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先週の動き・・・・米国の対中国への制裁関税の引き上げから株価が急落

ポイント
・米政府が中国からの2,000億ドル分の輸入についての関税を25%に引き上げる方針を示したことでリスク回避が強まり、株価が急落した。先週も米中間で協議が行われるなど楽観的な見方からやや反発する局面もあったが、10日の正式発動を控え一段安になった。
・外為市場ではリスク回避から円高気味の展開になった一方で、ユーロ・ドル相場も週初にはユーロ安による要因に阻まれたが、週末にはドル安圧力が優って上昇した。


 先週の国際金融市況は米政府による中国製品の関税引き上げの決定からリスク回避が強まり、株価が急落した。

 米国株は週末6日には、前日にドナルド・トランプ米大統領が2,000億ドル分の中国製品の関税を10日から現在の10%から25%に引き上げると表明したことから、中国株が暴落したのをはじめ世界的にリスク回避が強まったのを受けて軟弱な動きになった。ダウは前週末比で一時471ドル安に、ナスダックも同182ポイント下げたが、先週も中国の劉鶴副首相が訪米して貿易協議が行われることになったことから買い戻しが進んでいき、それぞれ同66ドル安、同40ポイント安にまで下げ幅を縮小した。しかし、翌7日にはロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表やスティーブン・ムニューシン財務長官も25%への関税引き上げを確認したことから欧州株が全面安になったのを受けて軟弱な地合いに回帰し、ダウは前日比473ドル安に、ナスダックも同158ポイント安に急落した。8日にはトランプ大統領が貿易協議で中国が合意を望んでいることを明らかにしたことから当初は反発したが、その後米USTRが10日に中国製品の制裁関税の引き上げを正式に申請し、中国側も対抗措置を取る方針を示したことから再び下げていき、ダウは同2ドル高にとどまってナスダックは同20ポイント安と続落した。
 9日も米中貿易摩擦が嫌気されてアジア株や欧州株が全面安になったことから軟弱な地合いが続いたが、その後中国の習近平国家主席がトランプ大統領に書簡を送ったことが明らかになったことで悲観的なムードが後退し、ダウは同138ドル安に、ナスダックも同32ポイント安まで下げ幅を縮小した。週末10日には実際に25%の関税引き上げが発動されたことからダウは一時同358ドル安に、ナスダックも同157ポイント安まで下げたが、その後9~10日に行われた米中通商協議について、トランプ大統領、ムニューシン財務長官、劉鶴副首相がいずれも「建設的だった」と評価したことから急反発していき、ダウは同114ドル高に、ナスダックも同6ポイント高と高値引けした。
 この結果、先週1週間でダウは562ドル、ナスダックも247ポイント下落した。かなり下げ圧力が強まったが、下値では買い戻しが根強く出たので、リスク回避が相当に強まった割に下げ幅は抑制されたとも言えるだろう。

 日本株は10連休明けの週初7日には米国側による中国製品への追加関税の発動を控えた米中貿易摩擦の激化から軟弱な動きになったが、米国株の引け味が良かったことから前日に中国株が暴落したほどには下がらず、日経平均は前々週末比335円安にとどまった。しかし、翌8日には米国の主要閣僚も関税引き上げを明言したことで米国株が急落したことを受けて軟弱な地合いが続き、前日比321円安になった。9日もアジア・欧州株の全面安を受けて為替が円高に振れたことも嫌気されて同200円安になった。週末10日には買い戻しが先行して上昇する場面も見られ、同180円超ほど上げたが、同日には実際に関税が引き上げられるのを直前に控えて引け間際に再び売り込まれる展開になり、同57円安で越週した。日経平均は先週の連休明けの4日間の取引で900円以上も下げた。

 外国為替市場では米中貿易摩擦の激化によるリスク回避から円高気味に推移し、また週末には対ユーロでもドル安に振れた。

 ドル・円相場は東京市場の休場が続いていた週初6日の東京時間では、トランプ大統領が対中制裁関税の引き上げを表明したことを受けて中国株が暴落したなか、リスク回避から円高圧力が強まり、1ドル=110円30銭割れまで下げた。ただ、ニューヨーク市場の終盤では米国株がかなり下げ幅を縮小したことからいったん反発していき、翌7日の東京市場では110円80銭台まで戻した。その後、他の主要米閣僚も10日に関税引き上げを明言したことから再び弱含んだ後、翌8日には米USTRが10日からの関税引き上げを正式に申請し、中国側もそれに対抗措置を取る姿勢を示したことから地合いが悪化して110円を割り、9日の東京市場では109円60銭まで下げた。週末10日には株式市場で利食いの買い戻しの動きが先行する場面が目についたこともあっていったん下げ止まった後、ニューヨーク市場では関税引き上げが間近に迫ったことで109円50銭割れに軟化したが、米中間の閣僚協議が「建設的だった」とされたことで下げ止まった。

 ユーロ・ドル相場は週初6日にはIHSマークイット社によるユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)の改定値が上方修正され、小売売上高も事前予想を上回ったことから1ユーロ=1.12ドル台に強含んだ。しかし、7日にはドイツの製造業受注が低調だったことや、欧州連合(EU)の欧州委員会が19年のドイツの経済成長率見通しを下方修正したことからユーロ安圧力が強まり、ニューヨーク市場では1.117ドル割れまで下げた。8日には動意薄の展開が続いた後、9日のニューヨーク市場では米中貿易摩擦によるドル安圧力から1.125ドル台まで上昇した。週末10日にはいったん下押した後、ニューヨーク市場では実際に関税が引き上げられたことでドル安圧力が再燃してもう一度1.125ドル台まで上昇したが、同日まで2日間にわたり開催されていた米中貿易協議について、両国ともに好意的な評価を見せたことから上昇力が止まった。


異市場間のダイバージェンシーの恐れも

 米株式市場ではトランプ大統領が関税引き上げを表明することでリスク回避が強まる以前の前週末3日にかけて、ナスダックはザラバで昨年10月1日の8,107ポイントの史上最高値を超えていたが、ダウはその2日後の2万6,951ドルの最高値を超えずに崩れてしまった。そのため、リスク回避の動きが一巡して上昇傾向に回帰していき、ダウも最高値を超えないと「異市場間のダイバージェンシー」になってしまい、しばらくの間は下降基調で推移するのを余儀なくされることになる。
 先週末の引け味が良かっただけに、現時点では本来の上昇波動に回帰していくと言えなくもない。ただし、トランプ大統領は第3弾となる2,000億ドル分を対象とする関税引き上げに続き、中国側の報復措置を踏まえて、現在では制裁を科していない残りの3,250億ドル分にも適用するように指示を出したのを受けてUSTRが具体的な手続きに入っており、13日にその詳細を公表するとしている。その公表を受けて一段安に向かうのか、それとも一時的に一段安になってもそれで“悪目”を出し尽くすことになるのか、見極めたいところだ。


 今週はやはり米政府による対中制裁関税の発動について取り上げることにします。
 どうしてここにきて急激にトランプ政権が中国に対して強硬姿勢に転じることになったかについては、既に日本経済新聞がそれなりにその内部事情を報じています。ただ、当欄では政権の背後の権力者層とそれに対立する勢力による利害関係や思惑、さらに中国側の勢力争いとの複雑に絡み合った関係について考察していきます。
 今週もよろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。