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新型コロナを巡り合従連衡が繰り広げられる米欧三大勢力の主導権争い

ポイント
・中国では習近平国家主席が権力基盤を固めていったが、国有企業の多くはいまだに江沢民派が押さえている。国有企業の従業員は習主席の強権統治体制を熱烈に支持しているが、江沢民派がそれを“人間の盾”として利用しているため、主席は容易に手を出せない状態だ。
・江沢民派の背後の米大手投資銀行や欧州系財閥は鄧小平と結んで天安門事件を引き起こし、米系財閥本流系と結んで傍流系のキッシンジャー元国務長官から中国の利権を奪い取ったことで、グローバル生産体制に立脚した米国の世界覇権の絶頂期がもたらされた。
・リーマン・ショックを機に多くの米多国籍企業が高収益を計上できなくなったにもかかわらず株価が高騰したのは、米大手投資銀行主導での自社株買いによるものだった。それにより多国籍企業の財務基盤が脆弱化してしまい、時折り株価が売り崩されるようになった。
・トランプ政権の背後のナチズム系を構成している米系財閥傍流系は中国経済の失速から岐路に立たされてしまい、キッシンジャー元長官は欧州系財閥と手打ちをしたものの、江沢民派が健在ななかで他の傍流系の勢力はトランプ大統領とともに本流系に接近していった。



人間の盾に利用されて容易に国有企業改革に踏み出せない状況に

(前回までの記述を受けて) 以上はこれまで当欄で述べてきたことだが、中国情勢で大事なことは、国有企業の利権を江沢民元国家主席を中心とする勢力を中心に、共産党幹部の子弟群である「太子党」の勢力といった既得権益層が今でもしっかり握っており、これに習近平国家主席が容易に手を出せない状態にあることだ。
 習近平主席は中央政界や重要な地方政府のトップに浙江省出身といった自身の腹心やそれに近い人物を就けて権力基盤を強化しており、実際に今では江沢民派は政治局常務委員には誰もおらず、政治局員でも中央政法委員会の郭声琨書記だけになっている。ところが、国有企業については従業員が自分たちの特権を守るために習主席の強権統治体制を熱烈に支持しているのを背景に、江沢民派をはじめ利権を握っている権益層がそうした人たちを“人間の盾”に利用して抵抗しているので、主席側が容易に手を出せないのである。
 そもそも、共産党政権が一党独裁体制を維持するうえで重視しているのが都市部で暴動を起こさせないことであり、特権階級化している都市戸籍保有者をいかに懐柔するかにかかっているといって過言ではない。内陸部でいまだに貧困状態に置かれており、その境遇は中世封建時代の「農奴」身分と変わらない農村戸籍保有者がいかに大規模な“一揆”的な反抗を起こしても、“極端な話”として“皆殺し”にすれば済む話なのである。その意味で、習近平主席としては国有企業の従業員は自身の有力な権力基盤であると同時に厄介な存在でもあるわけだ。


天安門事件を引き起こして中国の利権を奪い取る

 江沢民派は米欧では米大手投資銀行ゴールドマン・サックスと密接につながっており、その背後に欧州ロスチャイルド財閥の親米的な勢力がいる。これは、つい最近まで「世界皇帝」として君臨してきたデイヴィッド・ロックフェラーを頂点としてきた米ロックフェラー財閥本流系が、米国の世界覇権の絶頂期を現出する経済的な基盤であるグローバル生産体制を構築するにあたり、ゴールドマン系の人脈が生産工場の中核である中国の当時の支配階層(江沢民派)との橋渡し役を担ってきたことによるものである。この米欧の財閥勢力が、親イスラエル左派的で社会主義的、リベラル的なコスモポリタン系を形成してきた。
 これは、米系財閥本流系が傍流系の代表格であるヘンリー・キッシンジャー元国務長官から中国の利権を奪い取るにあたり重要な役割を担ったのが、89年6月に天安門事件が起こった際に同国で最高実力者だった鄧小平とゴールドマンがつながっていたことによるものだ。その窓口だった上海市で党委員会書記だった江沢民元主席が、この時に保守的な長老派の支持を集めていた李鵬首相(当時)を抑え込んで共産党総書記に“大抜擢”されたことに起因しているものだ。
 そもそも天安門事件自体が、キッシンジャー元国務長官や日本では中曽根康弘元首相らとつながっていた胡耀邦元共産党総書記の後継者である趙紫陽総書記(当時)を失脚させるために仕組まれた謀略だったことに留意する必要がある。このため、習近平主席やその背後の主に米ロックフェラー財閥傍流系から構成されている親イスラエル右派的で国家主義的、民族主義的なナチズム系の勢力が江沢民派を攻撃するということは、紛れもなくゴールドマンや欧州系財閥を潰しにいくことにほかならないわけだ。


自社株買いで財務基盤が脆弱な多国籍企業株が売り崩される

 そこで注目する必要があるのが米金融市場を舞台にした動きである。リーマン・ショックによる巨大な金融危機を乗り越えて以降、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に襲われる以前の2月中旬にかけて株価が高騰していったが、それは企業収益の観点ではとても正当化できるものではなかった。グローバル生産体制が以前に比べると機能しなくなっていたことから、「GAFA」と称されるごく一部のネット系ハイテク企業を除くと、多国籍企業の多くはそれほど高収益を計上できなくなっていたからである。
 株価が高騰していたのは自社株買いによるところが大きく、それを可能にしていたのが連邦準備理事会(FRB)が3回もの強力な量的緩和策を推進したことによるものだった。その自社株買いを強力に推進するうえで最も大きな役割を担っていたのがゴールドマンだったのであり、それによりグローバル生産体制が以前に比べて機能しなくなっていたなかで、その穴埋めをしていたわけだ。
 しかし、自社株買いを目的に社債を多く発行したことでこうした多国籍企業の多くは財務基盤が脆弱な状態になっており、実際にそうした企業群には米系財閥にも散見されるとはいえ、欧州財閥系にそれが多い状態にある。18年末にかけてFRBが利上げを続けていたのを背景にそうした多国籍企業株が売り崩されることが散見されたが、その際にそうした動きを策動していたのが米系財閥本流系の直系であるシティ・グループの系列のヘッジファンド群だったものだ。今回の新型コロナ禍を利用して2月下旬以降、“怒涛の暴落”を演出したのもこの投機勢力であるのは想像に難くない。


米系財閥傍流系の中に本流系と提携する動きも出る

 ナチズム系の主要勢力である米系財閥傍流系としては、コスモポリタン系の中核である本流系とともに貿易戦争を仕掛けて中国を攻撃したものの所期の目的を達成できなかったなかで、重要な岐路に立たされてしまった。
 もとよりこの勢力は将来的に中国に覇権を明け渡すことを前提に動いているので、同国に致命傷を与えて“殺す”ことは望んでいない。とはいえ、中国で江沢民派を攻撃しないのなら米金融市場で株価を売り崩すことでゴールドマンに打撃を与える必要があるが、それにより信用収縮が強まって米国への資金還流が進んでいくと中国のバブル崩壊を促進させることになる。そうしたジレンマに陥ったなかで、傍流系の最大の大物であるキッシンジャー元国務長官はゴールドマンと“手打ち”をする路線を選び、ホワイトハウスを一新させるためにマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長に大統領選挙の民主党予備選挙に再出馬をさせたものの、あえなく撃沈されたのはこれまで、当欄で述べてきたことだ。
 ただそこで重要なことは、こうした動きを受けてドナルド・トランプ大統領が軍産複合体を中核とする米系財閥本流系に接近していったのは当然だとしても、傍流系の中でも本流系との提携を志向する動きがあったことだ。これは傍流系が分裂したことによるものか、それとも欧州系財閥と本流系の両方の勢力に結び付くことで、“保険”の目的で“二股をかけた”ことによるものか定かではない。キッシンジャー元国務長官の存在感がそれ以降、まったく聞かれなくなったところを見ると分裂した感がしないでもないが、いずれにせよ、現在では本流系と結びついた勢力が主導権を握っていることは間違いない。
 そこで今回、新型コロナウイルスが投入されて株価が大暴落して欧州財閥系を中心とする多国籍企業やゴールドマンが打撃を受け、また中国とのデカップリング化も決定的なまでに達成されてしまい、新冷戦体制の構築に向けて米中対立もかなり激化しているわけだ。トランプ大統領が腹心のマイク・ポンペオ国務長官とともに連日、“舌鋒鋭く”激しく中国への批判を繰り広げているのも、11月3日の大統領選挙を控えた“失点の克服”というよりは、権力者層の意向に従ったものといった性格が強いものだ。


 今週は明日も掲載します。
 明日は米系財閥本流系が前面に出てきたなかで、それを示唆するような事例をいくつか簡単に指摘させていただきます。
 よろしくお願いします。
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プロフィール

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永山卓矢と申します。
有限会社ナリッジ・クリエイション代表です。
現在、マクロ経済の分野でアナリスト業務を中心に活動しています。
フリーの立場で従来のマクロ経済や金融市場分析に限らず、その背後の政治的な権力闘争に至るまで調査活動を行っています。
これまで、月刊誌『商品・証券・金融先物市場』とその後継の『フューチャーズ・マーケット』や投資日報社などの大部分のインタビュー記事の作成をはじめ、他の情報媒体の市況執筆に携わってきました。
また、『「実物経済」の復活』(副島隆彦著 光文社刊)』はじめ、著名評論家の著作本執筆の実質的な共著や補助などの業務に携わってきました。
どうぞ、よろしくお願いいたします。