FC2ブログ

記事一覧

米欧財閥と中国との間に介在する米系大手投資銀行

ポイント
・今回、トランプ大統領が急激に中国に強硬姿勢を見せたことで米中間の対立が強まったが、FOMCが終わった翌日に追加制裁関税の発動を表明し、それに対抗して中国側も人民元の下落容認に動くあたり、いかにも当初の計画通りに動いていた印象が拭えない。
・トランプ政権はEUと並んで中国が意図的に自国通貨を切り下げていると批判しているが、人民元安が進んでいるのはあくまでも資本流出圧力が強まっているからであり、意図的に切り下げているわけではない。
・最近、リスク回避が強まるとともに米債券市場では逆イールド化が進んでいるなかで、米国経済は依然として潜在成長率を上回っていてリセッションの可能性を考える状況にはなく、いかにも不自然であり作為的な動きがある可能性も。
・誰が米長期債を買い進んでいるかというと、一つは中国勢を中心とする新興国勢だ。特に中国では習近平政権が成立して「虎刈り」による汚職腐敗撲滅運動が推進されたことで、江沢民派が蓄財した資産を米市場で運用していることが多く、米系大手投資銀行が介在も。
・ただそこでは、米系財閥の本流と欧州系財閥の親米的な勢力が提携することで米国の覇権の絶頂期に現出したグローバル生産体制を構築するにあたり、この米系投資銀行が中国沿海部の生産拠点を提供した江沢民派とともに結び付けていたことを指摘する必要がある。



一連の動きは当初の計画通りのものか?

 今回の一連のドナルド・トランプ政権の強硬姿勢を背景とする米中間の対立の激化を見ていて指摘すべきことは、一つには米国側を中心に両国の動きが早く、いかにも当初の計画通りに動いていた印象を拭えないことだ。
 連邦公開市場委員会(FOMC)が終わった翌日に制裁関税の発動が表明されただけでなく、週明けには中国政府が国有企業に米国からの輸入を停止させて人民銀行も元相場が急落するのを容認し、重要な節目とされていた1ドル=7元台に乗せた時点で米国側は為替操作国に指定した。通常、米財務省は毎年4月と10月に発行する為替報告書で監視国やその条件及び評価を指摘しているが、それほど重要なことを決定するにはそれに先立って何らかの前段的な動きがあるのが自然な姿であるにもかかわらず、いかにも唐突な感がしないでもない。


中国は意図的に人民元を切り下げているわけではない

 さらにいえば、トランプ大統領は欧州連合(EU)と並んで中国を意図的に自国通貨を下げていると批判しているが、それは欧州中央銀行(ECB)の金融政策には該当しても(いうまでもなく、本当は日本銀行(日銀)の政策でもいえることだが、大統領はあえて日本をそこに含めていない)、中国にはまったく当てはまらない。人民元相場が下がっているのはあくまでも米金融市場でリスク回避が強まることで資本流出圧力に見舞われているからであり、意図的に元相場を切り下げているわけではない。
 中国では外貨準備が公式では3兆1,000億ドルほどあることになっているが、実際には緊急時に利用できるのは1兆ドルほどしかないといった指摘が聞かれる。そうしたなかで、人民銀行はいかに外貨準備を取り崩さないで元相場の下げ圧力を吸収して安定させるかに腐心している。中国では国有企業を中心に簿外で巨額なドル建て対外債務を抱えており、元安が進むと実質的な返済負担が激増して“借金で首が回らない”状態になりかねないからだ。


逆イールド化は不自然であり作為的な動きも?

 ところで、最近の米金融市況の動きで注目されるのが、株価が急落しただけでなく、長期金利が一段と急落して逆イールド化が進んでいることだ。株安とともに安全資産である長期債が買い進まれているのは、リスク回避が進むことでリスク資産が売られて安全資産が買われていると単純に考えることは可能である。
 ただ気になるのは、逆イールド状態が鮮明になるのは景気後退(リセッション)を先取りしたものといわれているものの、少なくとも足元の米国経済は趨勢的に潜在成長率を上回っており、まだそうした状態を織り込むには時期尚早であることだ。中国との貿易戦争が高まると悲観的な雰囲気が強まる傾向にあるが、これまで打ち出されてきた高関税政策の弊害もあって確かにそれにより企業景況感が停滞して設備投資が低調であるとはいえ、米国の国内総生産(GDP)の7割ほどを占めている家計部門の個人消費にはほとんど悪影響をもたらしていない。ごく最近、打ち出された第4弾の制裁関税については、確かにスマートフォンのように中国以外の代替的な輸入先にシフトするのが難しいものが含まれているが、追加関税が10%にとどまることもあり、少なくともリセッションの可能性を考えるほど大きな影響をもたらすこともあり得ない。
 この逆イールド化の動きはいかにも不自然であり、何らかの作為的な動きがあることを疑わずにおかないものだ。


江沢民派が米金融市場で運用しゴールドマンが支援

 では誰が米長期国債を買い進んでいるのかというと、最も可能性が高いのが中国勢を中心とする新興国勢の投資家が資金を米国にシフトしている構図が浮かび上がる。リスク選好が強い状況であればこうした資金は株式市場や不動産市場に流れるが、リスク回避が強まっていることから安全資産である米国債に向かっているわけだ。特に中国では以前から江沢民元国家主席を中心とする勢力や、共産党幹部の子弟群である「太子党」の勢力が“汚職まみれ”で蓄財した資産を海外に逃避させ、米金融市場や不動産市場で運用してきたものだ。
 そうした傾向は、13年3月に習近平政権が成立して王岐山中央規律検査委員会書記(当時、現国家副主席)主導で「虎刈り」による汚職・腐敗撲滅運動が推進されてから一段と強まった。そしてその江沢民派は米国では以前からゴールドマン・サックスと深い関係にあっただけに、いうまでもなく、そうした資産配分による投資的な動きはその米大手投資銀行が介在していたはずであり、また自己勘定や系列のヘッジファンドもそうした動きを後押しして買い上げていたはずである。
 そして、こうした中国勢が最近ではリスク回避が強まるとともに、安全資産としての米国債に資金シフトをしているわけだ。


米欧財閥と江沢民派を結びつけていた米系大手投資銀行

 もっとも、ゴールドマンやその系列の投機家群が米国債を買い進んでいるのは、そうした江沢民派を中心とする中国勢との関係以外に、米欧の有力財閥系の代表的な多国籍企業とのつながりを指摘しないわけにいかない。なぜなら、89年11月のベルリンの壁崩壊を機に始まった米国の世界覇権の絶頂期は、当時「世界皇帝」として君臨した米ロックフェラー財閥の総帥デイヴィッド・ロックフェラーの系列が欧州ロスチャイルド財閥の親米的な勢力と提携し、中国で90年代から00年代にかけて主導権を握っていた江沢民派をも取り込むことで成立していたからだ。
 米国の覇権の絶頂期に機能した国際経済システムが多国籍企業主導のグローバル生産体制だったが、その中核となっていたのが資産バブルを膨らませて「世界の一大需要基地」としての役割を担った米国の消費市場と、共産党による独裁体制下で労働組合による抵抗を受けることなく、低コストの労働力を提供することで加工組み立て基地を提供したのが中国の沿海部だった。そうした米ロックフェラー財閥の“本流”の系列と欧州ロスチャイルド財閥の親米的な勢力、それに中国の江沢民元主席を中心とする勢力を結びつける役割を果たしたのがゴールドマンだったのである。
 米国が一大需要基地として機能していくうえで重要な役割を担ったのが、90年代半ばにロバート・ルービン財務長官(当時)がドル高政策を推進したことにあるのは改めて指摘するまでもないことだ。そのルービン長官がビル・クリントン政権に入閣する以前にはゴールドマンの共同会長であり、長官を退任した後でデイヴィッド・ロックフェラーが“オーナー”だったシティ・グループの経営執行委員会会長に就任したのは、そうした関係を端的に反映しているといえるだろう。


 明日もこの続きを掲載します。
 明日は中国の主導権をめぐる米国の権力者層の変遷過程を主に照準を当てて見ていくことにします。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。