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習近平に外圧を提供していた米ナチズム系の権力者層

ポイント
・ナチズム系の権力者層はトランプ大統領とともに中国での傀儡である習近平国家主席に構造改革を断行させるために中国経済を悪化させることで「外圧」を提供しようとしたが、それが裏目に出て主席の政治的権威が動揺してしまった。
・中国では北載河会議がその後の共産党大会や全人代での決議に大きな影響を及ぼす。15年の会議では江沢民元国家主席や曽慶紅元国家副主席を排除し、胡錦涛前国家主席に長時間にわたり“反省文”を読ませたことで習主席はその時点で絶対的な権力基盤を確立した。
・習主席の権威はその後、動揺したものの、今夏の北載河会議で復活させることに成功したが、その背景には経済が失速状態に陥ったことで、共産党幹部の間では一党独裁体制の存続への危機感から強権統治体制に“すがりつこう”としていることがあるようだ。
・今回の米中貿易交渉での「第一段階」での合意の背景には、経済状態が失速している中国側だけでなく、トランプ政権も来年11月の大統領選挙を控えて、米国経済が減速しているといった経済面での説明が一般的だが、それより習主席が権威を復活させたことが大きい。
・今回のペンス副大統領の演説も習主席の復活がその背景にある。ナチズム系の権力者層としては、露骨な中国に対する敵対姿勢を打ち出してもその基盤が動揺することはないというメドが付いたということだ。



中国経済を悪化させて外圧を提供したのが裏目に出る

 親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層は、ドナルド・トランプ米大統領とともに自分たちの“傀儡”である習近平国家主席に、今でも国有企業の利権のかなりの部分を握っている江沢民元国家主席を中心とする勢力の抵抗を撥ねつけて構造改革を断行させようとしている。そこでこれまでは、貿易戦争を仕掛けたり米連邦準備理事会(FRB)にタカ派的な金融政策を推進させることにより、中国経済を悪化させることで習主席に“外圧”を提供してきた。
 ところが、それによりかえって中国国内では江沢民派が共産主義青年団(共青団)出身の李克強首相を押し立てて抵抗したため、習近平主席の政治的権威が動揺してしまった。習主席の経済ブレーンである劉鶴副首相が米国側による構造改革の要求を受け入れたものの、国内で猛反発を受けて法制化、制度化に失敗したのはそのためだ。
 いわば、米ナチズム系の権力者層としては外圧を提供するつもりだったのが、かえってそれが裏目に出てしまったといえる。当初、今年6月4日にマイク・ペンス副大統領の演説が予定されていた直後の米中首脳会談の開催が予定されていた大阪での主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に、習近平主席が参加できない恐れが指摘されていたのも以前、当欄で指摘したことだ。


習近平が絶対的な地盤を強固にした15年の北載河会議

 ところがこれも以前、当欄で述べたことだが、8月上中旬に開催された北載河会議で習近平主席が巻き返しに成功したことで、事態は再びナチズム系の権力者層の意向通りに動きやすくなってきた。
 この会議は毎年、8月の猛暑の時期に河北省の避暑地に現役の共産党幹部と引退した党幹部が集まって秘密裡、非公式に開催されているものだ。歴史的、風土的に儒教的な価値観が重視されている中国では“長幼の序”の観念から、表向き引退しているはずの長老の権限が強い。その意味では、現在の習近平主席のように、政敵であれば相手が長老ですら侮蔑的な姿勢で臨んで過酷な仕打ちをした現役幹部はいなかったものだ(かつて、毛沢東や鄧小平は完全に最高実力者として君臨した際には既に長老の仲間入りをしていたものだ)。そのため、その会議で決まったことが10月の共産党大会で、さらには翌年3月の全国人民代表大会(全人代)での決定事項に決定的な影響を及ぼすことになる。
 特に15年の北載河会議では、江沢民派直系で政治局常務委員だった張高麗第一副首相(当時)が王岐山中央規律検査委員会書記(当時、現国家副主席)から、その腐敗ぶりを責められて「虎刈り」のターゲットにされていると噂されていた。そうしたなかで、会議の直前の8月12日に天津で謎の爆発事故が起こると、習近平主席は同市の党委員会書記だった経歴から張副首相の関与を強くほのめかすことで、その“親分”である江沢民元主席や曽慶紅元国家副主席が会議に出席することを認めずに排除したものだ。
 さらには、会議では胡錦涛前国家主席や朱鎔基元首相には“反省文”を読み上げさせたが、特に胡前主席に対してはそれがかなりの長時間に及ぶなど屈辱的なことを味わわせたものだ。それはさながら、胡前主席の出身母体である共青団の“大先輩”である胡耀邦が失脚したことをほうふつとさせるものだったという。それにより、習主席は絶対的な最高権力者としての地盤を強固にした経緯がある。


最終的には外圧の提供が奏功することに

 その後、習近平主席の権威が動揺したものの、今回の北載河会議では以前、当欄で指摘したように「人民の領袖」という称号が奉られることが決まったことで、政治的権威を復活させたことがうかがえる。その背景には、中国経済が完全に失速状態に陥るほど悪化しているなかで、共産党幹部の間では同党による一党独裁体制の存続に対する危機感から、習主席による強権統治体制に“すがり付こう”としていることがある。
 いわば、ナチズム系の権力者層が習近平主席に外圧を提供するにあたり中国経済を極端に悪化させたことで主席の権威が動揺してしまい、その時点では結果的に裏目に出たが、最終的にはそれは奏功したといえそうだ。


米中交渉合意の説明は経済面の動機から見たものが多い

 習近平主席が政治的権威を復活させたことは、当然のことながら米国との関係にも大きな影響を及ぼさずにおかないものだ。
 今回、今月10~11日の閣僚級の貿易協議が暫定合意に達し、さらに先週末25日には12月15日の正式合意の期限に向けて一段と最終決定に近づいたのは、一般的な論調では米中両国の経済的な面から説明するものが多い。中国では経済状態が失速しており、これ以上、貿易戦争で米国から圧力をかけられるのは中止してもらいたいはずだが、米国側もトランプ政権が来年11月の大統領選挙を控えて、やはり景気が悪化するのは避けたいはずであるからだ。
 米国経済はバラク・オバマ前政権期の末期から企業部門の設備投資が鈍化していたが、トランプ政権になって保護主義的な高関税政策や中国との貿易戦争を背景に先行き不透明感から一段と低調になってきた一方で、株価の高騰による資産効果もあって個人消費が好調な状態を維持してきた。しかし、既にトランプ政権が17年末に打ち出した大規模減税政策による押し上げ効果が完全に剥落しているなかで、ここにきて中国を中心とする世界経済の減速傾向が米国の個人消費にも悪影響を及ぼしつつある兆候が出てきていることが、貿易交渉での暫定合意をもたらした面も確かにあるだろう。
 とはいえ、これまでの米中間の交渉の経緯を振り返ると、やはり習近平主席の権威が復活したことの方がはるかにより大きな要因と見て間違いない。トランプ大統領が今回の「第一段階」に続き、「第二段階」からさらには「第三段階」での合意に自信を示しているのもこのためだろう(もっとも、中国側がそれほど簡単に米国側が求めている構造改革を受け入れてそれに取り組んでいくとも思えないが・・・・)。


習近平が巻き返したことでペンス演説が行われる

 ただし、ペンス副大統領がこの時期に中国を対象に包括的に2回目の強硬な演説を行ったのは、それ以上に習近平主席の権威が復活したことがその大きな要因といえるものだ。
 そもそも、もとより6月4日に予定されていた演説が延期になったのはG20サミットの際の米中首脳会談を意識してのものだったが、今回も貿易協議での「第一段階」での正式合意を控えているため、事情は同じであるはずだ。にもかかわらず、今回はそれが行われたのは、ナチズム系の権力者層の中国での傀儡である習近平主席の権威が復活し、権力基盤が再構築されたことで、露骨な中国敵視姿勢を打ち出してもその基盤が動揺しなくなるメドがついたといえるだろう。
 むしろ、最近になって権威が復活した真因が中国経済が失速状態に陥り、共産党による支配体制が動揺する恐れが出てきたことで敵対勢力もその強権統治体制に“しがみつく”ことにあるとすれば、敵対国による露骨な対決姿勢は一段とその権威や権力基盤を強固なものにするうえで有効な手段であるといえるのだろう。


 明日以降もこの続きを掲載します。
 明日は多くの人たちが「冷戦」の本当の意味を指摘したうえで、コスモポリタン、ナチズム両系との関係について考察します。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。