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米大統領選挙を控えて習近平が自力で最高権力を握る必要がある?

ポイント
・これまで米国は貿易戦争を仕掛けたりFRBにタカ派的な金融政策を推進させて中国経済を悪化させてきたが、20年の米大統領選挙を控えてトランプ政権としては株価を上昇させる必要があるため、中国に構造改革に向けた圧力を強めるのはそれが終わってからか?
・ファーウェイに圧力を強めるのはコスモポリタン系の方が熱心だが、中国では通信業界を介して江沢民派が人民解放軍に影響を及ぼしているなかで、習近平国家主席が軍を完全に掌握するうえで江沢民派に打撃を与えるため、ナチズム系もそれに同調している。
・トランプ政権が大統領選挙を意識して十分にファーウェイを攻撃できなくなれば、習近平主席は共産党で「主席」の地位を復活させて自らその地位に就くことで、自力で終身的な絶対的権力基盤を掌握していく必要がある。



大統領選挙に優先的に取り組むために中国との交渉は後回しも

 今回の米中貿易協議での合意事項では、外資系企業に対する技術供与を含む産業政策や国有企業への補助金支給といった他の構造問題だけでなく、中国側の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)をはじめとする戦略企業への禁輸措置の緩和、解除については先送りされた。
 もっともこの問題については、ドナルド・トランプ大統領の背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層よりは、どちらかといえば、米国の覇権の維持を目指すうえで中国を撃滅しようとしている親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的な世界単一政府志向のコスモポリタン系の勢力が重視しているものだ。実際、トランプ大統領は他に要求しているものを中国側に認めさせる代わりに、ファーウェイへの制裁の緩和を持ち出して取引材料にする姿勢を見せたことで、コスモポリタン系の中核である軍産複合体の利害で動いている共和党議員から反発を受けたことがある。
 今後、2回目の協議に取りかかるにしても、トランプ大統領としてはこれから20年の大統領選挙で再選を目指すことを優先せざるを得なくなるなかで、この問題に重点的に取り組めなくなる恐れがある。これまで、米国側は中国側に構造問題を受け入れるように圧力をかけるにあたり、貿易戦争を仕掛けて輸出に打撃を与えたり、ジェローム・パウエル連邦準備理事会(FRB)議長にタカ派的な金融政策運営を推進させて資本流出を促進させることで中国経済を悪化させてきた。しかし、大統領選挙での勝利を目指すなら米国経済が落ち込むのを回避して株価を高騰させることが必要になってくるので、本格的に中国に構造改革の推進を要求するのは再選が決まってからになりかねない。
 ただし、ファンダメンタルズを無視して株価を高騰させればいずれその反動を迎えることになり、おそらく二期目の任期の終了が近づく23年後半頃からトランプ政権を取り巻く経済金融環境が悪化しておかしくない。それまでの勝負になるのではないか。


江沢民派が通信業界を握ることで人民解放軍への影響力を維持する

 なお、ファーウェイへの制裁の強化は主にコスモポリタン系が望んでいるものではあるが、ナチズム系も異なる意味でそれを望んでいる面がある。これまで当欄で述べたように、中国では通信業界の利権は江沢民元国家主席の子息が握っていたように、今でもその系列の派閥の“牙城”であるからだ。
 江沢民派は米ゴールドマン・サックスと密接なつながりがあり、この米大手投資銀行を介して米ロックフェラー財閥の本流筋や親米的な欧州ロスチャイルド財閥と結び付くことでコスモポリタン系の世界戦略の一翼を担っていた。しかも、ファーウェイは人民解放軍とのつながりが深く、その“付属会社”とでもいい得る存在だ。
 中国ではかつての毛沢東にしろ鄧小平にしろ、軍を握る者が最高実力者になれるので、江沢民元主席も胡錦涛前国家主席も軍の幹部の人事では自身の系列の人材をそこに就けてきた。習近平現国家主席も例外ではなく、盟友の王岐山中央規律検査委員会書記(当時、現国家副主席)が「虎刈り」で江沢民派の郭伯雄、徐才厚両中央軍事委員会副主席を汚職容疑で陥れ、自身の人脈をそこに就けてきた。しかし、ファーウェイはじめ通信業界を江沢民派が握り続けている以上、軍への影響力もそれなりに維持しているため、習主席としては完全に軍を掌握しきれていない状態にある。米国の覇権の維持を目指しているコスモポリタン系に同調してナチズム系がファーウェイを攻撃している理由がそこにある。


習近平主席が自ら終身的な最高権力の地位を得る必要がある

 そうしたなかで、トランプ政権が大統領選挙での選挙戦に取り組むことを優先して十分にファーウェイを攻撃することができなくなるのであれば、習近平主席は異なる手段で絶対的な権力基盤を確立することが求められることになる。
 既に習近平主席は鄧小平が定めた憲法を改正して国家主席の任期は二期10年までとする制度を廃止しており、3期目以降も自身がその地位にとどまり続けることを可能にしている。ただそれだけでなく、共産党の最高権力の終身的な地位である「主席」の地位を復活させて自身がそこに就く必要がある。今夏の北載河会議で毛沢東以来となる「人民の領袖」という称号を得ることができたのは、その布石であるといえるだろう。


 明日、明後日はトランプ大統領が米軍をシリアから撤退させる動きを見せたことでトルコがクルド人を攻撃していますが、その背後事情について考察します。
 初日の明日はまず、米軍がシリアに駐留することになったことや、クルド人と提携することになったのはイスラム国(IS)を打倒するためですが、そのISを支援している勢力を明らかにすることで中東をめぐる秩序の本質に迫ります。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。