FC2ブログ

記事一覧

米朝首脳会談の実現のために北朝鮮にミサイル・核開発をさせる

ポイント
・今回の米朝実務者協議では協議の日程が北朝鮮主導で1日しか設定されておらず、交渉担当者もあらかじめ帰国便を予約しているなど、特に北朝鮮側には最初から合意する気がなかったことがうかがわれる。
・どうして最初から合意する気がなかったのかというと、その3日前のSLBMの発射実験の成果が不十分であるからだ。それは技術的にそこまで到達していないことだけでなく、北朝鮮が弾道ミサイルを搭載できる戦略原子力潜水艦を保有していないことがある。
・トランプ政権やその背後のナチズム系の権力者層は世界各地の米軍を徐々に撤退させていこうとしており、アジア極東ではその手始めに在韓米軍を退かせようとしている。
・ただし、北朝鮮と首脳会談を行う名分を得るためには米本土を攻撃できる軍事力を同国に握らせる必要がある。17年中には北朝鮮に米本土に届くICBMとそこに搭載できる核兵器の小型化に向けて積極的にミサイル発射や核実験を強行させてきた。
・しかし、シンガポールでの首脳会談で北朝鮮側にICBMの発射を禁止することを約束させてしまったため、部分的な核廃棄と段階的な制裁の解除を決める次の首脳会談を開催するには、北朝鮮側に別の米本土を攻撃できる兵器を開発させることが必要になっている。
・ハノイ首脳会談ではボルトン大統領補佐官(当時)という超強硬派がいたので米国側がその決裂を演出できたが、今回は穏健派のビーガン北朝鮮担当特別代表が米国の交渉官になったので、北朝鮮側が決裂の役割を担うことになった。



米国側が譲歩案を出すも北朝鮮側が拒否し再協議も拒絶

 次に、先週は17日に英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を巡り英国とEUとの間で新たに合意したことが大きな出来事として注目されたが、この件についてはもとより筆者は専門的に情報の深層部分にまで追いかけて分析しているわけではない。しかも、ボリス・ジョンソン首相が目指している今月末での離脱を実現するにはEUとの間で合意した新離脱案を19日中に議会が承認する必要があったが、その審議をせずに採決そのものの先送りが決まってしまい、首相自身が抵抗しても制度上、以前に議会が決めた離脱の1月末への延長に向けて動くことになるなど、予断を許さない状況にある。
 今回はその件を見送ることにして今後、必要があれば取り上げることにしたい。

 今回はそれに代わって今月5日にスウェーデン・ストックホルムで行われた米朝実務者協議について取り上げる。既に2週間超も経っていて新鮮味がないだけに、大事なところだけを述べることにする。
 今回の協議では北朝鮮側が断定的に決裂したと宣言しており、年末までに自分たちが受け入れられるようなものを提案するように求めている。これに対して米国側はそれなりに柔軟で北朝鮮側が受け入れ可能なものに近づく提案を出しており、開催地を提供したスウェーデン政府の提案に基づいて2週間後に再協議に臨むことを求めたものの、北朝鮮側は相手にせずに一蹴してしまったものだ。
 2月27~28日にベトナム・ハノイで開催された2回目の米朝首脳会談では、米国側が一貫して「完全かつ検証可能で不可逆的な核放棄(CVID)」を主張していたジョン・ボルトン大統領補佐官(当時)を交渉の前面の席に着かせたうえで、完全な核放棄と引き換えに制裁を全て解除する“ビッグディール”を持ち出して意図的に決裂させたものだ。今回、米国側は北朝鮮に対して穏健な姿勢を見せているスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表主導で、それなりに段階的な核放棄に応じてその都度、制裁を解除していく妥協案を提示したものと思われるが、それすら北朝鮮側は態度を硬化させて拒否したことになる。


特に北朝鮮側は最初から合意するつもりがなかった

 そもそも、この協議では最初から合意するつもりがあったのか、疑問視せざるを得ない。単に合意文書に署名するだけの首脳会談とは異なり、通常、こうした国際間での実務者協議では日程が2日間以上にわたるものであり、わずか1日だけでは到底、細部に至るまで協議して決めることなど出来るはずがないからだ。いうまでもなく、事前に水面下で交渉担当者が接触してそれなりに方向性を決めているものだが、それでも正式に決めるにはそれなりの日数・時間を要するものだ。
 今回の協議では、そうした日程を北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)第一外務次官が一方的に発表して決まった経緯がある。しかも、北朝鮮側の交渉官である金明吉(キム・ミョンギル)首席代表はその翌6日にはストックホルムを離れて北京経由の帰国便をあらかじめ予約していたあたり、最初から特に北朝鮮側に今回の協議で一気に合意する気がなかったのは明らかである。


北朝鮮には弾道ミサイルを運べる大型の潜水艦がない

 どうして北朝鮮側を中心に最初から合意する気がなかったのかというと、そのカギはその3日前の今月2日に北朝鮮が行った潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験にある。
 ただし、そこで撃ち上げられた「北極星3号」と呼ばれるその弾道ミサイルは潜水艦からではなく、北朝鮮東部の元山(ウォンサン)付近の日本海の海中に設置した発射管から発射されたものだ。潜水艦から発射できていないのは、一つはそこまでの技術に到達しておらず、未熟なことによるものなのだろう。ただそれだけでなく、潜水艦から発射するにはそれを搭載して運べるだけの「戦略原子力潜水艦」と呼ばれる大型のものを配備する必要があるが、北朝鮮にはそれがないことだ。
 この大型の潜水艦は旧冷戦時代の軍拡競争の“名残”から、中距離核戦力(INF)全廃条約により地上で中距離弾道ミサイルを配備することが規制されていたこともあり、米国やロシアが多く配備している。近年では中国も米国への攻撃力を高めるうえで、迎撃システムで捕捉されない攻撃手段を確保する観点から積極的に保有するようになっている。
 ところが、北朝鮮が保有している潜水艦は韓国に特殊部隊を潜入させることを目的とする小型のものしかない。そのため、北朝鮮は潜水艦から弾道ミサイルを発射できるようになっても、それを搭載できるほどの大型の潜水艦が配備できないのではそうした兵器を保有できないのと同じことだ。


トランプ政権やその背後勢力は在韓米軍を徐々に撤退させようとしている

 米朝交渉を占ううえで、北朝鮮が米本土を直接攻撃できる軍事力を獲得するか否かは重要な意味を持つ。
 ドナルド・トランプ政権はその背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層の意向を受けて、世界各地に駐留している米軍を徐々に撤退させようとしている。アジア極東ではその手始めに朝鮮半島の非核化を実現(ただし、本当は体制を崩壊させないでそれ実現することはあり得ないのだが)したうえで、在韓米軍を完全に退かせようとしている。そのうえで、北主導で半島を統一させたうえで北部地域に進出してウラン鉱石はじめ豊富な地下資源開発に取り組んでいこうとしているのは、これまで当欄で何度も述べてきた通りだ。


首脳会談を行う名分を得るために北朝鮮にミサイル発射や核実験をさせていた

 しかし、ナチズム系の権力者層は米国ではトランプ政権を成立させることでホワイトハウスを押さえたことにより主導権を握ったが、政財界や軍ではいまだに軍産複合体を中核とする親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的なコスモポリタン系の勢力が強いため、強引に米軍を撤退させていくことが出来ない。例えは、最近では中東でもシリアから強引に米軍を撤退させようとしてクルド人を“見殺し”にしようとしていることで批判を浴びているように、極東でも一方的に北朝鮮と和解できない事情がある。
 そこでトランプ大統領は17年1月に就任した当初から在韓米軍の撤退に向けて北朝鮮と和解するつもりでいたが、そのための首脳会談を行う名分を得ることを目的にナチズム系の権力者層は北朝鮮に米本土を攻撃できる兵器を獲得させるため、17年中には積極的にミサイル発射や核実験を行わせたのである。それにより、同年末には米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功し、さらにはそこに搭載する核兵器の小型化にも一定のメドをつけさせたうえで、年明け18年1月から“満を持して”一転して金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長に融和路線に向かわせたのである。
 いわば、最初から平昌(ピョンチャン)での冬季五輪大会の開催を見据えていた計画通りの動きだったわけだ。それまでに韓国では米軍産複合体につらなる保守的な朴槿恵(パク・クネ)政権を崩壊させ、南北統一路線を掲げている革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権を成立させるのも、当初のシナリオ通りの動きだったといえる。


ICBMに代わる米本土を狙える兵器の開発・配備が不可欠に

 こうしてトランプ大統領やその背後のナチズム系の権力者層は金正恩委員長と首脳会談を行う名分を得ることが出来たが、18年6月12日にシンガポールで1回目の首脳会談を行った際に、北朝鮮側にICBMを撃ち上げないことを約束させてしまった。首脳会談を行う以上、何らかの成果を引き出さないと米国内のコスモポリタン系を中心とする勢力が納得せず、状況が悪化すれば軍事攻撃を求める論調が高まりかねないのでそうせざるを得なかったのである。
 しかし、それでは最終的に朝鮮半島の非核化に向けてさらに首脳会談の開催を模索するにあたり、有効な手段が失われてしまったため、北朝鮮にはそれに代わる新たな米本土を攻撃できる兵器を獲得させることが必要になってくる。そこで4回目の首脳会談を開催して、寧辺(ニョンビョン)の核施設を解体する代わりに部分的な制裁の解除といった“ソフトディール”の形で取り決めるには、北朝鮮が潜水艦から弾道ミサイルを発射するSLBMの開発と実用化による配備が不可欠であるわけだ。


ハノイでは米国側が、今回は北朝鮮側が決裂の役割を担う

 今回の米朝実務者協議を決裂させるにあたり、ハノイでの首脳会談では米国側がその役割を担ったのに対し、今回は北朝鮮側がその役割を受け持った。ハノイ首脳会談が行われた当時、会談が終わった後の会見でトランプ大統領は合意できなかった理由を「北朝鮮側が制裁の全面的な解除を要求したからだ」と指摘したが、その後北朝鮮の李英浩(リ・ヨンホ)外相は深夜での会見で「こちらが要求したのは制裁の一部解除だけだ」と述べ、米国側と全く異なる主張をしたことが想起される。ハノイ会談の際に米国側主導で決裂させたのは、当時はトランプ政権にはボルトン大統領補佐官といった超強硬派を抱えていたが、その後北朝鮮との協議を推進したり、中東ではイランへの軍事攻撃を回避するために同補佐官を更迭して穏健派のビーガン特別代表が前面に出たことで、米国側がその役割を請け負うことが出来なくなったからだ。


 週末の明日もこの続きを掲載します。
 明日は北朝鮮情勢について、今、同国がどのような状況にあるかに焦点を当てて、さらに問題の本質に迫ることにします。
 よろしくお願いします。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

17894176

Author:17894176
永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。