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米軍のサウジ駐留の再開が意味するもの

ポイント
・米軍がサウジアラビアに駐留して王室政府を守る代わりに原油の安定的な供給とその取引には恒久的に米ドル建てで決済することが取り決められ、その基盤のうえに金と米ドルの兌換が停止されることになった。
・サウジでは非スデイリ系のアブドラ国王による反米的な姿勢もあってイラク戦争後に米軍が離れたが、サルマン現国王の即位とともにスデイリ系が復権してムハンマド皇太子が実権を握ったことで今回、16年ぶりに同国に米軍が駐留することになった。
・それは軍産複合体に代表されるコスモポリタン系には望ましく、一見したところ、トランプ大統領やその背後のナチズム系の権力者層の路線に逆行することだが、イランと同国を戦わせようとしているのならその意味が読めてくる。



注目されるサウジでの米軍駐留の再開

 今回のイランをめぐる軍事的緊張状態の高まりにおいて、米政府が提唱している有志連合とともに注目されるのが、イラク戦争があった03年以来、16年ぶりにサウジアラビアに米軍が駐留することになったことだ。イランとの軍事的緊張の高まりを受けて1,500人もの米軍が覇権されたのに続き、6月にはさらに1,000人もの兵士が増派されており、その一部が駐留することになると見られている。


スデイリ系が主導権を回復し米軍の駐留復帰が決まる

 サウジでは、1945年2月に第二次世界大戦の終結を間近に控えていたヤルタ会談の直後に、フランクリン・ルーズヴェルト米大統領と同国のアブドゥル・アジズ初代国王が会談した際に、ダーランに米軍の空軍基地を建設して駐屯するのと引き換えに王室政府を守る極秘の取り決めが行われた。その後ドワイト・アイゼンハワー政権下では、サウジに深く進出して子会社のアラムコ(後に王室政府が接収して国営化)を設立したソーカル(後のシェブロン)のオーナーだったネルソン・ロックフェラー(後にジェラルド・フォード政権で副大統領)の後見人だったジョン・フォスター・ダレス国務長官がこの秘密協定をさらに拡充させて、原油の安定的な供給と原油取引の恒久的な米ドル建て決済が取り決められたのである(「ワシントン・リヤド密約」)。その基盤の上に、リチャード・ニクソン政権下でダレス元長官の後継者であるヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官(後にフォード政権で国務長官)が、ジョン・コナリー財務長官(いずれも当時)を動かして71年8月15日に金・ドル兌換の停止を実現したのである。
 いずれにせよ、それによりサウジには米軍が駐留し続け、自前の軍隊を持っていなかった王室政府を防衛していた。しかし、スデイリ系出身で第5代ファハド国王が、80年代に新保守主義(ネオコン)派主導のロナルド・レーガン米政権に接近し過ぎた反動で、非スデイリ系の第6代アブドラ国王が米軍の排除に動いた。当時、イラク戦争により中東が混乱してイスラム原理主義勢力が台頭し、メッカやメディナの二大聖地を抱えるサウジ国内でもそうした動きが活発になり、米軍と密接な関係にある王室政府が標的にされやすくなっていたといった事情もあった。ところが、第7代サルマン現国王が即位してスデイリ系が復権し、子息のムハンマド皇太子が実権を握ると米国との関係が好転し、今回の米軍の駐留復帰が決まったのである。


ナチズム系がサウジ駐留の再開を決めた真の目論見とは?

 問題なのは、米軍がサウジに駐留するのは米国では軍産複合体やそれに属している石油メジャーといった親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的なコスモポリタン系の勢力には望ましいたことだが、ドナルド・トランプ大統領やその背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層が推進している路線とは逆行することだ。ただ、この勢力は米軍が直接的にイランと戦闘行為を行うのではなく、サウジと戦わせようとしているのなら、同国に米軍が駐留する意味が読めてくるというものだ。


 明日からの2日間では、日本政府による韓国向け輸出規制の強化措置について、最近生じている注目すべき要因について見ていきます。
 まず明日は半導体メモリーの生産の主役を韓国勢から中国勢に交代させようとしていることについて見ていきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。