プログラム売買が拍車をかける長期金利と株価の順相関

 通常、金利が上がると株価が下がり、金利が下がると株高になるといった逆相関の関係にあるものだが、最近では特に長期金利と株価が順相関の関係を強めているところに大きな特徴がある。単純に考えれば、リスク選好が強まると債券が売られて長期金利が上昇しながら株価も上がるのに対し、リスク回避局面ではその反対の動きになるといった説明が出来る。ただより本質的に言えば、リスク選好が強まると債券売り(長期金利は上昇)・株式買い、リスク回避局面では債券買い(長期金利低下)・株式売りという指示を出すようにプログラム売買が組み込まれており、それに基づいて大量の資金が動いているからだ。
 ドナルド・トランプ米大統領やその周辺が連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続姿勢を批判してごく最近では利下げを求める発言をしているなど、FRBとの確執がリスク回避に拍車をかけているとの指摘が出ている。さらにそうした観点から、もとよりジェローム・パウエルFRB議長がトランプ大統領の背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層の意向で動いているだけに、大統領と議長による“猿芝居”で意図的に市場に不透明感を強めさせて株安を促進させているといった見方も聞かれる。
 ただ、そうした長期金利と株価の順相関の動きの真相は、市場参加者の間での直接的な要因としてはあくまでもプログラム売買によるものである。


利下げを織り込むまでに債券が買い進まれているのは非現実的

 先々週には週末22日に世界経済の減速懸念が高まる以前にも、その2日前の20日には連邦公開市場委員会(FOMC)で年内の利上げ停止見通しが示されるなどハト派的な姿勢が打ち出されたことから長期金利が急低下し、株価も下落した。その結果、5年債だけでなく10年債利回りも3カ月物利回りを下回って一段と逆イールド化が進んでおり、今や市場では利下げを織り込むまでに債券が買い進まれている。
 実際のところ、確かに中国経済は足元でやや良好な指標が出始めているとはいえ少なくとも2月までは失速状態にあり、その影響でドイツの輸出が激しく落ち込んでいることからユーロ圏経済もかなり減速しているものの、米国経済は利下げをしなければならないほど悪化しているわけではない。10-12月期の実質国内総生産(GDP)成長率の改定値が前期比年率で2.2%と速報値から下方修正されたが、これは特に12月に株価急落の影響を受けて家計の消費活動が増え込んだことによるものだ。足元の1-3月期については、正確性で定評があるアトランタ連銀が算出している「GDPナウ」が同1%超で低迷しているが、その主因は2月に強烈な寒波が襲来したことによるものだ。大型減税による押し上げ効果が剥落することで昨年半ば頃のような高成長は実現不可能だとしても、FRBが利上げ見送りやバランスシート縮小措置を終了させることで、今年後半には2%台の潜在成長率並みの成長軌道に回帰していくだろう。
 すなわち、債券相場が利下げを織り込むまでに買い進まれているのは行き過ぎの状態にあり、中長期的にはその修正が進むとともに株価が上昇しやすくなっていくだろう。


多国籍企業やGAFAに株安で圧力を強めるトランプ政権

 ただし、世界経済の減速懸念が米経済にも波及することで将来的な景気後退(リセッション)を織り込むほどまでに債券が買い進まれてきた背景には、何らかの作為的な要素が作用していておかしくない。
 以前、当欄で指摘したように、トランプ政権の背後のナチズム系の権力者層は中国沿海部をはじめ人件費の安価な地域に生産拠点を設けている多国籍企業に圧力を強め、その拠点を米国内に回帰させようとしている。特に国境を越えて不特定多数の顧客をつかんでいるアップルやグーグル、アマゾン、フェイスブックといった「GAFA」と称されるネット系ハイテク企業が昨年10月初旬までの株高傾向を牽引してきたが、そうした企業群を標的にして攻撃姿勢を強めている。
 そうした意味では、トランプ政権とパウエル議長が“阿吽の呼吸”で“猿芝居”を演じているとの謀略論的な視点での見方は決して的外れなものとはいえない。実際、ここにきてトランプ大統領が腹心のラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長とともに利下げを望む姿勢を見せているのも、そうした観点で見ると得心がいくものだ。


構造問題でまだ溝があり、楽観的な見通しの後退で株価は修正安に

 だとすれば最近、株価は米中貿易協議での楽観的な見方もあって底堅く推移しているが、短期的にはまだ底入れしていない公算が高い。
 そもそも米中協議自体、トランプ大統領を中心に先週は協議に参加していたスティーブン・ムニューシン財務長官が盛んにそれが進展しているなどと楽観的な見通しを喧伝しているが、実際には知的財産権の侵害問題や国有企業への補助金支給問題、ハイテク強国化政策「中国製造2025」の見直し等の構造問題については双方でまだかなりの溝があり、容易に合意できるものではない。外国資本への技術移転の強要問題については、中国側が先日に開催されていた全国人民代表大会(全人代)で外商投資法を成立させたが、実際にはそれは“抜け穴”だらけでほとんど実効性のないものだという。それだけに、米国側は合意事項を遵守しているか事後検証をしたうえでの罰則規定の導入を求めており、それに中国側が難色を示していることが伝えられている。
 こうした状況を見る限り、協議に対する楽観的な見通しが剥落するにつれて株価は応分の修正安の到来が避けられないはずだ。


 明日は米国の二大勢力がそれぞれ中国に要求していることが微妙に異なること、明後日は中国で国有企業改革が進まないことについての政治情勢からみた事情について、明後日の週末は汚職問題で共青団系の高官を陥れることに失敗するなど、習近平国家主席の権威が揺らいでいることについて考えます。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。