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日韓対立をめぐる北朝鮮の日本への批判とその背後にあるもの

ポイント
・北朝鮮は日韓間の対立が強まるなかで静観姿勢を見せていたが、日本政府が対韓輸出規制の強化に動くと日本への批判を強めており、連日、辛辣な表現を用いて批判を繰り広げている。
・6カ国協議の首脳の中でまだ北朝鮮と首脳会談を行っていないのは日本だけになったが、非核化や統一、経済開発支援には巨額の資金が必要になるので、他の4カ国首脳は日朝首脳会談の開催を支持している。
・にもかかわらず、北朝鮮が今回、強硬な姿勢に出たのは拉致問題の解決に動くと困る事情があることを示唆しており、そこには金正委員長の出生の秘密が絡んでいる可能性がある。
・北朝鮮側がなかなか拉致問題の解決に向けて動こうとしないなかで、米トランプ政権は“業を煮やして”核兵器の凍結やICBMの廃棄だけで合意に動くことを探っており、多くの日本人はそれに怒っても、防衛力の強化や核保有を目指す勢力には好都合である。



静観していた北朝鮮が日本への批判を強める

 日本政府による韓国向け輸出規制強化の動きについて、ごく最近の現象としてもう一つ注目されるのが、これまで日韓間の抗争を静観していた北朝鮮が韓国を援護して日本を非難していることであり、19日も「千年来の敵」などと辛辣な表現を用いていたものだ。日本政府が規制強化に動いた背景には、軍事転用できる物資が必要とされる量を大幅に上回って輸出されて仕向け先が不明になっており、経済産業省が検査官を韓国に派遣しようとしても拒否されていたなかで、その多くが北朝鮮に流れていた疑いが出ていたことがあった。今回、北朝鮮政府はそれに反発したのだが、その後日本政府が公式に「北朝鮮向け横流し説」を否定したものの、一向に収まる気配がない。
 北朝鮮が批判している本当の理由は、徴用工その他の件で日本側に巨額の賠償金を支払わせることで、自分たちも多くの資金を得ようといった目論みがあっておかしくない。北朝鮮はまだ日本と国交を結んでおらず、植民地支配に対する賠償金を受け取っていないので、そうしたことを考えておかしくない(ただし、本当は日韓請求権協定で北朝鮮に支払う分もまとめて当時の韓国政府が受け取っており、朝鮮半島の統一が達成された時点で渡すことになっていたはずなのだが)。


他の首脳も賛同している日朝首脳会談の開催

 いずれにせよ、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長は韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領、米国のドナルド・トランプ大統領、中国の習近平国家主席、そして最後にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と6カ国協議の構成国と相次いで首脳会談を行ったが、まだ日本の安倍晋三首相とは実施されていない。安倍首相はトランプ大統領と相談し、プーチン大統領や習主席の了解も得たうえで、とりあえず日本人拉致問題を前面に出さずに「前提条件なし」で金委員長との会談の実施に意欲を見せていたが、それが遠のくことになりかねないわけだ。
 おそらく、日本側は日朝首脳会談の実施に向けてすぐに「北朝鮮への横流し説」を否定したのだろうが、北朝鮮側がそれでも辛辣な言葉で非難を繰り返しているあたり、それを実施したくない事情があるのだろう。拉致問題の解決や日本との首脳会談の実施については他の4カ国の首脳も賛同しており、朝鮮半島の非核化や統一、さらには北側での経済開発に向けて是非とも日本側が巨額の資金拠出を行うことが望まれているので、それは当然である。
 実際、2月27~28日にベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、非核化だけでなく拉致問題もかなり長い時間にわたり取り上げられたとされている。そこでは、トランプ大統領が拉致問題の解決に向けて説得したところ金正恩委員長も納得し、いずれ安倍首相と会うことも念頭に入れていると答えたとされている。また4月25日のロシア・ウラジオストクでのロ朝首脳会談でも、プーチン大統領が拉致問題の解決に向けて金委員長を説得したうえで、日米両首脳にそれを報告したという。それにより翌26日に安倍首相が訪米してワシントンで日米首脳会談が行われ、それを受けて首相が「前提条件なし」で日朝首脳会談の開催に動くことになったのである。
 にもかかわらず今回、北朝鮮側は日本政府による対韓輸出規制強化措置に対して激しい批判を行ったわけだ。


どうしても拉致問題を解決できない事情がある?

 おそらく、その背景には安倍首相と首脳会談ができない理由が――すなわち、どうしても拉致問題を解決できない事情が金正恩委員長側にはあるのだろう。それは被害者の中でも最も代表的な女性を対象に、金委員長の出生の秘密が絡んでいるのかもしれない。
 いずれにせよ、親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的な米ナチズム系の権力者層はいつまで経っても拉致問題が解決するメドが立たないなかで、“業を煮やして”密かに非核化に向けて動き出している。6月28~29日に大阪で主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の開催後にトランプ大統領が訪韓し、翌30日に板門店(パンムンジョム)で事実上の3回目の米朝首脳会談が行われたのを機に、水面下で北朝鮮の外交官が米国を往来するようになっている。
 それにより、最終的には核開発を凍結するだけで既存の核兵器が温存され、また米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけが廃棄されて中短距離ミサイルが温存された状態で合意することになりかねない。多くの日本人はそれに激怒するだろうが、韓国から撤退した後に沖縄からも米軍が退こうとしているなかで、核ミサイルの脅威が増すのは安倍首相としては軍事力の強化や核兵器の保有に向けて、ある意味では望ましいものなのだろう。


 今週はこれで終わりです。今回も御拝読いただき、有難うございました。
 来週も週明け29日の月曜日から掲載していくので、よろしくお願いします。
 何かありましたら書き込んでいただければ幸いです。
 また、筆者から直接お話をお聞きしたいようであれば、御連絡いただきますよう、お願い申し上げます。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。