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習近平の巻き返しが他の地域にも影響を及ぼす―中東、日本五輪問題

ポイント
・トランプ政権で大きな影響を行使しているキッシンジャー元国務長官はかつて、ソ連と対峙するにあたり中国を分断させて提携した経緯があり、今回も「新冷戦」構造において中国と対峙するにあたり、インドやロシアを分断させて取り込もうとしておかしくない。
・中国で習近平国家主席が巻き返したことで、中東では米軍が撤退してロシアが関与を強める動きが加速しており、トルコ軍が米国が見捨てたクルド人を攻撃し、ロシア軍と共同監視活動を行うのも事前に3首脳が密接に打ち合わせて計画していたものだ。
・米国が関与を低下させれば中東で地政学的リスクが高まり、日本はロシアとのつながりを深めることになる。ロシア側はサハリン経由で両国を高速鉄道や高速道路で結びつけることを提案しており、将来的に北海道が北方交易の重要な拠点になる可能性も。
・東京オリンピックでのマラソンと競歩の競技を札幌で行う動きもこのことと関連している可能性がある。安倍首相としても、小泉元首相の系列である小池東京都知事が存在感を高めることは望ましくないはずだ。



他の新興大国を中国と分断して提携していく

 中国で習近平国家主席が政治的権威を復活させ、国内で江沢民元国家主席を中心とする勢力や共産党幹部の子弟群で構成されている「太子党」の勢力による抵抗を撥ねつけて構造改革を進めやすくなる一方で、地政学的にも「新冷戦」体制が構築される流れになっていけば、他の主要国も大きな影響を受けざるを得ない。
 現在、ドナルド・トランプ米政権で大きな影響力を行使している超高齢のヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、70年代にリチャード・ニクソン政権で大統領補佐官として、ジェラルド・フォード政権で国務長官として主導権を握っていたなかで、ソ連と対峙していくにあたりそこから中国を分離させて提携する路線を採用し、それにより米中間の国交回復が実現したものだ。そのキッシンジャー元長官がトランプ現政権でも強い影響力を行使しているとすれば、当時と同じことを考えていておかしくない。
 すなわち、中国と対峙している新興大国のうち、インドについてはトランプ大統領の“お墨付き”を得た安倍晋三首相主導でインド太平洋戦略により取り込もうとしており、これにマイク・ポンペオ国務長官や反中国的な豪州が協力している。一方のロシアについてはキッシンジャー元国務長官の系列が担当しており、ロシアゲート事件でその一端が明るみになったように、既にジャレッド・クシュナー現上級顧問を介して16年の大統領選挙にロシアの諜報機関とトランプ陣営がつながっていたものだ。


習近平巻き返しにより中東でのロシアの動きが活発に

 最近の動きでいえば、中東でのクルド人の問題を巡りトランプ大統領がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領やロシアのウラジーミル・プーチン大統領と事前に密接に連絡を取り合っていたものだ。米軍がシリアから撤退した後でトルコ軍がシリア国境付近からクルド人を追い出し、トルコ領内に流入している難民を帰還させる地域である「安全地帯」を設定してロシア軍とともに共同監視活動にあたるのも計画通りの動きである。
 米軍が撤退してクルド人を見捨てる動きが実際に始まると、軍産複合体をはじめ親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的なコスモポリタン系の勢力から批判が沸き上がったことで、トランプ大統領は「トルコ経済を破壊する制裁を科す」と表明していたものだ。「破壊する」と勇ましいことを表明したほどなので、実際の制裁ではドル決済の禁止といった措置を打ち出すのかと思ったら、鉄鋼の輸入関税の引き上げといった“取るに足らない”ものに過ぎなかったものだ――つまり、最初から制裁措置を打ち出すつもりがなかったのであり、実際に先週23日にはトルコが停戦に合意したとして制裁を解除している。
 クルド人が見殺しになれば中東での盟主を自認してきたサウジアラビアの権威が低下する恐れがあるが、そこにも同国と対立しているイランの後ろ盾になっているはずのロシアが接近している。ロシアが中東で影響力を強めているのは誰の目にも明らかであり、また米軍がこの地域での関与を低下させればそうした状況になるのも“自明の理”である。ただこれまで述べてきた文脈でいえば、中国で習近平主席が政治的権威を復活させてからこうした動きに拍車がかかったことはしっかり押さえる必要がある。


将来的に北海道の重要性が高まることも

 中東で米国が関与しなくなれば地政学的リスクが強まり、この地域でエネルギー供給の多くを依存している国々も安全保障面で深刻な試練を迎えざるを得ない。習近平主席が巻き返しに成功し、トルコ軍がクルド人を攻撃したのに歩調を合わせて安倍首相が自衛隊の中東への派遣を検討するように指示したのは決して偶然ではなく、裏側で米国側と連携していたのはいうまでもないことだ。
 ただ今後の動きとしては、やはり中東産原油の依存度を低下させてシベリア産天然ガスへの依存度を高める動きにならざるを得ず、日本の産業界の進出に向けて、北方領土問題の障害の克服を模索しながら日ロ間の結び付きが強まっていくことが予想される。ロシア側がサハリン(樺太)を経由してウラジオストクと日本を高速鉄道や自動車高速道路で結びつけることを提唱していることを考えると、将来的には北海道が北方交易の重要な拠点になっていくのかもしれない。


マラソンや競歩を札幌で行う動きも関連している可能性も

 国際オリンピック委員会(IOC)が東京都の意向を無視して東京オリンピックでのマラソンと競歩を札幌で行わせようとしていることも、こうした動きと関連している可能性がある。IOCがこのことを提唱すると小池百合子都知事が激しく抵抗したのに対し、森喜朗東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長(元首相)が理解を示す姿勢を見せたものであり、安倍首相はじめ官邸もなんらこれに言及しない(すなわち黙認)しているのも気になるところだ。
 IOCは欧州の貴族勢力の“巣窟”とでも言い得る国際組織だが、米国でのテレビ放映権料に収益の多くを依存していることから、最近では米国のその時々の権力者層との結びつきを強めているようだ。朝鮮半島の非核化問題を巡り、18年1月に北朝鮮が融和路線に転じて平昌(ピョンチャン)オリンピックにも参加する姿勢を見せた際に、IOCも同国を国際社会に加わるように“お膳立て”をしていたが、いかにもトランプ政権やその背後の親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の利害に沿って動いていたような気がしないでもない。
 また安倍首相としては、小池東京都知事は原子力発電の再稼働に反対している小泉純一郎元首相の系列なので、東京オリンピックの開催を機に存在感が高まることは望ましくないことも指摘できるだろう。


 今週はこれで終わりです。今回も御拝読いただきありがとうございました。
 来週もこれまで通り、週明け4日の月曜日から掲載していく予定ですので、よろしくお願いします。
 何かありましたら書き込んでいただければ幸いです。
 筆者から直接お話をお聞きしたいようであれば、小規模で居酒屋のようなところでの懇親会形式でもかまいませんので、御連絡いただければ幸甚です。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。