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金融危機とデフォルトの恐怖に怯えてGSOMIA更新を受け入れた韓国

ポイント
・今回の韓国政府によるGSOMIAの失効の停止の決定は、事前には世論調査では破棄への賛成が圧倒的に多く、文在寅大統領もきっぱりとそれを否定したため、多くの方面で意外感をもって受け止められた。
・韓国側は今回、GSOMIAの延長だけでなく、輸出規制強化措置を巡りWTOへの提訴も取り下げたのに対し、日本側が応じたのは局長級会合を開催することだけであり、輸出措置もこのまま続ける姿勢を崩しておらず、明らかに釣り合いが取れていない。
・韓国が北朝鮮の核ミサイルの照準になりかねず、駐留米軍も標的にされかねないなかで、GSOMIAの更新を巡る問題を文大統領はじめNSCのメンバーも重要性を理解していなかったとの指摘もあるが、メンバーの多くが“素人”ばかりとは考えにくい。
・本当は米国側が説得するにあたり、韓国政府に国債の格付けの数段階もの引き下げや、邦銀に韓国の銀行に供与している信用保証を停止もしくは凍結させると脅したことが大きかったようだ。それを実行されると韓国では金融危機とデフォルトに陥るからだ。



意外感をもって受け止められた韓国政府のGSOMIA失効の停止決定

 次に、先週末22日に日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の問題を巡り日韓両国で――特に韓国で大きく揺れたので、この問題について考えることにする。
 23日午前0時の失効期限を控え、その6時間前に韓国政府が失効を停止することを発表した。事前には、反日的な性格で知られている大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長主導で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「韓国が信用できないとして輸出規制強化措置を打ち出した日本に対して軍事機密を共有することはできない」として破棄の決定を変えない姿勢を示していた。政権与党の「共に民主党」の議員も一様に、このGSOMIAは弾劾された朴槿恵(パク・クネ)前政権が国民感情を無視して日本と締結したものなので正当性がないと主張していたものだ。
 韓国ギャラップ社の世論調査を見ても、破棄に賛成が51%と不支持の29%を大きく上回っており、文在寅政権の支持者に限ると賛成が78%にも及んでいた。韓国では来春に総選挙を控えており、文政権としては一般世論に反する政策を、ましてや支持基盤である左翼民族主義勢力の意向を裏切る政策を採るはずがないとの見方が一般的だった。そのため、この決定は多くの方面で意外感をもって受け止められたのは当然である。


釣り合いが取れておらず韓国側が大幅に譲歩したのは明らか

 しかも、文在寅政権が今回、破棄を撤回することを発表したことで韓国側が多くのものを獲得したのであれば話は別だが、どのように考えても日本側の方が利点が大きい。
 韓国側は今回、GSOMIAの延長だけでなく、輸出規制強化措置を巡り世界貿易機関(WTO)への提訴も中断したが、それに対して日本側が応じたのは局長級会合を開催することだけである。焦点となっている韓国向け輸出規制強化措置についても、日本側は将来的にGSOMIAを巡る問題とは次元が異なるものであり、このまま継続する姿勢を変えるつもりはないようだ。
 韓国側は今回のGSOMIAの延長の決定は、いつでも破棄できる条件付きであるとして日本側に譲歩したものではないと“強弁”しているが、実際には再び方針を変えて破棄してしまうと国の威信が問われかねず、取り得る政策手段とは思えない。どのように見ても、日韓両国が得た利点を比べるとまったく釣り合いが取れていない。


事の重大性を認識していなかった?文大統領とNSCのメンバー

 どうして文在寅政権が土壇場になってGSOMIAの破棄を撤回してそのまま更新することにしたのかというと、その直前に相次いで政府高官や軍首脳、さらには閣僚までも訪韓させて説得を試みていたので、米国側の圧力によるものであるとの見方が一般的であり、筆者もこれに何ら異を唱えるものではない。
 そこでは、21日に米国務省が上院にGSOMIAの更新に向けた決議案を成立させ、それを韓国政府に突きつけたといった話が出ているようだ。それまで、文政権では大統領はいうまでもないが、国家安全保障会議(NSC)のメンバーですら事の重大性をよく認識していなかったという。
 北朝鮮は米国との首脳会談での合意事項により、米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や日本本土の上空を越えて太平洋に着弾するミサイルの発射は控えているが、日本海に着弾する近距離でのミサイルの発射は今でも頻繁に行っている。そうしたミサイルはいうまでもなく韓国が照準になり、在韓米軍が標的にされかねない。
 そうしたなかで、表向き米国と北朝鮮との関係が良くなく、ドナルド・トランプ大統領が年末に首脳会談の開催を打診しても北朝鮮側は否定的な姿勢を崩していない。そうしたことを米国側はこれまで、韓国政府に再三にわたり説明したものの理解してもらえず、上院外交委員会の重鎮が上院全体の決議を背景に説得したことで、ようやく文在寅大統領はじめ安全保障関係者が理解することになったというものだ。北朝鮮がミサイルを発射するにあたり、それが着弾する日本海でのデータを最も保有しているのは日本なので、軍事的な機密情報を日本とやり取りしないのは非現実的極まりないというわけだ。

 ただ、筆者は文在寅大統領ならともかく、安保関係者の中にはその分野に“素人”のような人物も紛れ込んでいるとはいえ、その関係者の大部分の人がこうしたことをまったく理解していなかったというのは考えにくいと思っている。実際、文大統領やその側近及び支持者たちは南北統一を目指しているなかで、韓国側が核ミサイルの脅威に晒されながらも友好的な姿勢を見せ、その“証(あかし)”としてGSOMIAの破棄を“手土産”にしようとしていたので、その危険性についてはそれなりに理解していたはずである。


韓国国債の数段階の格下げや邦銀の信用保証の停止で脅された韓国政府

 そうではなく、筆者が裏側で聞いたところでは、米国側は文在寅政権に対し、GSOMIAの破棄により日本との関係がさらに悪化して経済的に一段と打撃を受けてしまい、北朝鮮の核ミサイルの脅威もより一層高まることを理由に、格付け会社に韓国の国債の格付けを数段階引き下げると脅したという。またそれだけでなく、日本政府に指示して邦銀に韓国の銀行に供与している信用保証を停止もしくは凍結させるといった脅しもあったようだ。
 韓国ではほとんどの銀行の財務内容が脆弱な状態にあり、邦銀が保証することで米銀からドル資金を調達できるような状況にある。そのため、それが封じられたり韓国の国債が大幅に格下げされると間違いなく金融危機に見舞われてしまい、脆弱な銀行の金融債だけでなく、国債や主力財閥系企業の社債の多くが債務不履行(デフォルト)に陥っておかしくない。文在寅大統領はそうした経済関連のことを理解していなかった可能性があるが、政権内部にはそうした米国側の脅しに“震えあがって”大統領に懸命に説得したであろうことは想像に難くない。
 いずれにせよ、韓国は「ミニ中華思想」による理念から、「反日」「克日」を掲げて日本より優っていることをことのほか強調したがる。しかし実際には、輸出規制強化措置でも明らかになったように半導体関連の原料をほぼすべて日本からの調達に依存しているなど、韓国経済の構造は日本経済が支えなければ崩壊しかねないほど脆弱な状態にあるわけだ。


 週末の明日もこの続きを掲載します。
 明日は今回のGSOMIAの問題から浮かび上がる、より本質的な問題について、特に朝鮮半島の統一を巡る動きについて考察することにします。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。