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米国は意図的に中東での関与を薄めてロシアに管理を任せる

ポイント
・エルドアン大統領は以前、コスモポリタン系とつながって裏側でISを支援していたが、その後米国で主導権がナチズム系に移ると機敏に反応してその勢力に乗り換え、一時相当に関係が悪化したロシアとも極めて良好な関係に転じている。
・米国では依然として軍産複合体を中核とする勢力が根強いことからトランプ大統領は容易にシリアから米軍を撤退できないが、既に主導権がナチズム系に移っているだけにいずれ実現するだろう。そうなるとクルド人はロシアを頼る以外に存続していけなくなる。
・その背景には、シェール産業が興隆して今や米国は世界最大の産油国になっていることや、朝鮮半島北部のウラン鉱石の利権を握ることで、サウジアラビアはじめ中東産原油への依存度が劇的に低下していることがある。
・それによりサウジがOPECや中東での盟主の地位を喪失することで地政学リスクが高まることが想定され、中東産原油への依存度が高い国々はエネルギー供給面で危機的な状況がもたらされかねない。日本は軍事力強化や朝鮮半島、シベリア方面に進出へ。



機敏に的確に判断してナチズム系に乗り換えたエルドアン大統領

 前回では、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が米国の親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的なコスモポリタン系の勢力と結び付いていると述べた。そうであるなら今回、シリアから米軍が撤退したのを好機と見てクルド人の武装勢力を攻撃したのは、中東を再び戦闘の泥沼状態に陥らせるとともに、米国内でも撤退への反対機運を盛り上げることで、米軍が駐留し続けざるを得ない状態にすることがその目的だと考えるのが自然だが、そうした見方は正しくない。
 エルドアン大統領は情勢の変化を機敏に感じ取って的確に判断して行動することに長けたところがある。16年の米国での大統領選挙戦を経て、主導権がヒラリー・クリントン元国務長官を支援していた軍産複合体を中核とするコスモポリタン系から、ドナルド・トランプ現大統領を押し立てた親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系に代わったことを的確に判断したと思われるフシがある。
 それとともに、ロシア軍機を撃墜した際にはあれほど関係が悪化したはずのウラジーミル・プーチン大統領と一転して極めて良好な関係になるとともに、難民問題を理由にして欧州連合(EU)との関係を意図的に一段と冷却化させ、トランプ大統領とともに北大西洋条約機構(NATO)にも疎遠な姿勢を見せるようになっている。昨年10月2日にサウジアラビア人ジャーナリストがイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された際には、エルドアン大統領は同国の工作員の犯行と断定するとともにムハンマド皇太子の関与も主張していたが、これもトランプ大統領と綿密な打ち合わせにより行われたものだ。
 今回のシリアでのクルド人武装勢力への攻撃にしても、6日に電話会談をするなどトランプ大統領と事前に綿密に協議をしたことが明らかになっている。


中東の管理をロシアに任せようとしているナチズム系

 米国では軍産複合体や職業軍人系、国防総省高官その他、コスモポリタン系の抵抗が根強いことから、シリアからの米軍撤退はそれほど簡単には進まないかもしれないが、それでもトランプ政権の背後でナチズム系の勢力が主導権を握っている以上、ある程度の時間を要してもいずれ必ず実現するだろう。
 それにより見捨てられるクルド人の武装勢力は、シーア派のイランと組めないのであれば、シリアのバッシャール・アサド政権の後ろ盾になっているロシアを頼る以外に自分たちの勢力を存続させていく基盤がなくなってしまう。それこそがナチズム系が目論んでいることの一つなのであり、米軍を中東から撤退させた後にこの地域の管理をできる限りロシアに任せようとしている。


サウジはじめ中東産原油への依存度の低下がその背景にある

 またクルド人がロシアに取り込まれていけば、サウジはこれまで、米国の後ろ盾の下に「イスラム国(IS)」や、さらにはイランと対抗していくにあたり、イスラエルやエジプトとともに包囲網を築くうえで中心的な役割を担っていた同国の立場が苦しくなることを意味する。
 その背景には、米国ではシェール産業が興隆してきたなかで、石油輸出国機構(OPEC)の減産枠による適用を受けないことで今や米国は世界最大の産油国になっただけでなく、環境問題による規制からこれまで採掘できなかったアラスカからも将来的に生産していこうとしていることで、サウジ産はじめ中東産原油への依存度がかなり低下していることがある。
 それだけでなく、表向き朝鮮半島の非核化(本当は体制を崩壊させずにそれを実現することはあり得ないのだが)を実現して北朝鮮と休戦協定の締結だけでなく平和条約も結んだうえで、半島の南側の韓国を併合させて統一を後押ししたうえで北部の地下資源開発に取り組もうとしている。それによりウラン鉱石の利権を握って原子力発電の比率を高めていけば、もはや原油の需要そのものも低減していくことになる。
 そうなると、もはやサウジはじめ中東での原油の利権は中国にある程度握らせても構わないことになる。またそこでは、米ドルの基軸通貨としての信用は圧倒的な原油の輸出大国であるサウジに取引の決済をドル建てに限定していることで維持されていることが大きいだけに、その信用が低落していくことを意味するが、意図的に米国の覇権を放棄していこうとしているナチズム系の勢力にとってはそれは思惑通りのことである。


中東での地政学リスクの高まりが地殻変動を引き起こすことも

 米軍がシリアやアフガニスタンを手始めに中東から次々に撤退していくことで、同時にサウジのOPECだけでなく中東での盟主の地位も揺らいでいけば、この地域では地政学リスクが高まらざるを得ない。それにより中東産原油の依存度が高い国々はエネルギー供給への危機的な状況がもたらされかねず、それは米国産シェール原油やロシア産天然ガス、そして朝鮮半島北部産のウラン鉱石への引き合いを一段と強めることになる。
 中東産原油への依存度が極端に高い日本はホルムズ海峡での安全な輸送を手掛けるためにも、自衛隊の海外派兵が後押しされることで軍事力の強化に拍車をかける一方で、安倍晋三政権はトランプ政権とともに朝鮮半島北部に進出してウラン鉱石の利権を“お裾分け”してもらおうとしている。それだけでなく、さらに大陸にも進出して満州からシベリア方面にかけて「大東亜共栄圏」の構築に動き、プーチン大統領と提携して安価なシベリア産天然ガスの輸入を後押しすることになりそうだ。


 今週はこれで終わりです。今回も御拝読いただき、ありがとうございます。
 来週もこれまでと同様に、週明け21日の月曜日から掲載していくのでよろしくお願いします。
 なにかありましたら書き込んでいただければと思います。
 また、筆者から直接お話をお聞きしたいようであれば、お申し付けいただければ幸いです。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。