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集団免疫路線が奏功した日本と上手くいかなかった米国

ポイント
・新型コロナウイルスが国内に流入して水際対策にも失敗した場合、対策としては検査体制を強化する手法とそれをせずに放置しておく手段がある。前者が好ましいように見えるが、無症状や軽症患者も病院に駆け込むことで「医療崩壊」のリスクを高める。
・それを避けるには、PCR検査を症状の重い人だけに限定して行い、陽性反応が出た患者だけを重点的に治療することであり、無症状者や軽症者を野放しにさせることで多くの人たちの体内でウイルスに対する抗体ができ、集団免疫が形成されて望ましい状況になる。
・医系技官や日本感染症研究所を傘下に抱えている厚生官僚も、民間の参入を拒否して自分たちが握っている利権を守るためにPCR検査を拡充することを嫌がっているため、安倍政権が当初、推進した集団免疫路線は望ましいものだった。
・ナチズム系が主導権を握っている日米英では当初、集団免疫路線が推進されたが、上手くいったのは日本だけだった。米国では軍産複合体ともつながったトランプ政権が非常事態を打ち出さ座を得なくなり、日本も路線転換をしてそれに追随せざるを得なくなった。
・それにより緊急事態宣言を発令した安倍政権はPCR検査体制の拡充を求めて厚生官僚と敵対するようになったが、もとより官邸主導の統治体制を強化するにあたり、医系技官や自民党との橋渡し役である日本医師会を抱えるこの勢力は撃滅する必要があったといえる。



検査体制の徹底は医療崩壊を引き起こす危険性を高める

(前回の続き) 中国では前回、述べたほどまでに新型コロナウイルスに“汚染”されているとすれば、周辺国や、日本のように多くの中国人観光客が押し寄せているところはいかに水際対策を重点的に強化しても、流入を防ぐのは到底不可能である。北朝鮮では公式には感染者がまったく出ていないことになっているが、実際にはかなりいるといわれているように、いかに強力な独裁政権が“鎖国”政策を推進してもまず無理である。遅かれ早かれ、新型コロナの感染が世界中に拡大していくのは時間の問題であったといえる。
 そこで各国とも感染者が国内で蔓延することを前提に対策を推進していくことになるが、そこでは二つの方策に大別される。一つはPCR検査による検査体制を強化して感染者を徹底的に洗い出し、感染状況をつねに正確に把握したうえでそれに対処していくことだ。こうしたやり方は韓国やドイツでは成功しているように、一見したところ、望ましいように見えるが、感染者の多くが病院に“なだれ込む”ことで「医療崩壊」に陥る危険性がつきまとうことになる。ただ韓国に関していえば、筆者は今回、流行した新型コロナウイルスが弱毒性のS型であることや、多くの人たちが結核のワクチンであるBCGを摂取していることによるところが大きいと思われる――すなわち、日本と同じような環境にあるということだ。
 これに対し、イタリアでは多くの人たちにPCR検査をしたことで、無症状及び軽症の人までが病院に押し寄せて医療崩壊が引き起こされてしまった。もとより高齢者が多いにもかかわらず、ユーロ圏の参加国に財政の健全化が義務づけられている「安定・成長協定」を遵守するために医療費の支出を大幅に削ってきたことも加わり、重症患者に適切な治療を施すのが難しい状態がもたらされてしまっている。


医療崩壊を起こさないためには検査をせず集団免疫策が有効な場合も

 そうした医療崩壊を起こすことを避けるには、PCR検査を症状の重い人だけに限定して行い、そこで陽性反応が出た人だけを重点的に対処していき、無感染者や軽症患者は意図的に野放しにさせておくことだ。そうすれば、そうした人たちが動き回ることで感染拡大がさらに深刻化していくリスクが高まるが、当局や為政者にとってはそれにより多くの人たちの身体には新型コロナに対する抗体ができて集団免疫が形成されるのでむしろ望ましいのであり、治療するのはあくまでも肺炎を患っている重症患者に限ればよいのである。
 当初、米国ではドナルド・トランプ政権の背後に控えており、英国でもボリス・ジョンソン首相を擁立した親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の権力者層は米英両国でこうした路線を追求しようとしたのであり、安倍晋三政権に指示して日本でもこの方針が追求されてきた。わずか1カ月前までは、トランプ大統領が盛んに「4月になれば解決する」といった楽観的な発言を繰り返し、米連邦公開市場委員会(FOMC)委員の中でも権力者層の意向に従って発言内容を変えることで知られているセントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁も「新型肺炎の影響は一時的なもの」と断言していたのはそのためだ。日本では感染症法により重症急性呼吸器症候群(SARS)が結核や鳥インフルエンザとともに2類に分類されており、今回の新型コロナもそれに分類されるとすれば、感染者であれば無症状者や軽症患者であっても入院させなければならないので、医療崩壊を防ぐにはその方が好都合なのである。
 しかも、もとより“官僚天国”である日本では、先週11日付の日本経済新聞の2面でも取り上げられているように、医師免許を持っている医系技官を含む厚生官僚が隠然たる影響力を行使しており、国立感染症研究所が既得権益を守るうえで民間の参入を阻止するためにも検査能力の拡充をしてこなかったため、そうした官僚勢力もその方が好都合だった。


日本と異なり米国では集団免疫路線が上手くいかない土壌だった

 ところが、こうしたやり方が上手く機能するには重症患者がそれほど出ないことが大前提になるものであり、しっかり機能したのは日本だけだった。もとより日本人はSARSを引き起こすコロナウイルスに感染しなかった経緯があり、日本で今、流行しているのは弱毒性のS型のウイルスに限定されているという幸運に恵まれていた。それだけでなく、多くの人たちが中産階級で占められていて貧富の格差がそれほどない社会構造のなかで、健康保険制度や医療システムもしっかり機能していることがその背景として指摘できるだろう。
 ところが、米国では貧富の格差だけでなく人種間や民族間での断層も大きく、ヒスパニック系を中心に不法移民も相応の規模で動き回っており、それでいて国民皆保険制度も存在しないため、疫病が表れると蔓延しやすい土壌であったといえる。実際、特に昨年中は大流行したが、インフルエンザの流行から日本では考えられないほどの死者が米国では毎年出ており、新型コロナも大流行して多くの死者が出ておかしくなかったといえる。
 トランプ大統領が3月11日に世界保健機関(WHO)が世界的な大流行を意味する「パンデミック」を宣言した2日後に国家非常事態を宣言し、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事も都市封鎖(ロックダウン)に踏み切らざるを得なくなったことで、こうした路線はあえなく失敗してしまった。英国でも事情は同じである。


コスモポリタン系の中核の軍産複合体の影響力が強い非常事態宣言

 国家非常事態宣言や都市封鎖(ロックダウン)といった荒療治を行うことで軍事的統治機構に近い状態に置くことは、本来的に共和党保守派が嫌うのに対し、軍産複合体を中核とする親イスラエル左派的で社会主義的なコスモポリタン系が好むものだ。今、ニューヨークではまさに01年9月11日に同時多発テロ事件が起こった直後のような状況に陥っているのを見れば容易に推測がつくものだ。
 余談になるが、日本でも非常事態宣言が発動されるにあたり、安倍首相が比較的慎重な姿勢だったのに対し、かつては子ジョージ・W・ブッシュ政権で主導権を握っていた共和党系新保守主義(ネオコン)派と密接な関係にあった小泉純一郎元首相の系列である東京都の小池百合子知事がしきりにロックダウンに言及するなど、強硬な姿勢を示したのはそのためであると考えると得心がいくだろう。
 話を元に戻すと、これまで当欄で指摘したように、昨年11月に中国経済が失速状態に陥ったのを受けて、ナチズム系の“最大級の大物”であるヘンリー・キッシンジャー元国務長官が米大手投資銀行ゴールドマン・サックスの背後の欧州ロスチャイルド財閥の親米勢力と“手打ち”をしたことで、“自然に”トランプ大統領がコスモポリタン系の中核である軍産系の勢力に接近した影響がこの時点で前面に出てきたということだ。01年の際には大規模なテロ事件が起こったことでイスラム勢力に対する脅威と“憎悪の念”が掻き立てられ、それがブッシュ政権が「対テロ戦争」に突き進む原動力になった。それと同じことが今、ニューヨークを中心とする米国で起こっているのであり、「感染爆発」と「医療崩壊」の現実を目の当たりにして多くの米国人の間では、“汚らわしい”中国に対する憎悪の念が強まりつつある。
 新型コロナに対してあれほど楽観的だったトランプ大統領が、「適切な政策を遂行しても死者が10万~24万人出る」(直近では死者はその下限を下回る見通しを示しているが)と悲観的な姿勢に抜本的に変わり、ブラード総裁も米国の4-6月期の実質国内総生産(GDP)成長率がマイナス50%まで落ち込み、失業率も30%に上昇するなどとFOMC委員の中で最も弱気な見通しを披露するようになった背景に、そうした権力者層の主導権の動向が影響していることを把握する必要がある。


官邸主導の統治構造を目指すにあたり厚生官僚は撃滅する必要がある

 一方で、日本ではいかにPCR検査をあまり実施しないで自然に多くの国民の間で免疫機能を育む路線がそれなりに機能していたとはいえ、米英両国でそれが挫折して路線転換を余儀なくされたなかで、日本だけが従来の路線を続けるわけにいかないのはいうまでもないことだ。
 ただし、安倍政権は官邸主導の政治体制を強化していくにあたり、米国による属国統治の成立とともに形成されてきた政官財のトライアングル構造を、それもその中核である官僚勢力に打撃を与えて官邸主導による統治構造を強化しようとしている。そうした意味では、医系技官を抱えており、日本医師会を介して自民党にも大きな影響力を行使している厚生官僚の勢力は何としても撃滅しなければならないのはいうまでもないことだ。


 週末の明日もこの続きを掲載します。
 明日は新型コロナを巡り、特に緊急事態宣言の発令により安倍政権とその抵抗勢力が繰り広げる権力争いに焦点を絞って見ていきたいと思います。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。