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日本に求められている国防費の増額と基本給の大幅引き上げ

ポイント
・トランプ大統領が訪日して日米首脳会談で安倍首相がF35戦闘機を105機購入することになったのは、自動車の輸出自主規制や数量規制を受け入れるのを避けるためはなく、将来的に米軍が撤退して中国と軍事的に対峙していくなかで日本の軍事力を増強するためだ。
・トランプ政権が日本に対しても保護主義的な政策を推進すれば直接的には日本の自動車産業が打撃を受けるが、中国やメキシコに対して関税が引き上げられていくことで、これらの国々に部品や資本財を輸出している他の大企業製造業も打撃を受けている。
・米国が「世界の一大需要基地」としての役割を放棄していけば、世界経済成長を維持するには日本とドイツが内需を浮揚させる必要がある。日本では大企業が内部留保を取り崩し、賞与ではなく恒常的な賃金引き上げにつながる基本給を大幅に引き上げる必要がある。
・安倍政権が日本で消費社会の構築に向けて構造改革を推進しようとしても、財界を有力な支持基盤としているだけに難しいところがあり、トランプ政権が日本に貿易問題で圧力を強めることで「外圧」を提供し、その援護射撃をしていこうとしている。




日本政府によるF35戦闘機の100機以上の購入は日本の軍事力の強化

 そうしたなかで、ドナルド・トランプ米政権の背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層は、日本に軍事力の増強と内需の浮揚によるデフレ経済状態の克服を求めている。アジア極東でも韓国から、それに続いて沖縄からも米軍を撤退させようとしている一方で、「悪の帝国」中国を“悪者扱い”して「新冷戦」体制を構築していくには、平和憲法の改正とともに日本の軍事力を強化させていき、いずれは核保有国にさせる必要があるからだ。
 今回、トランプ大統領が国賓待遇で訪日して27日に行われた日米首脳会談では、日本側がF35戦闘機を105機も購入することになった。それはトランプ大統領が対日貿易赤字の縮小を要求しているなかで、自動車の輸出自主規制や数量制限を回避しながらそれを実現するための最も手っ取り早い手段であるといった解釈が識者の間で一般的になっているが、見当違いも甚だしいと言わざるを得ない。戦後、70年以上にわたり世界覇権国である米国から「属国」統治を受けてきただけに、多くの官僚群をはじめとするエリート階層や知識人は長期にわたり洗脳され続け、そうした思考概念から脱却できないのでそのような考え方しか思い浮かばないのである。
 実際には、かなり以前から安倍晋三首相率いる官邸は事実上、自動車の自主規制を受け入れている。仏ルノー及びその背後のフランス政府の影響力が強い日産自動車を除き、トヨタ自動車や本田技研工業(ホンダ)といった日本の主力自動車メーカーは官邸の圧力を受けて、米国内での大規模な生産工場の移転計画に動いている。F35戦闘機を100機以上も購入する主目的は、あくまでも日本の軍事力を強化することであり、米国の援護射撃の下に中国のそれと対峙していくためのものである。


米保護主義的な政策で日本の多くの大企業製造業が打撃を受けている

 自動車部産業が直接的に米国に輸出するだけでなく、部品や資本財を中国やメキシコに輸出してそこで自動車を生産し、完成車を米国に輸出する生産体制が破壊されてしまえば、日本経済や日本の雇用には大きな打撃がもたらされてしまう。
 もっとも、日本の貿易収支は自動車の対米輸出が多いために対米黒字は大きいが、全体的には輸入原油価格が低水準の時には黒字になり、反対にそれが高水準だと赤字になるといった状態であり、その限りでは決して貿易大国もしくは製造業大国であるとは言えないことになる。それでも第一次所得収支が巨額な黒字になっているので、日本は依然として世界有数の経常黒字国の地位を維持している。所得収支の黒字が極めて大きいのは、日本の高性能な資本財や極細な部品の供給を受けた大企業製造業の海外子会社が売り上げを伸ばし、それが蓄積された内部留保を主に米金融市場で運用している金融機関が高収益を計上しているからだ。
 日本の輸出大企業が高収益を計上しても、経営者が内部留保を貯め込むだけで社員に基本給を引き上げることで還元してこなかったため、日本では内需が浮揚せずに慢性的なデフレ状態から脱することが出来ない一方で、米金融市場に潤沢な資金流入が担保されてきたことで、米国では多くの人たちが借金を重ねて消費社会を謳歌してきた。しかし、08年9月にリーマン・ショックによる巨大な金融危機に見舞われたことで、これまでのような多国籍企業主導によるグローバル生産体制が機能しなくなってきた。トランプ政権がそうした体制を崩壊させようとしてさらに高関税の導入による保護主義的な通商政策を推進していることで、そうした生産体制の崩壊に拍車がかかっている。
 そうしたなかで、日本の大企業製造業としてはトランプ政権の保護主義的な政策で直接的に打撃を受けるのは自動車産業だけだとしても、中国やメキシコに対しても高関税を導入されることで、部品や資本財の輸出も打撃を受けている。実際、昨秋以降に日本経済が落ち込んでいる最大の原因は、中国向けの部品や資本財の輸出が落ち込んでいることによるものだ。


日本の大企業には基本給の大幅な引き上げが求められている

 米国の世界覇権が絶頂期を過ぎて斜陽期に転じており、同国がこれまでのような「世界の一大需要基地」としての役割を放棄していくなかで、将来的な覇権国である中国で内陸部の農民戸籍保有者の購買力が依然として脆弱ななかでは、日本とドイツが内需を浮揚させなければ世界経済成長が停滞してしまう。ドイツでは政府が財政支出を大幅に拡大させる必要があり、米軍が欧州からも撤退していくことで北大西洋条約機構(NATO)体制が崩壊に向かうなかでロシアの軍事的脅威が一段と増していく状況では、国内世論は依然として反対機運が強いが、いずれ大幅な国防費の増額が不可欠である。
 一方、日本ではこれまでのところ、政府が国防予算を積極的に増額しているが、なにより大企業が内部留保を取り崩して社員に支払う賃金を大幅に増額することが不可欠である。それも恒常的に消費社会を構築していくには、業績が良い時にだけ賞与(ボーナス)を多く支給するのではなく、基本給を抜本的に引き上げなければ家計の消費性向が上向くはずがない。今、日本で本当に求められている政策は内部留保に課税することであり、それが財産権の概念に抵触するので難しいのであれば(ただし、資本効率が重視されている米国では資産を“寝かせている”ことに対する罰則規定としてこうした制度が導入されており、日本の財界の主張は無理がある)、基本給の引き上げが基準以下の水準にとどまっている大企業には法人税率を引き上げることだ。ところが、財界を有力な支持基盤としている安倍政権にそれを実行させるのは難しいため、米ナチズム系の権力者層がトランプ政権を利用して日本にも保護主義的な通商政策を仕掛けることで「外圧」を提供し、安倍政権に改革に取り組みやすい環境を提供しようとしているのである。
 そうした外圧を提供することで構造改革の推進を支援していくという観点では、中国に対する保護主義的な政策と本質的には同じものと言えるわけだ。こうしたこともこれまで、本欄で述べてきたことだが、重要なことなのでもう一度指摘することにする。トランプ大統領が訪日して安倍首相とかなり長時間にわたり綿密に説明と打ち合わせをしたうえでメキシコへの追加関税の導入に動いたのは、こうしたシナリオに沿ったものと考えれば得心がいくだろう。


 今週は1日多く、明日も掲載します。
 明日もこの続きとして、もう一つの重要なテーマである消費増税を巡る動向について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。