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先週のECB理事会について

・今回のECB理事会では金融政策の据え置きだけでなく資産購入プログラムの期限延長も見送られたが、ECB法の制約からやむを得なかったといえる。
・EU側がECBにより緩和的な政策を打ち出せるように制度の改善に取り組む必要があるが、銀行不安がくすぶるなかでそれは“待ったなし”である。



手詰まり感の強さが印象付けられる

 国際金融市況は米株式市場での9日の急落が気になるところだ。ダウは高値保合いを下放れつつあり、そうなると7月以降の保合い上放れから史上最高値を更新していったのが“ダマシ”になってしまうからだ。

 ただその前に、今回はまず8日に開催されたECB理事会について簡単に検証しておく。理事会では金融政策がすべて据え置きになっただけでなく、理事会後の会見でもマリオ・ドラギ総裁が「資産購入プログラムの延長を協議しなかった」と述べた。
 市場では何らかの政策措置を打ち出すことはできなくても、現行の量的緩和策の延長措置程度であれば打ち出すとの見方も出ていただけに、理事会後、および会見後には失望感からユーロ高が進んだ。

 今回の理事会の決定は非常に手詰まり感の強いものになったと評価できる。
 現行のECB法では、民間銀行がECBに預ける預金金利(付利金利)を下回る利回りの債券をECBが買うことができない。このため、ドイツを中心に財政状態が健全な北部加盟国の中期債以下の国債の多くは、その利回りが現行のマイナス0.4%の付利金利をも下回っているので、ECBは思うように購入できないのである。
 またそれだけに、ECBは同一銘柄の購入比率の上限を現時点では33%と定めているが、この比率を拡大してさらに多く買い入れることができるようにしても無意味である。

 7月21日に行われた前回の理事会では、6月23日に国民投票で英国が欧州連合(EU)からの離脱が決まったのを受けて、同国だけでなくユーロ圏でも景況感がかなり悪化したことから、次回の理事会では成長率の見通しを大幅に引き下げる姿勢を見せた。
 しかし、今回の理事会では、17年と18年の域内総生産(GDP)成長率の見通しを、それぞれ6月時点から0.1%だけ下方修正するにとどめた。大幅に修正すると何らかの緩和的な政策を打ち出さなければならなかっただけに、やむを得ない措置だったといえる。


EU側に対処を促す

 市場では、ドラギ総裁が資産購入プログラムの延長についての協議をしなかったことが嫌気されたとされている。しかし、もとよりECB法による制約からできるわけがないので、協議をするはずがなかったといえる。
 いわば、市場がせめて期限の延長程度であれば決まるとの期待を強めていたのは、それに関与した参加者が実情を知らなかったということだ。

 また、ECBがそれ以外の緩和策を決めるのであれば、付利金利を一段と引き下げることでマイナス幅をさらに拡大させることであれば“技術的”に可能だったはずだが、それは銀行の財務内容をよけいに痛めつけることになる。
 イタリアをはじめとして、大きなところではドイツ銀行の経営不安の噂がくすぶっているなかで、ECBがそうした政策を採用できるわけがないのはいうまでもないことだ。

 ドラギ総裁は会見で、ユーロ圏経済の「基本的なシナリオは下方リスクにさらわれている」として、「責務に沿ってすべての措置を利用する用意はできている」と述べた。しかし、現状ではECB法による制約からECBとしてはどうにも措置を打ち出すことができないので、この発言は実質的にはEU側に法律の変更か何らかの時限立法を決めるように促したものということができる。
 欧州では慢性的に不況が続いてデフレ圧力が増しているだけでなく、「ドイツ銀行が破綻する」といった噂が流れているように多くの銀行の財務内容が脆弱な状態にあるだけに、制度の改善は“待ったなし”の状況である。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。