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北載河会議で敗れ習近平の基盤が弱体化

ポイント
・G20サミットで中国が米国による包囲網から防戦一方になったのは、北載河会議で習近平が長老に敗北し、その基盤が揺らいでいたことも影響していたようだ。
・習近平に対抗するにあたり、上海閥の曽慶紅と共青団系の胡錦濤が提携して対抗したが、やがて両者の対立が再燃することも。
・北載河会議では習近平の系列の次世代組が出席できず、来秋の共産党大会後にレームダック化の公算大の一方、巻き返しを図り第二の文化大革命を引き起こす可能性も。



北載河会議で習主席が敗北したことが重要な要因に

 G20首脳会議(サミット)では、中国側は米国による“中国包囲網”の前に“防戦一方”になり、首脳宣言で構造改革の推進をしっかり明記されてしまった。どうしてこうした状況に陥ったかというと、それは中国経済が世界経済危機をもたらす震源地になりかねない状況にあったことだけにとどまらない。それだけでなく、習近平国家主席が8月上旬に開催された北載河会議で長老に敗北してしまい、かなり難しい立場に立たされていたことも指摘しないわけにいかない。
 今夏の河北省の避暑地で引退した共産党幹部OBと現役の幹部が話し合うこの会議については、今月13日付の週刊エコノミスト誌でも採り上げられているが、現在の中国の政治権力闘争を巡る情勢や、それを踏まえたうえで今後の幹部人事や政策姿勢を占ううえで非常に重要なことなので、簡単に経緯を振り返る必要があるだろう。

 まず今回の会議の前後で目につくのは、国営新華社や人民日報といった中国の国家及び共産党の宣伝メディア機関が、最高指導者を意味する「核心」という言葉をいっさい使わなくなったことだ。この言葉は習主席自身を指すものであり、昨年の北載河会議が終わり主席の専制権力体制が確立した直後には頻繁に使われたものだ。
 そうすることで、習主席は自身の神格化に道をつけ、毛沢東に並び、それを超える存在になることを目指していたようである。それが今ではまったくその言葉が使われなくなったのは、その威信が低下し、場合によってはかなり失墜した状態にあることをうかがわせるものだ。

 それだけではない。習主席はこれまで、鄧小平が推進した改革開放政策のさらなる発展段階として「発展の深化」を唱えていたが(発展段階という形式を採ってはいるが、実質的にはそれを否定していることにほかならない)、最近では改革開放政策を支持する姿勢を示している。それだけでなく、鄧が唱えた「全方位対外開放」政策を堅持することも表明せざるを得なくなっている。
 かつて、鄧は改革開放政策を推進するにあたり、“能ある鷹は爪を隠す”ことを意味する「韜光養晦(とうこうようかい)」路線を掲げ、周辺国と摩擦を強めて対立することを極力避けようとしてそれを戒めた。ところが、習主席はこの方針を事実上、否定して「中華民族(帝国)の復興」をイデオロギーに掲げて積極的な対外膨張路線を推進し、東方の海洋進出を試みるにあたり南シナ海を巡り東南アジア諸国に、また東シナ海でも日本に対して軍事的な圧力を強めてきた。
 それが今回、鄧が唱えた外交路線に習主席が回帰する姿勢を示したことで、これから対外政策が軟化していくか注目されるところだ。


上海閥と共青団系が連携して習主席に対抗

 一昨年の北載河会議では、習主席は胡錦濤前主席に対して令計画・元政治協商会議副主席の罪状における動かしがたい証拠をつきつけた。それにより胡錦濤前主席は自身の元側近の逮捕・失脚に異議を挟めなくなってしまい、共産主義青年団(共青団)系の勢力の没落へとつながっていったものだ。
 また昨年の会議では、江沢民元国家主席や曽慶紅元国家副主席といった「上海閥」の2人の領袖が参加を拒絶され、胡前主席も長時間にわたり反省文を読まされたことで、その時点で習主席は完全に専制権力体制を確立したものだ。
 ところがその後、米国から昨年8月以降、また今年初以降の2度にわたる金融攻撃を受けたことで、つねに強力に人民銀行が元買い・ドル売り介入を続けなければならなかったことで外貨準備が激減してしまった。それにより、習主席が対外膨張政策の一環であり、また国内の過剰供給能力の“はけ口”を求めることを意図して提唱していた「一帯一路」構想がほぼ挫折してしまい、国内政策の主導権も胡前主席の直系である共青団系の李克強首相に奪われている。
 今回の北載河会議の状況も、こうした事情を映したものであるのはいうまでもないことだ。

 習主席の専制権力体制に対抗するにあたり、かつての“仇敵”の関係にあった上海閥と共青団系が提携して対処していたものだ。今回の北載河会議で習主席を攻撃するうえでも、曽元副主席が胡前主席に連携を呼びかけることでその包囲網を構築していったようだ。
 無論、両者はまさに“水と油”のような関係にあるので、“共通の敵”がいなくなるといずれ対立することになるのだろうが、習主席の権力基盤が大きく動揺するまでは、しばらくは提携していくのだろう。
 ただし、来秋の共産党大会では5年に一度となる幹部人事が決まるため、そこでは激しく対立することになっておかしくない。


習主席が推す若手のホープだけが出席を許されず

 今回の北載河会議では、そうした重要な党大会を控えているという意味でも大きな意味を持つものであり、そこでは注目すべきことが起こっていた。
 そこでは政治局常務委員入りを目指す“次世代組”のうち、上海閥が推している孫政才・重慶市党委員会書記や共青団系の胡春華・広東省党委員会書記は出席していたものの、習主席が推している韓正・上海市党委員会書記や栗戦書・中央弁公庁主任の姿はなかったという。来秋の党大会が開催される直前の来夏の北載河会議までに習主席が巻き返して自身の後継者が出席できるようにならないと、次期常務委員に昇格できなくなってしまい、主席の次の5年間の統治体制はレームダック化することになりかねない。
 また本当に習主席の後継者がこのまま後継レースから脱落していくと、次期国家主席及び共産党総書記の地位を巡り、上海閥と共青団系との間で対立が深まりかねない。

 ただ、このまま習主席の統治体制が弱体化していくのかといえば、そうとは言い切れない面もある。人民解放軍の有力なポストには今では習主席の影響力の強い人たちが任命されており、また公安警察や秘密警察部隊といった公安部門も主席を背後で支えている勢力がしっかり押さえているからだ。
 こうした状況では、習主席としては本当に権力を奪い返すためには、第二の文化大革命を引き起こすという手段がある。かつて、毛沢東が「大躍進」政策を推進して失敗してしまい、実権を劉少奇や鄧小平に奪われると、文化大革命を引き起こしてこれらの勢力を「走資(資本主義に走る)派」と呼んで弾圧し、失脚させていったのと同じようなものだ。
 特に今回、実権を握った共青団系の李首相は、これから構造改革を推進していくと社会不安を激化させかねないので、習主席としてはよけいに付け入る隙があるといえるだろう。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。